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大罪と美徳  作者: 秋雨
第1章 物語の始まり、動乱の幕開け
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第16話 (改訂済)

「成程ねえ……運命という名の魔王から姫君を守るべく、負の勇者が今ここに立つ、か。“慈愛”辺りが喜びそうな話題じゃねえか」

「……だろうな。大罪だの美徳だの大層な呼び方をした所で、我らの根源はエゴだ。これもまた、我ら契約者たる所以かもしれんな」


所は強欲の契約者、武田シバのナワバリ。


同盟の間柄の都合上、自身が赴き手に入れた情報は共有する義務がある。

故に白夜は、強欲の契約者武田シバの下に赴き、事の説明に。


「それはさておきだ。“嫉妬”が密かにとはいえ行動を起こした以上、近々表立った抗争が激化する筈。もちろん、我らの対の勢力もだ」

「まあ人の世は常に“巡り合わせ”次第であり、幸も不幸も所詮は自らの行い次第。他人を否定し責める理由になりえないのさ」

「……違いない」


シバが差し出した盃を手に、互いに誓いを現すかのように同時に飲み干す。


「改めて、よろしく頼む」

「……こちらこそ」



――所変わって。


「あーっ、疲れた」


ユウの自宅兼仕事場。


「……すまん」

「……構わねえよ。相手が相手だってわからんほど馬鹿じゃない」

「その割には言葉にとげがないか?」

「当たり前だ。境目だけに、抗議の対応すっげえ大変だったんだぞ!」


昨日の戦闘の事後処理(というか、ユウが出した被害)が終わり、一息つく光一。


「お疲れ様です。どうぞ」

「どうも」


そこへ歩美が、冷たいお茶を光一に差し出す。

光一は受け取ると、そのままくいっと飲み干して……


「で、そっちはどうなんだ?」

「まだ駄目だ」


ダメというのは、まだ剣も抜いていないと言う事。


「能力の方は?」

「そっちは一応、言われた基礎は出来る様になったけど……」

「なあ光一」

「いくら損害かかると思ってんだ!?」

「何も言ってないのにいきなり説教かよ!?」

「どうせ“思いっきり使わせてみよう”とでも言いたいんだろ!?」


図星


「そんなにすごいんですか?」

「俺を始めとする系譜クラスが戦術兵器クラスの力を出せるとしたら、こいつ等大罪や美徳は自然災害クラスの力を出せるんだよ。やたらめったらに使われたら、ナワバリの大半がめちゃくちゃになっちまう」

「まあ論より証拠……と言えないのがつらい所なんだよな」

「とはいえ、全力がわからずってのも危険か……明日まで待ってろ。手配はするから」


呆れたように頭を押さえ、携帯を取り出す光一。


「良いの?」

「出来れば派手な事は控えたかったけど、どんな物かわからんのに使わせる方が危険だし、能力を使う上で全力を知らないってのも問題だしな」

「光一は話がわかるわね」

「……そりゃどうも」



更に時は過ぎ――。


「ここは?」

「兵器の稼働実験場。ウチは新素材や金属、それと兵器やロボットなんかの開発が主流だから、こういう施設が必要なんだよ」


宇佐美はきょろきょろとあたりを見回す。


デパートやオフィスビルを思わせる、大きなフロア。

しかし窓はなく、照明はそんなになく薄暗い。


「……ここ、地下だと思うんだけど?」

「心配しなくても、ユウの能力でここの強度は実証済み。それに提携先の企業や銀行からの融資やら出資やらがあるとはいえ、土地だって無限にある訳じゃないからな」

「出資って、またすごい単語が出たわね?」

「そりゃ契約者、それも大罪の組織ともなると色々と待遇が違うんだよ」


とまあ、長々とした話はここまで、と光一は話を切る。


「さて、始めるか」

「そうだな。んじゃ、ユウは対面する形で立ってくれ。俺は3人のガードに回るから」

「ん、了解」


光一が駆動鎧パワードスーツを纏う3人に駆け寄り、宇佐美とユウは向き合う。


『こんな頻繁にこんなの着る事になるなんて思いませんでした』

「我慢してくれ。俺だって無事でいられる自信ないんだから」

『……どんだけなの?』

「たかが系譜に大罪と美徳の2人を相手にしろって方が間違いですからね!?」

『おおごえでいえることじゃあないとおもうのですよー』

「ほっとけ!」


一方……


「思いっきり来いよ。折角だし、俺も能力は使うから」


そう言っているユウの右腕は、既に赤黒いマグマに包まれ煙を上げていた。

黒い黒煙を上げる真っ赤なマグマは、自己主張するかのようにボコボコと煮えかえる


「……もしかしてそれ、マグマ?」

「そう。まあ構成は自分で考えな?」

「どうやってそんなの……」

「一応言っとくけど、俺の剣“六連”はこの状態でも使えるからな?」

「……改めて、あなたみたいな人と対だった兄さんのすごさが、良くわかるわ」


そこで気持ちを切り替えて、イメージ。

足を風が包み、それを蹴りで鎌風へと造り変える。


刃の動きは、ユウの剣技を思い浮かべ……


「行くわよ!」

「来い!」

「思いっきり……振り抜く!」


右足に風を集中させ、左足を踏み込み……

右足を大きく振り……


ボヒュウッ!!


巨大な鎌風が生じ、ユウめがけて襲いかかる。


「っ! でかい!?」


予想以上の巨大な鎌風に、ユウはぎょっと目を見開く。

がそれも一瞬で、ユウの右腕を包むマグマが急激に肥大化し、それがユウの何倍もある大きさへと変貌。


「はあああああっっ!!」


真空刃と溶岩の腕がぶつかった。


「ユウ!」


巻き上げられた煙の中、宇佐美は駆けだした。

それと同時に、震えていた。


あの巨大な鎌風が、自分により生み出された事に。


「……!」


ふと見た先では、大丈夫と聞いていた地下階の床が、素材面を通り越し、地層に至るまで切り裂かれていた。


「これが……」

「そう、これが美徳クラスの力だ」


いきなり横から声をかけられ、ぎょっとする宇佐美。

しかしユウの声だとわかるや否や、ほっとし……


「大丈夫だった?」

「大丈夫大丈夫」


ポタッ……!


「じゃないわよ!」

「ん? ああっ、受けきれなかったか。流石は美徳の単一能力の威力、見くびってた」

「早く治療しないと!」

「いや、いらない」

「いらないって、そんな……え?」


宇佐美が慌ててとった、ユウの手の甲から肘まで浅くない傷を見ると……

既に血は止まっていて、傷自体も殆どふさがっていた。


「え? なんで!?」

「俺は発火能力がメインだから、炎熱の作用で普通以上に傷の治りが早いんだよ」

「そっ、そうなんだ……」

「それより、いつまで握ってんだよ? こんな所光一達に……」


「おーい、大丈夫……か……?」


手遅れだった。


「『『『…………お邪魔しました』』』」

「だから待て!」

「今のは傷の治療のために手を取っただけよ!」


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