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大罪と美徳  作者: 秋雨
第1章 物語の始まり、動乱の幕開け
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第19話

「あのぉ、ゆさみちゃん……みやちゃんたち、いったいどうなるんでしょう?」

「……あたしにも正直、どうしたらいいかわからないわよ」

「やっぱり、まだまだここで匿って貰うしか方法はないよね?」

「……でも、その所為でユウさんや久遠さん、憤怒の傘下の人達が傷ついたりするんですよね?」

「あの……大丈夫ですよ。ユウ兄ちゃん達の事、皆信頼してるから。皆の事、恨む人なんて1人もいません。だから安心して……」

「ごめん、流石に無理」


そんな会話が、朝霧家リビングで行われてる中……


「来るなら来るで、連絡の1つくらい欲しいもんだな。大罪が来るとなると、こっちもそれなりの準備ってもんがいるってのに」

「ごめんなさいね。こっちも色々と立てこんでて大変だから」


憤怒の契約者、朝霧裕樹は1人の女性と対峙していた。


腰まである艶のある黒い美髪に、切れ長の瞳に魅惑的に膨らんだ唇。

宇佐美にも引けを取らない豊かな身体に、それを自慢するかのような露出の多いチャイナドレスの上に、自分の腕の2倍はある袖の長い白衣をまとっていた。

全身から年不相応の色香を漂わせ、見る者全てを惹きつけてやまない……それを表現したかのような雰囲気の女性。


その後ろには、こちら側へ攻めてきたと思われるフォールダウン達……の山。


「うるさかったから掃除しといたけど、まずかった?」

「全然。寧ろ助かったよ、ありがとうユエ

「礼なんていらないわよ。ただ“潰し合いなさい”って言っただけだから」


負の契約者の頂点、大罪シリーズの1つ“色欲”の契約者、花柳かりゅうユエ


「で、用件は?」

「あら、聞かなかった? 同盟の提案だって」

「その理由は?」


ユウがそれを聞くと、月は柔らかく微笑む。

10人居れば、10人ともが軽く心揺さぶられる様な笑みで……


「歴史を動かした男に惹かれた。女にとって、それ以上の理由はいらないわよ?」

「はいはい。冗談は良いから本題入れ」

「……その言い方あんまりじゃない?」

「だったら“誘惑テンプテーション”解除しろ。宣戦布告にしか聞こえねえよ」


月の発言で、周囲はユウに対し殺気だっていた。

色欲側どころか、憤怒側の契約者達(男限定)までも。


「え? ……あっ、ごめん」

「……本当に同盟する気あるんだろうな?」

「もちろんよ」


ユウにせかされる様に、月はゆっくり指をはじく。


「あれ? ……しっ失礼しました!」

「なんなんだ一体? どうしてボスに、武器なんて……?」


それと同時に、ふっと周囲の雰囲気が変わる。

主に憤怒側の契約者達が、はっと正気にかえりユウに武器を向けていた事に慌て始めた。


「気にすんな。こいつの能力の影響だってわかってる」

「あら、優しいのね?」

「俺達大罪か美徳、もしくは光一を始めとする上位の系譜以外じゃ無理な相談だろ。お前の能力で生成したフェロモンに抗うなんて」


ふふっと、艶のある笑みを浮かべると……。


「同盟を結びたい理由は簡単よ。単純に勇気の契約者に興味がないし、あったとしても戦うには相性が悪過ぎる貴方とぶつかる事になる以上、対価が釣り合わない」

「……だが、戦いが始まってしまった以上、何かしらのアクションは取る必要があるから、こうして同盟の提案をしに来たと?」

「そう言う事」


契約者による組織の戦いは、首領格の戦力差も勝因の1つである。

特に大罪や美徳格となると、戦力として大き過ぎるが故に致命的になる。


「ココ以外と同盟を結ぼうにも、それがバレバレである以上どうやっても不利な提携しか出来ない。でも……」

「今戦争の元凶である俺たちなら、幾らか交渉の余地はある……か?」

「そうよ。もちろんタダで、とは言わない。防衛戦力とこちら独自の技術提供、そして私自慢の医療班を派遣するわ」


色欲のナワバリでは主に植物の研究が盛んであり、それに付加する様に医療技術も一線を画していた。

その医療班ともなれば、負担の大きい憤怒勢力にはありがたい話。


「随分と気前がいいじゃないか。だがそれ位じゃ、裏切らないって保証には至らない」

「最もではあるけど、疑り深いわね」

「世を乱した元凶に協力する。そんなの軽々しく信用しろってのが無理だ」

「人は世の流れに身を任せれば“運命の奴隷”。そして欲望に流されるだけなら“欲望の奴隷”……人は理性と欲望の狭間で漂う奴隷でしかない」

「久しぶりに聞いたな、それ」

「くだらない男に興味はない。ただそれだけ」

「……ってか、それってつまり」


「おーい、会見の場整ったうわっ!」


そこへ話を遮る様に、光一が声をかける。

……と同時に、月の白衣の袖から幾多もの蔦がのび、光一をとらえ引き寄せた


「お久しぶりー、元気だったー? ダーリーン♪」

「むがっ! むぐがぶーむんばっ!!」


「……つまり光一が居れば裏切らないって事かよ」


色欲の契約者、花柳月は光一にぞっこんだった。

白衣から伸びた蔦は光一をとらえ、それを引き寄せその豊かな胸に光一の頭を抱え頭に頬ずりし始める。


「「「……モゲて死ね。このクサレモヤシが」」」


その場全員の男(ユウ除く)がそれを見て、思いっきり怨念を込めて一斉にそう呟いた。


「交換条件に光一よこせってのは、こっちも困るんだが?」

「組織運営全般任せられる系譜の上位格、そう簡単に手放せる物じゃないのわかってるわよ。まあこっちの仕事、いくつか手伝って欲しい位で」

「その辺りは光一に聞かないと。流石に俺の勝手で組織全般丸投げしちまってる以上、更に負担駆ける訳には……」

「わかったよ、やってやる。現状色欲との同盟はありがたい話だから、それ位なら」


ツタを元素操作で腐らせ、電気で焼き切って脱出した光一が承諾する。

少々酸欠気味で、口に手を当てて酸素を生成しつつ。


「……ダーリンまた強くなったわね。まさか耐電耐熱を施したこの蔦を、元素操作で腐らせて焼き斬るだなんて」

「ダーリン呼ぶな。それとお前ら今の聞こえてたから全員減給」


「「「ノォォオオオオオオオオ!!!」」」


こうして、憤怒と色欲は同盟を結ぶ事となった。

……とある男の尊い犠牲によって。


「達がないぞ!」

「自業自得だアホ。てか死んでない!」




「……」

「? どうかしましたかー? あゆみちゃーん?」

「……わからないんですが、今何か胸騒ぎが」

「相手は色欲なんだし、もしかして……」

「さやかさん、子供の前でそんな事言わない!」

「あっ、ごめんね宇佐美ちゃん」



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