第40話
「……なんで映像がとぎれとぎれなのよ?」
宇佐美はテレビをみて、ぼやいていた。
戦争の様子は下級系譜以下となると、影響が少なく鮮明に映し出されていたが……
ユウと怜奈のぶつかり合いになると、こちらはとぎれとぎれ。
「仕方ないでしょ。超長距離拡大が可能な今の技術でも、大罪と美徳の戦争の撮影なんて、至近距離で戦争を撮影するのと変わらない物」
「……そりゃあ、あれを見れば頷けもするけど」
スタッフが避難した所為か、映像が遠のき始めたが、状況は手に取るように分かる。
海でもないのに津波が引き起こされたり、その津波が噴火で一瞬で蒸発されたり。
マグマの腕と氷塊の刃がぶつかって、相殺されたり……
「……これ本当に人が引き起こしてる事象なんですか?」
「本当に人が引き起こしてる事象よ? 水を操る能力と、発火する能力のね」
「……全然そう見えないよ、アタシ」
「……まるでかざんとうみがケンカしてるみたいですー」
「それが大罪と美徳の戦争よ。私を含めた世を左右する存在の内2人のぶつかり合い」
「「「「……テレビスタッフさんも大変だなあ」」」」
世もこの戦争で不安におびえてる故に、事が全然わからないと言うのは不安になる。
現にあちこちの避難先や地下シェルターでは、不安におびえ極限状態の者たちが多数。
「……あっ!」
「ん? どうかした?」
「……今、知ってる人が」
「「「え!?」」」
歩美の言葉に、宇佐美、さやか、京が一斉にテレビに。
「……切り替わっちゃいました」
「誰だったの?」
「覚えてません? 以前練習の後、私達に差し入れをもってきてくれた……」
「え? あの……?」
ふと思い出される、光一を介してだが会話をした憤怒の契約者の人達。
『お疲れ様です。水とタオルをどうぞ』
『これ、皆で食べてください』
差し入れをもってきてくれた人。
『あの、握手お願いできますか?』
『俺はサインを、ここにえーっと……』
サインや握手を頼みに来た人。
『コンサート、楽しみにしてるから』
『頑張って。オレ、応援するから』
応援の言葉をくれた人。
見覚えのある者がうつっては、攻撃を受けて倒れて行く様が映し出されていた。
――まるで、漫画や物語の一部かのように。
「……人って、こんな簡単に死んでいい物なのかな?」
「人は死ぬものよ。私も、そしてあなた達もいつかは死ぬ。宇佐美ならわかるでしょ?」
「……月も、人を殺した事、あるの?」
「あるわよ、大罪の1人なんだから――怖くて震えてたのは覚えてる」
「……」
「受け止めなさい、宇佐美。お兄さんの意思を継ぐ気なら、ね?」
ザーーーっ!!
「っ! 何!?」
「……何かあったのかしらね? それとも――
――場所は戦場、その中心。
「はっ……はっ……」
「ふぅっ……ふぅっ……」
大罪と美徳、ユウと怜奈は互いに互いから視線を外さない。
ただひたすらに相手の出方を計りつつ、間合いを取る。
「……久しぶりだな。こんな高揚感溢れる戦いは」
「……負の勇者と謳われる朝霧さんに、そう言ってもらえて何よりです」
「とはいえ、流石にきつくなってきたな……光一達、どうなってんだろ?」
「わかりません……やはりここは、一旦撤退すべきでしょうか?」
「仕方ないな……」
ピュンッ!
「っ!」
撤退の算段中に光の線が走り、ユウの肩を貫いた。
ユウは膝をつき、怜奈は突如起こった事が理解できず、茫然とたたずむ。
「朝霧さん!?」
「ぐっ……」
「ここまでは計算通り……だね」
ユウと怜奈は、一斉に声の方へと顔を向ける。
背まである長髪、メガネをつけた知的な顔立ち。
戦場に似つかわしくないスーツを纏った、長身の男が立っていた。
「テメエ!」
「総員突撃、慈愛を援護し憤怒の軍勢を蹴散したまえ」
「「「おおおおおおおっ!!」」」
長身の男が号令をかけると同時に、何もなかった筈の空間から次々とヘルメットに
装甲と、肌を徹底的に覆い尽くした装備の兵が次々と姿を現す。
それと同時に、武器や能力を駆使し、憤怒勢に攻撃を仕掛け始めた。
「お怪我はないかね? 水鏡怜奈嬢」
ちゃきっ!
「近づかないでください」
にこっと笑みを浮かべ、手を差し伸べる長身の男に、怜奈は長刀を突き出した。
「おっと……つれないな。救援に来たと言うのに」
「よくもぬけぬけと!」
「落ちつきたまえ。確かに、騙すような方法を取った事は謝罪するが、大罪2つと上級系譜の首と一条宇佐美の確保に貢献できたなら、北郷さんもきっと許してくれる」
「……上級系譜? まさか!?」
「ああっ、久遠光一の首も間もなく到着する」
――一方
ガシャンッ!
「っ! なんだ!?」
「対契約者様の特殊防護シャッターが降りたらしい」
「罠か!? ……いや、おかしい」
光一と黛が訪れた、とあるビル。
証拠と首謀者をつれ、いざ戦場へ……という矢先のことである。
「そっ、そんな、どうして!?」
「……どうやら、こいつら何も知らされていないらしいな」
「こんな小物、庇い立てする必要ないってか、最初から利用されてただけか」
「くぅう~っ! 憤怒を討ち取り慈愛が崩壊した際には、知識でとりたてると言ってたのに!!」
『憤怒を打ち取り慈愛が崩壊した際には、知識でとりたてると言ってたのに!!』
「あっ!」
「……小物らしいな。恥さらし以前にお手軽な操り人形かよ」
ザッ!
「久遠光一、その首もらいうける」
「ちぃっ!」
何もなかった場所から、突如現れた妙な走行姿の男に向け、光一がリボルバーを構える。
「甘い!」
現れた男が円盤の様な物を取り出し、放り投げる。
それは宙で止まり、くるくると回り始めるとフィールドが形成され、部屋ごと包み込んでしまった。
「っ!」
「電磁阻害フィールド発生装置だ。上級系譜といえど、このフィールド内で電気系の能力は使えん。更に……」
ヴィーーーっ!
「カーボンファイバーすら切断する特殊チェーンソーだ、お前の能力はすべて研究済み。覚悟しろ」
「誰が来るかはわかってた、か……面白いじゃないか」
「死ねえっ!」
――場所は戻り。
「そんな……!」
「おめでとう。これで君は色欲と憤怒を討ち取り、勇気を確保した英雄だ。さ、後は僕と共に憤怒を……」
「舐めんな! “迦具土”!」
「おや、僕の光線で肩を撃ち抜かれていながら、そこまでの大技を使えるとは……」
スカっ!
「流石は、負の勇者と称される男だね。だが力推しではこの知識の契約者、天草昴には勝てないよ」
「……そう思うなら、思っとけばいいさ」




