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大罪と美徳  作者: 秋雨
第2章 煉獄に響く鎮魂歌
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閑話 傲慢と強欲のとある朝の会食

慈愛のナワバリ解放。

そして慈愛の組織の復活と、憤怒との正式な同盟締結。


その情報は瞬く間に世に広がり……世のすべての戦いに、一先ずの終止符を打った。


“時代の流れは、憤怒の契約者の意思そのもの”


――新たな戦争の火種を抱えつつ、そう結論付ける決定打も兼ねて


しかし内容がどうあれ、戦争が終わったことで人は地震の住む街へと戻り、漸く戻った平穏をかみしめつつ、元の暮らしへ。



――その終止符から一週間


時は夜。


新月の夜で、尚且つ人里離れた山奥。

その一角に今は忘れられた、とあるフォールダウンの根城となっている廃工場。


そこは今……


「ぎゃああああっ! 熱い、熱いぃっ!」

「おい、誰か凍結能力者は!?」

「くそっ、消えねえ!」

「助けて! 助けてくれ!!」


炎に包まれていた。


「……」


その光景を見詰める、1つの影。


白い肩まで伸びた髪に、中肉中背であるにも関わらず、並大抵の鍛え方では到達できない程引き締まった肉体。

何より特徴的なのが、絶世の美男子と称されて当然と思えるほど、整った美形の顔立ち。

にも関わらず、その顔は氷を貼りつけたかの様に無表情で、その瞳は氷を鍛え造り上げたか剣の様な鋭さを秘めている。


負の契約者の頂点“大罪”1つ“傲慢”の契約者であり、負の契約者最強と称される男、大神白夜。

彼は“不自然な断崖絶壁に囲まれた”廃工場を見下ろしていた。


「たっ、助けてくれ! もうアンタのナワバリにちょっかいは出さねえからよ!」

「おい、しっかりしろ! 頼む、こいつを病院に!!」

「俺達だって、やりたくてこんな事やってるんじゃないんだよおっ!」

「ただ単に不幸なだけだったんだあっ!」


炎に包まれる中、白夜に向けて懸命に命乞いを始める面々。

そんな彼らを見る白夜の眼には……


「……人を見下しておいて不幸だなんだと自分を哀れむな。バカが」


侮蔑の色以外が浮かぶ事はなかった。

ふうっと呆れる様にため息をつき、白夜は炎に喰らわれる命を意にも介さず、その場を後にする。


……その手に、“ある物”を握りしめて。



――その次の日の朝。


「昨日はどこに行ってた?」


傲慢のナワバリの、高級ホテルのレストラン。

互いの系譜を周囲のテーブルにつかせつつ、傲慢と強欲は対面する形で朝食をとっていた。


「……獣の駆除だ」

「へえっ。仕事熱心だねえ」

「人任せが性に合わないだけだ」

「まあお前なら納得はできるが、もしその獣の種別がフォールダウンってんなら、それだけじゃあな」


ベーコンを一口で食べ、それを飲み物で胃に流し込みつつ、シバの眼は白夜の眼をじっと見据えていた。

嘘を許さない……そんな意志を込めつつ。


「単純な話、お前はこの先どうなると思う?」

「この先? そうだな……事は勇気のブレイカーの所在がわれた事。それを手にした憤怒がこの時代の中心となってるのは、最早間違いない」

「……それで?」

「となると、やっぱ正の契約者どもが黙ってやしないだろうな。特にお前の対が」

「あれはあれで大した男だ。だがフォールダウン同様に自分を否定できないのでは、あれ以上は望めない」

「フォールダウンは“こんな筈じゃない”とか寝言ぬかしながら、好き勝手を美化した大馬鹿野郎どもの成れの果て。そう言う意味じゃ、頷けるが……なら、完全に世の流れが憤怒に向かっている現状を、面白く思う訳がないな」

「そう言う事だ。ただこの先次第で、私も決断せねばならない。話に戻るが、その為に必要な物を取りに行っていた」


シバは見当がつかないのか、首を傾げる。

――が、キッと目を見開くと、白夜に良い様のない恐怖感を感じ始める。


「まさか……正気の沙汰とは思えねえな」

「元々がただの人間でなければ、今もただの大罪でもないのでな。勝手な価値観と先入観で私を測れば、痛い目を見るぞ」

「ご忠告感謝しとくぜ」

「別にこんな物に頼る気は今のところない。ただ状況によっては、必要になるかもしれない……だから手に入れた、ただそれだけだ」

「そうかい、まあアンタはアンタで好きにしな。オレはそろそろナワバリの経営があるから、帰る」

「何かあれば連絡しろ。援軍位送ってやる」

「期待しないでおくよ」


食事を終え、ナプキンで口を拭って部下たちを率い、シバは去って行った。


「……退屈はしない。最低限のメリットとしては、上出来だ。武田シバ」



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