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大罪と美徳  作者: 秋雨
第1章 物語の始まり、動乱の幕開け
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第2話 改訂済

臨海ホールはパニックを起こしていた。

突如の乱入に加え、契約者の攻撃と来て、全員が我先にと出口へ。


その渦中はと言うと……


『なっ、なんで憤怒がここに!?』


光一は銃を構えながら、そしてユウは裕香を背負いながら、舞台へと近づいていた。


「憤怒は勇気の対だ。居る所に来て何が悪い?」

「大体な、ここまでの大事になる様にやらかしといて、まさか何もなく進められるとは思ってなかったよな?」

『……あっ』


ふと漏らした言葉で、全員が唖然とした。


「……まさかこんなバカに均衡が崩されるなんて」

「いや、光一兄ちゃん。バカじゃなきゃ均衡を崩そうなんてしないと思う」

「違いない。なんかさっさと終わらせて帰りたくなってきた」

『そこ! 好き言ってんじゃねえ!! くっそ!!』


ロボットが再度手を伸ばし、4人を捕まえようと……


ビシっ!!


伸ばしたアームが、撃ち抜かれた。


「はいはい、俺の事忘れない様に」

『けっ! そんな銃1発や2発でやられるか!』

「……無視してんじゃねえぞガラクタが」

『え?』


ロボットの目が、足元でユウの姿をとらえた。


『ガガ……ビー……』


――正確には、既にロボットを切り刻み、日本刀を鞘に戻している場面をとらえていた。


「……ユウ、また居合早くなったか」

「しっ」


そのロボットが音を立てて崩れる。

それと同時に、ライダースーツの様な衣服をまとった人物が飛び出し、一路外へ。


「あっ!」

「ロボットじゃなくて、パワードスーツだったか」

「あの野郎!」

「やめろユウ、今はそれよりこっちだ」


無人になった、先ほどまでたくさんの人でにぎわっていたコンサート会場。

今3人の視界にいるのは、その主役だった4人のみ。


その中で、歩美が恐る恐る尋ねてみる。


「……何なんですか、一体?」

「なんなんだとは?」

「あなた達、“契約者”ですよね?」


“契約者”


感情を経由し、人の限界を超えた能力を引き出す演算装置“ブレイカー”を使う者。

その力は人どころか機械すら凌駕し、人を超えた存在とも言われている。


「そう。こっちは大罪の一角、憤怒の契約者朝霧裕樹。そして俺はその憤怒の系譜、残虐の契約者久遠光一」


2人して軽い態度だが、尚更に警戒心を4人は強めた。

契約者と言っても、区別はある。


友情や愛情なんかの理性を起点とした、正の契約者

怒りや憎しみと言った欲望を起点とした、負の契約者


負の契約者は犯罪者、あるいは一般人に対し差別的であることが多く、一般人にとっては負の契約者というだけで畏怖の対象となるものである。

――まして大罪とは、負の契約者達の頂点に位置する者たちの総称である。


「――どうして大罪の1人が、私達を?」

「負の契約者の頂点、大罪シリーズの対となる正の契約者の頂点、美徳シリーズの1つ“勇気のブレイカー”」


ぎょっと宇佐美が目を見開いた。

そして無意識に、胸に両手をあてるのを見て、光一は確信した。


「前勇気の契約者、一条いちじょう宇宙そらの事故死以来、表に出る事はなかった物だが……持ってるんだろ?」

「……どこでそれを?」

「情報なんてどこからでも出てくる。出来れば渡して欲しいんだが」

「……お断りします」


胸を――正確には、首にかけた物をかばう様に、宇佐美は手を添えて下がる。

差し出されたから、逃れるかのように。


「それは正と負の均衡を保つシロモノだ。野放しに、しかも一般人の手元におくわけにはいかない」

「所在が明らかになった以上、これからおそらくあちこちに狙われるよ? ――俺達と同じ大罪からも」

「……!」


ビュッ……!


「! 新手か!?」


突如伸びてきた、ゴムで出来た蔦の様な物。

ユウが切り裂き、ボトリと落ちる。


「ひぃっ!」

「……こわいです~!」

「……くぅっ」


当然だが、一般人と呼ばれる部類の人にとって、契約者の力は脅威である。

歩美、京、さやかは、身を寄り添い合わせふるえていた。


「…………」

「わかったろ? --大事なのは理解できるが、それを持ってる限りこんなことはついて回る」


宇佐美は、苦楽を共にしてきた仲間が恐怖でふるえている姿に、言いようのない感情に囚われる。

――少々気は進まないものの、光一はそれを起点に説得を試み……


「--だったら……」

「言っとくけど、それはそこらの量産型じゃない。正真正銘、最強のブレイカーの1つだ。簡単に契約できる代物じゃない」

「……兄さん」

「気持ちはわからないでもないけど、それは契約もできない者が持っていていいものじゃないし――」


バンっ!


光一と宇佐美の会話を遮るかのように、海上獣の出入り口が破壊された。

そこからぞろぞろと集団がなだれ込んできて、それぞれ武器を構え、あるい能力を発動させ始める。


「それを持ってる限り、これらの問題はついて回る――見つかった時点で、もう決まったことだ」


その一角に向け、光一はリボルバーを構え――すさまじい衝撃波とともに放った弾丸で蹴散らした。


「さて……すまんが、こうなった以上さすがに返事まで聞く暇はない。一緒に来てもらうぞ」

「そっそんな!」

「ウチのボスの妹が、あんたたちのファンなんだよ。だから、守らなきゃボスの兄としての尊厳にかかわる……それでどうか納得してくれ。」


――歩美、さやか、京の視線が宇佐美に集まる

その視線を受けた宇佐美は……


「--今は信じるしかないなら、そうするわ!」

「さすがは宇宙さんの妹、度胸あるな」

「女は度胸よ!」


ぐっと胸の前で、両こぶしを握り締めてそう叫ぶ。


「気にいった。よし……」


その姿と言葉を聞き、ユウが刀を納め……右手を振り上げる。

その右手が燃え上がり、グラグラと煮えかえるマグマに包まれ始める。


「憤怒の契約者の名にかけて、守り抜いてやるよ!」


そう叫んだと同時に――なだれ込んできた契約者達をなぎ払った。

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