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大罪と美徳  作者: 秋雨
第1章 物語の始まり、動乱の幕開け
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第3話 改訂済

「--すっ……すごい」

「これが、契約者の力……!」

「……すごいですー」


歩美、さやか、京があっという間に薙ぎ払われた乱入者達が吹き飛ばされる様を見て、唖然とする。

――知識としては存在していたものの、現実で魔法じみた力で人が薙ぎ払われる光景は、一般人である彼女たちには到底信じられない代物であるがゆえに。


「――さて、今のうちだ。起き上がらないうちに、さっさと逃げるぞ」

「え? --あれで手加減したの!?」

「してなかったら焼滅してるよ。契約者最強の一角の力だぜ?」

「……ウソでしょ」


――宇佐美達は唖然としつつ、ユウと光一の警護のもとで控室へと荷物を取りに。

さすがに着替える余裕はないため、ステージ衣装のまま逃げる準備を整える。


「あの……」

「ん?」

「……なんでたった2人で? しかも、こんな小さい子まで連れて」

「大がかりな動きしたら即バレだから。それに普通に考えれば十分な戦力だよ? 大罪1人に上級系譜1人って」

「系譜?」


系譜


大罪、あるいは美徳のブレイカーの模造品とも言える、上位のブレイカー

性能自体は大罪、美徳に届かないまでも、それに近い力を引き出すことは可能。


そして光一は、その系譜のブレイカーを扱う契約者の中でも、上位に位置する契約者、通称上級系譜である。


「……それって」

「もちろん勇気のブレイカーでも出来るよ? 開発費はかかるけど、使えないなりの使い方があるのも美徳や大罪シリーズの特徴なんだよ」

「--それで、この騒ぎなんですか?」

「そういうことだよ、朝倉歩美さん……っと、そうだ。俺は久遠光一で、あっちは朝霧裕樹。妹の方は裕香っていうんだ」


弾がきれた銃のカートリッジを交換しつつ、光一は自己紹介。


「――あの人たちは、大丈夫なんですか?」

「心配いらないよ。ブレイカーは生命維持装置にもなってるから、あの程度じゃどうという事もない。危なかったにしても、一定のダメージを認識すると身体を仮死状態に陥らせて、自己修復を促す仕組みになってる――即死したらアウトだけどね」


最後の部分だけは、一般人には刺激が強いため小声でつぶやいた。


「……それにしてもすごいですねー。あんなにたくさんをたったふたりで」

「下級クラスが使ってんのは量産品だから、さして使用するのに制限もないしそんな強い力を引き出せる訳でもない。それに系譜以上からすれば、いなくても同じだから」

「それでも一般人のアタシ達からすれば、十分脅威だよ」

「--違いない」


京、さやかの言い分に、光一は苦笑する。


『ぶるるるるるッ!』

『しゅーっ、しゅーっ』


「「「「ひぃっ!」」」」


――その次の瞬間、突如現れた何かに、ラッキークローバーの4人が息が詰まる。


身体は馬なのに首から上が蛇で、牙がサメと言う異様な生物。

その横にも、サイの身体に、背に甲虫の様な殻をつけ、カブトムシとシカの様な角をつけた、こちらも異様な生物がいた。


更に言えば、2体ともが面々を敵とみなしているのか、既に臨戦態勢をとっている。


「やっぱ一般人には刺激が強いらしいな」

「当然だろ。そもそも合成獣キメラ自体が契約者独自の技術だから、見る事もない」


契約者特有の技術、合成獣キメラ

異なる生物の特徴を併せ持つ、人工的に創られた生物である。


「――どうするユウ? あんまり刺激を与えるのは」

「仕方ないだろ、この場合……」

「だよな……」


光一が両手の自動拳銃をしまい、左腕を捲る。

それを見てユウも、一旦刀を鞘に納めた。


「なんだ、能力使うのか?」

合成獣キメラ相手じゃ銃だけだとキツイ」

「だろうな。さて、出口はすぐそこだし、さっさと終わらせよう」


ユウが抜き打ちの構えをとり、それに呼応した様にサイの合成獣キメラが突進。

3つの角をたて、獲物をつき殺さんと突進。


「……うぜえんだよ、サイもどきが」


キッと敵を睨みつけ、怒気をまとって駆けだす。

サイの合成獣キメラも負けじと、角を突き立て突進し……交差。


「……」


ひゅんっと刀を振り、手遊びをするかの様に刀を回す。

それからゆっくりと鞘に刀を納め、かちんと音が響き……。


ドスゥンッ!


合成獣が倒れ、ごろっと切り離された合成獣の頭が転がった。


『シャアアアア!!』


間髪いれず、蹄を鳴らしながらもう一体の合成獣キメラが首をムチのようにしならせ、ユウの背後から襲いかかる。


「おっと、お前の相手はこっち」


と言って、光一が割り込んで、左手を合成獣キメラの口に突っ込む。

キメラが思い切り噛みちぎろうと、食いしばると……


――何かが砕ける音と、轟音が響いた。


「……はい終了」


光一がそう言い捨てると同時に、キメラが倒れ込んだ。

……ホラー映画マニアですら、見る事を躊躇する様な無残な姿で。


「大丈夫?」

「……あの、久遠さん。一体、なにやったんですか?」

「……いまかくじつにかまれたとおもったのですよー」

「……でも傷一つないし、かといってこんな細い腕がどうやって?」

「出口も近い、さっさと逃げるぞ」


光一がはぐらかし、一同は納得できないと思いつつも外へ。

外でも同様だと考えていた為、光一も再び銃を取り出し、ユウに宇佐美も戦闘態勢。


そして……


「準備は?」

「よし」

「いいわよ」

「じゃあ、開けるぞ」


光一が銃を構えると、ユウが戸を開く。

そして……


「あれ?」


その先にあったのは、正と負問わず、契約者の軍勢が大多数倒れている光景。

そして……


「……めんどくせえ……ん?」

「げっ……久しぶりだな」

「……めんどくせえ。誰だっけ? ……思い出すのも、めんどくせえ」

「忘れんな!」

「……めんどくせえ。そうだ、雅人?」

「違う。裕樹だ! 朝霧裕樹!! それよりお前、こんな所で何してやがる!?」

「……めんどくせえ。なんだっけ? うー……思い出すの、めんどくせえ」

「やめんな! っていうか、なら帰れよ!」

「……めんどくせえ。今から帰るのもめんどくせえけど、今からやろうとしてる事もめんどくせえ」


「あの……知り合い、なんですか? なんだか随分と親しげですけど」

「親しげな訳あるか。あいつも契約者だよ、条件は……」

「「「「いや、いい(です)」」」」

「聞かないの?」

「「「「わかるから(りますから)」」」」


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