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大罪と美徳  作者: 秋雨
第2章 煉獄に響く鎮魂歌
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第26話

「……ったく、光一不在が痛いな」


所はユウが住んでる町の、ナワバリの境目

そこでユウは、攻撃を仕掛けてくるフォールダウンを見て、ポツリとそう呟いた。


情勢が崩れ、あちこちで契約者達が暴れている現状でも……。

いや、現状だからこそフォールダウンは動く。


「……まあ“今は”フォールダウンが動く事自体は、ありがたい話ではあるがな」


ココの所、フォールダウンの様子がおかしい為、ユウはたびたび直々にフォールダウン討伐に向かっている。

フォールダウンは元々、レベル2以下の正の契約者だった者達が、量産型の“一番強い感情を条件とする”機能により負の契約者へと変貌し、元々の組織を追い出された者達が集まり出来た組織。


そう言う下級契約者で構成された組織としては、あり得ない高度な装備を使用している事が最近多く、ユウはたびたび現れたフォールダウンに単身攻撃を加えていた。


「さて……ん?」

「ボス、幾らなんでも大罪が……」

「全員下がれ」

「え?」

「下がれ!」

「はっ、はい!」


ユウのただならぬ雰囲気に、全員が言葉に従い下がる。

その内の1人に“焔群”を投げ渡し、背の“六連”を6本すべて抜いて六爪の構えをとり、さらに両の腕がグラグラと煮え返る溶岩に包まれた。


「……なんだ、この嫌な気配?」


大罪である自分が、フォールダウン相手に振るう力ではない。

理解してはいても、拭いされない不快な気配。



――所変わって


光一は“蒼雷の九蛇”の本拠地に単身、交渉の為に出向いていた。

相手は……


「はじめまして。アタイが“蒼雷の九蛇”のリーダー、村中霞だ」


肩までの髪をポニーにし、タンクトップに短パン。

更に交渉の場だと言うのに、先ほどまでバイクをいじっていたのかオイルなどで汚れた風貌で。


「……あのな」

「悪いね。急な仕事が入って、さっきまでやってたのさ」

「まあ、こっちから持ちかけた交渉だしな。それじゃ時間が惜しい、その格好で良いからさっさと交渉を始めよう」

「受けるよ」

「まず、こっちからの要求は……はっ?」


いきなりの肯定に、光一は呆気にとられた。

襲撃までして組織を守ろうとしたと言うから、長期戦を予想していただけに意外だったゆえに。


「資金とそっちで開発した素材の提供、だろ? 十分だ、アンタ達の傘下に加えてくれ」

「……いきなりだな? 一体どうして?」

「アタイ達下級契約者の組織が使う流通ネットワークの最近の噂、掴んでないかい?」

「いや、そもそも使う必要がない」


大罪や美徳クラスが率いる組織ともなると、企業や国家機関との提携に困る事はなく、銀行からの融資も一流企業並みに受けられる。

故に物資や資金に関しては困る事がないどころか、独自の研究や開発で手に入る新技術や収入などで十分賄える。


故に、小組織が必要になる様な物資等、幾らでも手に入るどころか生産出来るため、そう言う流通ルートがあまり必要にならない。


「……盲点になってたか。で、そこがどうした?」

「最近だけど、ごく一部のルートで妙な事になってるんだ」

「妙なもの?」

「ああっ。そこで最近、出回る筈がない高度な兵器や装備、装置なんかが出回ってる」

「高度な? ……最近フォールダウンの装備が偉く高度なのはそれが原因か。けど、それ位なら大罪か美徳の組織からの横流しって」

「そんな事じゃない。それらが流れ始めてから――」



――所変わって。


「……? なんだ、杞憂だったか?」


そう時間はかからず、フォールダウンはあっさりと全滅。

辺りを見回しても、伏兵の気配はなく自分が心配する様な要素は、一切皆無。


「……知らず知らずのうちに、気を張り過ぎたか? まあいいや、さっさと」

「へへっ……」


ふと聞こえた声に、ユウは踵を返し戻ろうとしていた足を止める。


「まだ残ってたか。下がれ、たった1人で――」

「ふーはーっ! あははぁっ、ははははあはぁひゃあああっ!」

「?」


いきなり狂ったように笑い始め、頭を掻きむしり始めた。

焦点の合わない目でよだれを垂らし、ユウを見据えると……


「ひはぁぁあらわらちゃあああたまおいじあじぢあいれこえちゃこえあぱぱえてばえて」

「っ!」


意味不明の言葉の羅列を叫びながら、手を突き出す。

その腕が伸び、ユウめがけて襲いかかるが、ユウは腕でそれを受け流し駆けだす。


「おいおい、量産型のパワーかこれ!?」


明らかにそれは量産型で出せるパワーではなく、カスタム……いや、もしかしたら系譜に届く威力。


「ロg所柄jりあjtじゃおじぇ青jdファイm;dskbfjしれ@jちjrgvb」

「おい、味方に……」

「れ盾j太一じゃ居じぇおsじゃおpkf:dかkごあqか:をpこかうぇkf:あお」


当の本人は狂乱し、半開きになった口から舌やよだれを垂れ流し、ただひたすらに意味不明な言語を繰り返し……。

辺りを無差別に攻撃し始めた。


「kれおjちあjちえじゃjれいじゃいjtふぁじあじじぇf@じゃしえjら@じぇえ」

「おいおい……まさか、嫌な予感の正体はこいつか? とにかく取り押さえて、調べ……」

「びゃああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」

「っ!?」


急に悲鳴の様な声を上げると、ぴたりと暴走が止まる。

その契約者がびくびくと痙攣し始め……


「ごっげげぇっ……ぶふぉっぉぉっ! ぎげあがえがあああああっ!!」

「え……?」


急に苦しみ始め、頭を抱え背をのけぞり叫び声を上げると……

身体が膨張し、まるで風船が破裂するかのように身体が破裂し、びちゃびちゃとその場に赤い雨が降り注いだ。


「……っ!」


その中で、ユウは辺りを見回す。

そして……


「――ブレイカーが、2つ?」



「……本当なのかそれ?」

「ああっ。一体何が原因でそうなったかは分からないし、こんなことが出回ればおまんま食い上げになる可能性が高いから、誰も公表したがらないけどね。それで最近、流通ルートを使うのが気味悪くてね」

「成程……わかった、アンタ達の加入を歓迎しよう。じゃあ資金と物資の手配はすぐにやる。それで……」

「ごめん、アタイは系譜に興味はないんだ。ただバイクの整備ができて、それが野郎どもの役に立てればそれでいい」

「……無理に、とは言わないよ。ただ、あれだけ慕われてるアンタを登用出来ないってのは、残念ではあるがな」

「そうかい。なら代わりに、ウチで雇ってる変わり者を登用してやってくれないか? 戦闘に関してはそいつが率いてくれたから、ウチは大きくなれたんだ」

「へえっ、そりゃ楽しみだな」



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