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大罪と美徳  作者: 秋雨
第1章 物語の始まり、動乱の幕開け
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第14話 改訂済

場は変わり、光一の交戦地点。


「ふむっ……」

「あら……」


光一の引き裂かれた脇腹が、ビデオの巻き戻しの様な、急激なスピードで修復されて行く。


「トランスが発動しましたか」


トランスとは、契約条件の感情が一定値を超える事で発動する、ブレイカーのフルドライブ。


ブレイカーは外部演算による信号のやり取りで、人に超人的な能力を与える演算装置であり、演算領域を振り分けることで、複数の能力を行使する事も可能。

しかし、光一の発電能力と同等の発電能力オンリーの契約者と比較すれば、威力も精度も振り分けている光一が劣ってしまう。


しかしトランス状態時は、ブレイカーとのリンク値が最大となり、威力も精度も100%のパフォーマンスで行使できる。

故に光一は、普段では“絶対”出来ない傷の治癒も可能としていた。


「憤怒の売りは不死身……と言う事でしたが」

「彼の場合は恐らく元素操作で主に血液を使い、傷を修復したのでしょう。これはワタクシが楽しめる要素が少ないですわ」

「血液が不死身の要素なら致死量がリミット。支障となる要素はありません……ですが、本気で行きましょう」


ミスタ・バンデージがガチンと拳を打ちつける。

光一に向けて手を伸ばし、燕尾服の至る個所から包帯が舞い踊る様に抜け出て……燕尾服がパサリと落ちた。


宙に舞った包帯がシュルシュルと収束し、それが人の3倍は蛇を模ると……


包帯遊戯マインドバンデージ擬態トランスフォーム……モデルコブラ」

「……包帯と同化するってだけでも厄介なのに」

「ただ同化しただけではありませんよ」


包帯蛇の身体がうねり、グワっと口を開け光一に向けて突進。

その後ろの大木に噛みつき、あっさりとへし折った。


「甘いな」


その隙を狙い、炭素コーティングの上に、更に電磁力で砂鉄を振動させている腕を包帯蛇の胴体にたたきつけようと……


「どちらがですか?」


包帯がバラけ、光一の攻撃は空振り。

そのバラけた包帯は光一の後ろに収束し……サソリの姿へと変体。


「別に蛇以外になれない訳ではありません」


包帯サソリの尻尾がビュンと風切り音を鳴らし、光一の顔面に直撃。

光一の体を吹き飛ばし、後ろの木に激突させ――体内から鈍い音が響くのを感じながら、光一は地面に突っ伏した。。


「ではお次は……」


ヒュンっ!


「ぐっ! ……なっ、何だ!?」


突如、サソリの足の1本がオレンジ色の閃光に撃ち抜かれ、包帯が数本引きちぎられる。

その軌道は――光一の右手から。


「……戦闘に遊びの要素からめてんじゃねえぞコラ」


よろよろと起き上がる光一が飛ばしたのは、指弾。

ただし……


「ぐっ……超電磁砲レールガンですか!?」


包帯が燕尾服に集まり、それが膨らみ元のミスタ・バンデージの姿に戻って行く。

……血が滴り落ちる、わき腹に包帯を集中させた上で。


「……迂闊でしたね。銃を使わず超電磁砲レールガンを撃てるとは」

「出来ないなんて一言も言ってないぜ?」


光一もトランス状態なら、指弾で超電磁砲を使う事が出来る。


普段では、初速で秒速290メートルと言う音速にやや届かない程度が限界。

それも、超電磁砲レールガンを銃で行える事を活かす為の、ハッタリにすぎない。


「ああっ、勿体ない……勿体ないですわ」

「うっ……よせ、ミス」


黒い燕尾服では目立たないが、ポタポタと服を染めつつ滴り落ちる血液。

それを見たミス・ファントムが駆け寄り跪き――服を切り裂き、傷となった個所に顔を埋め、なめ始める。


「温かい……温かくて、美味しくて、愛しい味……ああっ、愛してます。愛してます」

「吾輩もだ……ううっ、そこ」


「おいコラ!」


奇怪なラブシーンの始まりは、光一のツッコミで中断。

ミスタ・バンデージはこれは失礼と、シルクハットを取って一礼。


「……失礼」

「さて……続きやるか? どうせなら、散弾超電磁砲ショットレールガンも披露してやるが?」

「……いえ、今回は引き下がらせていただきます」

「懸命だな」


光一は内心で安堵した。


実を言うと散弾超電磁砲ショットレールガンなどハッタリ。

先ほどのダメージと、傷を埋めるために血液を使ったせいで、殆ど貧血状態。


「――ですが、これで終わりだとは思わないように。マザーはどうも、彼女がお気に召さないらしいので」

「それではまたお会いしましょう」


ふっと、ミスタ・バンデージが発動した“瞬間移動テレポート”により、2人の姿が消え去った。


「……現状と他勢力の動きを甘く見過ぎたか」


現状、もう少し時間稼ぎは出来ると踏んでいた。

しかし嫉妬が動いた以上、他勢力も何らかの実力行使の動きに出る筈。


「……やばいな。ユウに知らせないといけないのに」


重度の頭痛が生じ、光一は倒れた。

右目から血の涙が流れ、意識も朦朧としている。


普段以上のパフォーマンスを駆使した為に生じた、脳や身体への過剰な負荷。


「あー……くっそぉ……」



所変わって――


「……! 今の……光一は無事って訳じゃあないみたいだが、何とかなったか」


感知した動きに変化が生じ、敵が退いた事を感知するとユウは一息。

しかしそれも一瞬で、すぐに表情を引き締める。


「もうすぐナワバリの境目だな……クエイク、俺降ろしたら下がれよ?」

『Yes!』

「さて……」


遠目に見ると、ナワバリの境目から少し離れた地点で白夜は座っていた。

白夜も既に、ユウが気付くと同時に気付いている。


「クエイク、高度は下げるな。このままでいい」

『What?』


ユウが背の6本の刀“六連”を抜き、白夜が横殴りする動作をおこなう。

ユウの両腕から赤黒い物が吹き出し、白夜の拳の先で空間が砕けた。

ユウがクエイクから飛び降り、白夜は砕けた空間から一本の大剣を取り出す。


それらがほぼ同時に行われ――2人はぶつかった。


「うっ、うわあああああっ!」

「しっ、しっかりつかまれ!! 衝撃が治まったらすぐに逃げるんだ!!」

「でっですが、ボスを……」

「援護なんて出来る訳ないだろ! 系譜が戦術兵器だとしたら、大罪や美徳はうわあああああああっ!!」


その激突で生じた衝撃は、境目を警備していた下級契約者達やその設備を薙ぎ払い――その場全員に、この世の終わりをも思わせた。


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