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大罪と美徳  作者: 秋雨
第1章 物語の始まり、動乱の幕開け
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第17話 改訂済

宇佐美が勇気の契約者となって、2週間。

世は再び、乱世へと移行する兆しを見せていた。


「正義と誠実が!?」

「ああっ、昨日中に同盟組んで本日7時、傲慢・強欲連合に攻撃を仕掛けた」


朝霧家の食卓にて。

朝一番にやってきた光一から告げられた情報に、ユウも宇佐美も驚きを隠せずにいた。


「じゃあまた、あの頃の様な……」

「そうなるだろうな。あの時は要を失った勇気のナワバリを狙って、あちこちのフォールダウンが決起したのが始まりだったが」

「……今回は、あたし……なんだね?」

「そうだな。更に言えば、負が正を庇護下においてるって言う状況、特に北郷のバカが黙ってる訳ない」


正の契約者は、負の契約者に対しての嫌悪感が強い傾向にある。

その筆頭が正の契約者最強であり、負の契約者及び犯罪者の徹底的なせん滅をモットーとする、正義の契約者、北郷正輝。


「……兄さんから聞いたことはある。あんまりいい感情は抱いてなかったみたいだけど」

「そりゃあ、正義と勇気は元々色々あったからな。さて……」


ユウは椅子から立つと、工房へ。

それを見送り、光一もその場を立つ。


「俺もしっかりと“焔群”と“六連”の精度、上げないと」

「じゃあ俺は境目の警備の強化申請しとく。大罪と美徳が計4つも動いた以上、他の大罪や美徳も絶対にあおりを受ける。それを狙ってフォールダウンも動くだろうし、これからも忙しくなるな」

「いつもすまん」

「だったらしっかり準備しとけ。お前には最前線でしっかりと奮闘して貰うんだから」

「わかった」



――所変わって。


「……」


ユウの家は鍛冶屋であると同時に、研ぎ師でもある。

包丁等を製造し研ぐ傍らで、昔から続く刀鍛冶としての技術を後世へと伝える家系。


と言っても今は家の仕事の手伝いで、顧客から送られてきた包丁の研磨。


「色々とあるのね?」

「確かに、日本刀の依頼もあるけど、それだけで食ってける訳じゃないからな」

「ふーん」


その横で、宇佐美はユウの仕事を邪魔にならないよう見ていた。


「……仕事が終わったら“六連”研ぐから、今日は相手出来ないぞ?」

「なら仕事見せて」

「勝手にしろ」


「「「「…………(にやにやにや)」」」」

「……やめましょうよ。趣味悪いですから~」


「……やっぱ出てけ」

「……はーい」



――一方


「……わかりきってはいた事だが、これもお前に言わせれば“巡り合わせ”か」

「はっはっは、その通り。全ては必ずや繋がってる物であって、その巡り合わせが今を創る。傍観者こそが最大の愚者、無関係なんて事はあり得ないのさ。絶対にな」

「……お前の哲学は、実に興味深いな」

「哲学も欲望から生まれたものさ。全ては欲から生まれ、欲により発展する。“欲深いバカは身を滅ぼす”? クソ喰らえだ。強欲こそが人を最も強くする大罪最高の欲望、いずれは大罪最強の椅子も手に入れてやるよ」

「それは楽しみだな」


唐突に始まった正義・誠実連合からの攻撃。

それに対し……。


「あの、お2人とも」

「兄貴ー、何も首領格が2人も出る事ありやせんぜ。ここはあっしらに……」


傲慢の系譜、野心の契約者岩崎賢二

強欲の系譜、渇望の契約者武藤和樹。


側近格の系譜達が、揃って2人のみの出陣を止めようとする。


「逆だ。こんなゴミ掃除に時間をかけていられるか」

「お前らは黙って祝勝パーティーと、抗議のあった街にあのバカ共磔にする準備でもしてればいいんだよ」

「はあっ……」

「……やめましょう。言い出したら聞かないのは同じでしょう?」

「へいっ……ではあっしらは、その準備に入ります」


すごすごと去って行く2人。

その中でシバは、背の自分の身の丈はある包みに手をかけ……


「さて……って、もう行きやがったか。くそっ!」



――場所は前線


「来たぞ、傲慢だ!」

「マジかよ、いきなりって!?」

「ええい、怯むな! あいつを討取ればこちらの勝ちだ!!」


姿を見せた白夜に、正の勢力側は怯むも進撃。

契約者達による能力、兵器による砲撃による攻撃が一挙に殺到。


それに対し、白夜は両手を左右に伸ばすとぐっと拳を握り、右足を振り上げ……


「やったか!?」

「まだだ、油断は……え?」

「なんだ!? 地面にヒ……うっ、うわああああっ!!」

「ひいいいいいっ!!」


「真の絶望を知るが良い……“奈落ドゥームズデイ”」



――数十分後


「おい、先に行くんじゃねえよ! お前の移動に合わせられる訳ねえだろうが!」

「それはすまなかったな」

「ったく……オレの分位残しとけってんだ!」


その場には何もなかった。

敵対勢力が誰一人として倒れていないどころか、武器や兵器と言った物の破片も。


白夜の立っている個所の直径1メートル以外が、不自然に抉れている事を除けば何もない……と言った状態だった。


「てか、ちゃんと生きてるんだろうな?」

「無論だ。磔にするのだろう? 後で出してやる」

「ったく……最強の壁は厚く高いってか? けどこれじゃつまんねえや」

「ならば第二陣はくれてやる」

「ああそうかい。ならお前は……だから黙って行くんじゃねえって言ってんだろうが!!」


「強欲だ!」

「仲間をどこへやった!?」

「知らねえってか、知る必要ねえよ」


身の丈ほどもある背の包みをとき、巨大な土瓶を取り出す。

その瓶を……


「生憎とオレは、こんな行儀よく出来ねえからよ。ちょーっと散らかりな!」



――時は過ぎ、正午の朝霧家。


「もう終わった!?」


光一から再度伝えられた情報に、宇佐美は驚きを隠せなかった。


「正確には、美徳側が主力を除いての下位戦力をほぼ壊滅させられた、だな」

「……ちょっと待ってよ。いくら下位戦力でも、契約者でしょ!? それに美徳2つ分の勢力なら、それだけの数いたはずなのに!?」

「大罪が2人出張った」

「……!」

「そろそろ自覚しろ、宇佐美。アンタが持ってるそれも、立つと決めた領域もそう言う物なんだ」

「……ねえ、まさかと思うけど」

「いや、まだこっちに手だしは出来ない筈だ。美徳側は主力が出てないし、事によってはひっくり返される事もあり得る。まだまだわからん」


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