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大罪と美徳  作者: 秋雨
第2章 煉獄に響く鎮魂歌
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第24話

慈愛崩壊から2カ月が過ぎた。


「久遠さんの超電磁砲が来るぞ!」

「よし、敵が崩れた!」

「好機だ、進め!」

「「「おーーーーっ!!」」」


光一が回復し、戦力を整えた憤怒は行動を開始。

他の大罪や美徳の戦地には赴かず、寧ろ均衡が崩れた事で行動を起こした負の契約者に攻撃を仕掛け……。


「さて、お前らに選択肢をやろう。1つは俺達憤怒の傘下に降る事。そしてもう一つは……ふふっ」

「ひいっ! わっ、わかったよ……ただ、俺の安全は保証してもらえんだろうな?」

「いや、ボスなんだから“達”をつけろよ……こいつはダメだな」

「はっ?」

「いや、こっちの話。それじゃお前ら“金色の獅子”は、これより憤怒の傘下だ」


傘下に組み入れ勢力を増強。


「さて……おい、お前ら!」

「「「はい!」」」

「食料を運び出せ! 医療班はケガ人の治療を! レスキュー部隊はガレキを調査し、生存者がいないか確認しろ!」

「「「了解!」」」


その後の復旧作業が終わった後に、市長等のお偉方とこの街一帯をナワバリとする交渉。

結果は嫌悪感こそあれど、二つ返事での肯定。


事を起こしたのが契約者であっても、生活の安泰を確保できるのも契約者。

契約者社会では、契約者に縋らねば人は決して生きてはいけない。


「「「……」」」


交渉を終え、すっかり日も暮れた外に出ると突き刺さる視線。

街を荒らした負の契約者と同じ、憤怒の傘下の契約者への嫌悪の視線。


その方向に顔を向けると、決まって四散する。


「久遠さん! 復旧作業、完了しました」

「ああっ。“あれ”も配ったか?」

「この辺りはこれからです」

「じゃあ急いで配れ。予定は立てこんでんだ、とろとろしてる暇はないぞ」

「はっ、はい!」


部下の契約者に指示を出し、駆けだしていくのを見届け……。

周囲からは完全に気配が消えていた。


それもその筈、契約者に指示を出す事自体が上級契約者の証明みたいなもの。

そんな人間にちょっかいを出せば、ただで済む訳がないという判断は至極当然であり、その後の判断は距離をとる事。


「……ふぅっ」


負の契約者に対する嫌悪感。

街を荒らし、傷つけたのは負の契約者である以上、自分達を見る目も同じ。


それに所詮は自分達も、崩れた均衡を利用して勢力とナワバリの拡大をしにきたにすぎないのなら……。


「……所詮俺達も、街を荒らした契約者バカどもの同類だもんな」


Prrrrrr


「ん? ――仕方ない、報告がてら帰るか。えーっと、代理を任せられる奴は……」



その次の日。


「……よう」

「あっ、光一兄ちゃ……なんで顔じゅうキスマークがあるの? それになんだか、女物の香水の香りが」

「いや、ちょっと月に呼び出されて……」

「ああっ……大変だったみたいだね。幾ら光一兄ちゃんが上級系譜とはいえ」

「……男としてはどうかと思われても仕方ないけど、世の均衡を司る大罪相手じゃ」

「その位にしよっか。それじゃコーヒーでも淹れるから、入って」

「ん」


戻ってきた光一は、トあるハプニングを経てボスの家に。


「あら、光一?」

「よう、宇佐美。準備は?」

「出来てる。歩美もさやかさんもみやちゃんもね」


リビングで、汗をふきつつ飲み物を飲んで、休憩中な宇佐美と顔を合わせる。

光一はソファーに座り、一息。


「最近遠出が多いわね?」

「大罪と美徳の動きが弱まったこの時期だからこそだ。色欲と同盟を結んだとはいえ、勇気と慈愛を庇護下に迎え入れたこの状況、決して生半可じゃない」

「それを打破する為の力を蓄えるため、かな……?」

「そう。それにそろそろ、俺以外の系譜の候補も欲しい」

「ああっ、それで負の契約者の組織を?」

「今から育てるんじゃ間に合わないからな。それで今日は……」

「ユウに仕事を持ってきた訳ね?」


光一を始めとする、大罪や美徳の側近を務める系譜の契約者の持つブレイカーは、それぞれの大罪や美徳のブレイカーを基に造られた模造品。

故にその選別と開発には、大罪のブレイカーが必要になる


「そう言う事。そのついでに、傘下に加えた契約者バカどもへのお披露目もな」

「そうなんだ。でも、系譜が増えるんならこれからは光一も……」

「そうでもない。宇佐美は特別だったからわからないだろうけど、本来は美徳クラスのブレイカーと契約なんて、そう簡単にできる物じゃないんだよ」

「そっ、そうなんだ……」

「それに次ぐ系譜も同じさ。契約条件が限定される上に、性能は量産型やそのカスタムとは比較にもならないから、性能を引き出せずに終わる奴だって結構いるのが現状」


そこで宇佐美は思い返す。


以前襲ってきた怠惰の契約者の系譜は、あの状況で1人だけ。

それにここでも、光一以外の系譜等会ってもいない。


「……それで、ユウの側近は光一だけなの?」

「そう言う事。それに憤怒だけにウチの組織は荒くれ者が多くて、系譜で事務仕事が出来る奴なんて俺位だから……」

「ユウの実家の仕事と、修行が忙しいのをわかってる上で言うけど、それで実質上での憤怒のボスになった訳ね」

「俺はボスなんて器じゃねえよ。それでユウは?」

「あたしの訓練に付き合った後、修行って言ってクエイク乗ってどこか行っちゃった」

「……じゃあ明日にするか」


当然ユウも、鍛冶仕事や宇佐美の訓練の相手ばかりではなく……

時折、火山地帯や山岳地帯に出向いての個人訓練も行っていた。


「それと宇佐美、“アレ”についてだけど」

「ちゃんと配ってる?」

「配ってるよ。しかし、提案が出た時には驚いたぞ?」

「だって、契約者としてはまだ光一にも敵わないけど、これならあたし達だって出来るじゃない?」

「その意気込みを買ってるから、こうしてる訳だけどね。場所と設備の手配ももうやってるから、後は日を待つだけだな」

「じゃああたしたちも頑張らないと」



――所変わって


「……漸く憤怒が動いたか」

「今は負の契約者の組織を次々と傘下に組み入れ、その支配下のナワバリを吸収してるみたいだがな。オレの予想じゃ……」

「そこまでだ。今の敵は“正義”と“誠実”、先の事は先で良い」

「……手ぇ抜いて戦ってやがるくせに」

「何か言ったか?」

「いや、何も」


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