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大罪と美徳  作者: 秋雨
第2章 煉獄に響く鎮魂歌
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第30話

スナイパーライフルを構え、照準を定める光一。

狙いは、背に飛行用モジュールを搭載し、空戦が可能となったサイボーグ犬神晃。


「こんな所で雪辱戦とはね」

「……もしかして、二か月前光一の肩を撃ち抜いたのって、あいつなの?」

「そうだ」


「ナマイキにオンナとくっちゃべってんじゃねえぞ!!」


口を開き、レーザーを連射。

クエイクが回避運動をとり、光一達はナツメの変形した金属棒に捕まり、振り落されない様にそれを握りしめる。


「うぅっ……」

「しっかりつかまってろよ宇佐美。今回はあくまで、戦場の空気に触れる事目的。俺達で何とかするから」

「……待ってよ。せめて」

「悪いが、戦場なれしてない宇佐美は足手まといだ。手を出さないでくれ」

「……わかった」


前の時はまだ規模は小さく、とても戦争とはいえないもの。

しかし実際の契約者達の戦争を見る宇佐美は……。


「……怖い」


押し殺そうとしても、湧き出る感情。

ただ、必死にしがみつくしか出来ない自分が、何よりも情けなく感じられた。


「……」


当の光一はそれを気にもかけず……

いや、意識を切り替え、スナイパーライフルのスコープと引き金にかける指に集中。


照準を合わせ……引き金を引く。


「けっ!」


しかし相手はサイボーグ。

それをサーチし、口を開き小出力レーザーで撃ち落とす。


「バーカ! テメエのオハコはドウグやノウリョクのオウヨウリョク、ならドウグはウちオとし、ノウリョクはシャテイキョリからハナれればモンダイ……」


ドヒュンっ!


「っ!」

「生憎、俺だってこの2カ月何もしなかった訳じゃなくてね。この前漸く指弾が音速の1.5倍に至ったし、射程も結構延びたんだ」


ツッ……


「……サスガだなクオン。まさかトクシュジンコウヒフをヤブるとは」

「……やっぱり皮膚の方にも細工がしてあったか」

「それでこそだ。それでこそブチコロしガイがある」

「別にお前に殺される為に鍛えた訳じゃないがな」

「ケッカでそうしてやる!!」


背の飛行モジュールが出力を上げ、加速。

元々、鋼鉄の塊&3人分とサイボーグ1機の差がある為、距離を詰められた。


「そのニククわせろ!!」

「きゃあっ!」


目と鼻の間を境目に前に突き出された金属の顎が開かれ、犬神が光一ではなく宇佐美に襲いかかる。


「させるかよ!!」


その間に光一が割り込み……


ガギィィィイイっ!!


犬神が光一の肩にかみついた途端、鈍い音が響いた。


「……どうした? お前のお待ちかねの俺の肉だぞ?」

「バっ……バカ、な……」


ギリギリと、加工された牙を突き立てるが、それが光一の肩の肉に食い込む事はなかった。

黒い薄手の上着が破れ、そこから覗いた光一の肩は……


「ッ!? タンソカコウ、だと!?」

「いや、炭素操作だ。身体に含まれる炭素を操作しても、ある程度平気になったんでね」


これは嘘で、本当は以前ほどではない物の痛む。

しかし全体を加工するのはやはり無理があると悟り、多少痛むのを我慢することを選択。


「言ったろ? 俺だって何もしなかった訳じゃねえってよ」

「だったらコウだ!!」


光一の肩に噛みついたまま、犬神の口内で光が充填されて行く。

それに焦らず、光一は……


「甘いわ!!」


“ある物”を取り出し、炭素硬化した腕でそれを口にねじ込み――


「クエイク、バレルロール!」

『Yes! My master!』

「えっ!? ちょっ、ちょっと!?」

「ひっ! きゃああっ!」


光一が指示を出し、クエイクが螺旋を描くように身体を回して、空中機動バレルロールを行う。

ナツメが焦って、変形させていた金属棒をクエイクに絡めるようにさらに変形させ、宇佐美はそれを懸命に捕まり、ぐっと目を瞑る。


「バカがっ! ジサツコウイだぜ!」

「そうかな!?」


バレルロールで振り落とされた犬神と光一。

充填されていた光が一層強みを増し、いざ撃ち出され……


ボゴォッ!!


「ぐわぁっ! どわっがあっ!!」


レーザーが放たれ、光一の肩を撃ち抜くと思われた瞬間、犬神の口内が炎上。

喉を押さえ、もがき苦しみながら光一の肩を離してしまい、犬神は墜落。


炎上で焙られた肩を抑え、光一は放電しクエイクを起点に磁気浮上で体を浮かせ、クエイクのもとへと戻る。


「ってえっ……」

「だっ、大丈夫!?」

「心配いらねえよ。ちと肩が焼けただけだ」

「……一体何したの? さっきあのサイボーグの口に何か入れたみたいだけど、あれと関係が?」

「大あり。“俺の能力で”細工した水の入ったペットボトルを入れたんだよ」


光一のサブ能力元素操作

その能力は元素を操作し、配列を組み替え硬度を上げたり、加工する事が可能な能力。


今回やったのは、水の入ったペットボトルから、純度の高い水素と酸素という可燃性気体の充満したペットボトルに作り替え、レーザーで着火させた。


「あちち……これで雪辱は」

「ダレのセツジョクハらしたってえっ!?」


怒鳴り声を響かせ、犬神が再度姿を現し進路を詐欺ってくる

口から絶え間なく煙が立ち、息も荒い状態で。


「……兄さんも大概しつこいね。ウチびっくり」

「やかましい!! そいつのニクとホネクいチらすまでオいツめてやる!!」

「光一も厄介なのに好かれやすいわね」

「……誰を基準にしてんのかがすぐわかるな」




――一方


「えーっと……んじゃ、あっち行くぞ」

「ゴギャアアアアっ!」

「あっ・ち・い・く・ぞ?」

「……ゴルル(びくびく)」

「よしよし。ビル3階分のデカさがあるとはいえ、まだ子供だからしつけがなってなかっただけなんだよな?」

「グルグル……グルゥッ(ぐすっ)」


ボコボコになったドラゴンの背に座り、ユウは目的地目指し邁進中。

――当人無傷で


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