第18話 改訂済
傲慢・強欲連合と正義・誠実連合。
そのぶつかり合いの煽りは、世を動かした。
美徳も大罪も、自身の対を抑えるべく行動を開始。
元々の準備は終わっていたが故に、早くて本日中遅くても明日にはぶつかる予定。
メディアもこぞって大罪と美徳の動きを報道し、その戦場予定地に近い街からは避難勧告が出される。
これに対しては大罪も美徳も避難民を自身のナワバリに受け入れ、衣食住の保証を確立。
余談だが、暴食のナワバリは食料が豊富なため避難先としては人気が高く、その事にとある美徳の1人が激怒していたとか。
……そんな中、1週間が経過。
「おらおら! 進め進め!」
「勇気を憤怒が匿ってるのは確かなんだ! 探し出せ!」
その戦争の原因である憤怒のナワバリでは、フォールダウンの襲撃が激化していた
「ええい、くそ!」
「援軍は!?」
「そろそろ来る筈です!」
そこへ、会話を遮る噴射音。
ふと空を見ると……
「クエイク? って事は……」
まだ高高度であるにもかかわらず、そこから飛び降りる1つの影。
それは境目の防衛線の前に着地し……。
「人のナワバリにずかずかと踏み込もうたあいい度胸じゃねえか!」
憤怒の契約者、朝霧裕樹出陣。
「ふっ、憤怒!?」
「バカヤロウ、怯むな!」
「撃て撃て! 討ち取ればこのナワバリも勇気も俺達のもんだ!!」
フォールダウン達は、士気が落ちることなく――というか、欲で奮い立ち、一斉にユウめがけて突進、あるいは砲撃。
その様子にユウは呆れ、左手に持つ愛刀“焔群”の柄を右手で握り……
「うっとおしいわ!」
怒号と同時に、ユウは“焔群”を抜き、抜刀術を仕掛ける。
突進した数名が、突如強風で吹き飛ばされる枯葉のように吹き飛ばされ、その余波で能力による幾多もの砲撃をもかき消した。
それと同時にユウは駆けだし――
軌道を描くかのように、ユウが進んだ地点で兵器の残骸が人が、打ち上げ花火のように吹き飛ばされていく。
「くそっ! 機動隊前へ!!」
ドームの様な頭部に、四角い金属の筒をにつなげた様なボディに背にはバッテリーパックに予備の兵器。
全長で3メートルはあるそれらは、人が乗り込み操る“駆動鎧”と呼ばれる兵器。
これは警察や一部の警備会社等、契約者と協力関係にある組織や機関に、警備用として出回っているためさして驚く事ではない。
しかし……
「……無人機?」
それらからは人らしい気配が全くなく、動きもどこか機械的。
駆動鎧の中には、人工知能を搭載し自律行動をとれるようにした、無人機として併用できるタイプもある。
しかし、それらは一般どころか協力関係にも、高価故に出回ってはいない代物。
「……どっかの大罪か美徳からの横流し? ――にしては数があり過ぎるな。と言う事は、どっかのまわし者か?」
戦争どころか勝負でも、常に相手は待ってはくれない。
駆動鎧が一斉に、普通より2回りは大きいショットガン、あるいは女性の胴体ほど大きなランチャーを構える。
「……まあいいや。一機だけでも確保しとこう」
と、ユウが“焔群”を手に駆けだし、敵は一斉射撃。
その銃弾を回避し、剣で受け流し……ランチャーの弾を真っ二つに。
「なっ!?」
「んなガラクタでどうこう出来ると思ったか? ……笑わせんなコラ!!」
距離を詰め、まず一体を頭から股下まで真っ二つに。
次は横一列に並ぶ2体の首を斬り飛ばし、人工知能が搭載された頭部が2つ宙に舞う。
一閃ごとに高価な兵器が、単なるスクラップに変貌していくその光景を見て……。
「あの兵器に俺達の資金殆ど費やしたのに……!」
「これじゃ、組織の運営も……」
「畜生、こうなりゃやけだ!! 全員かかれー!!」
敵はすっかりやけを起こし、全員が突撃。
「いや、まあそれだけ今回に賭けたってのはわかるが……」
残り2体となり、1体はバッテリーパックを斬り飛ばして、もう1体はバッテリーパックを壊して行動不能に。
開発陣への手土産を確保したユウは……
「大罪を甘くみた罰だと知れ!!」
その後、100人近くいたフォールダウンは、1人残らず蹴散らされた。
……能力を使うまでもなく、来てから30分も経たないうちに。
――所変わって。
「ただいま」
「あっ、お帰りユウ兄ちゃん」
さして疲れた様子も見せず、ユウは帰宅。
妹の出迎えを経て、リビングで茶を飲みながらニュースを見る。
「「「「……」」」」
そこではラッキークローバーの4人が、顔を青くしていた。
「……怖いか?」
「怖いわよ……だって、戦争でしょ? 大体なんでさっきまで防衛戦してたっていうのに、そう平然としてられる訳!?」
「俺は常に前線に立って、力を誇示する事で組織まとめる方だ。これ位の事でへたばってたら、とうに崩れてるよ」
「……それが“負の勇者”って呼ばれてる所以なのね」
「宇宙もそうだったから、俺達がぶつかるのを“勇者の激突”何て呼ばれたことあって、それが憤怒と勇気の開戦の合図みたいなもんだった……こうして考えると、懐かしいな」
「そう……ところで、光一は?」
「別の区域の防衛線の指揮に……」
「もう終わったよ」
会話を遮る光一の声。
こちらは、多少疲れた様子で入ってきた。
「……お疲れ様」
「……マジで疲れた。それよりユウ、ちょっと聞きたい事があるんだが」
「なんだ?」
「そっちが担当した区域から攻めてきたフォールダウン、不自然な事はなかったか?」
「……そっちもか?」
「……ああっ。大罪か美徳か、その誰かがフォールダウンに何かしてる可能性が高いな」
Pipipipi!
「はい? ……何!? ――わかった。すぐユウを連れて行く」
「どうした?」
「“色欲”が来てるって」
「何!?」
光一の言葉に、その場がどよめいた。
「色欲って……大罪の1つの?」
「だよね? ……だっ、大丈夫なの?」
「……こわいです~」
「……(がたがた)」
「それで、用件はなんだって?」
「――同盟の提案だってよ」




