第13話 改訂済
「……まったく、光一の野郎」
ユウの実家兼工房。
ぶつくさ言いつつ、ユウはリビングのソファーに横になっていた。
光一には逃げられ、宇佐美も耐えきれず逃げ出してしまい、冷やかしの中心に立たされてしまいで踏んだり蹴ったり。
「……なーにが愛を確かめ合って、だ。くっだらねえ」
「……逃げておいてなんだけど、もう少し言葉選んでくれない? くだらないなんて、流石に傷つくんだけど」
「……居たのか?」
「今来たのよ」
ペットボトル飲料とコップ2つを持った宇佐美が、ゆっくりと対面する良血のソファーに座る。
飲み物を注いで1つはユウの方に、そしてもう1つは自分で一口。
「……他の3人は?」
「もう寝ちゃった。裕香ちゃんも、お爺さんもね」
「そうか」
ごそっと、枕にしてるクッションを取り……戸に投げつけた。
「? どうかした?」
「いや、なんでもない」
「……気付いてたみたい」
「……さすがはさいきょうですー」
「……だからやめましょうっていったのに」
「……仕方ないね。引き上げようよ」
「……残念じゃのう」
「……ねえ、ユウ」
「言わんでくれ」
宇佐美が恐る恐る聞こうとするのを遮り、ユウは頭を掻いて起き上がる。
隠者が逃げたのを察知すると、ハァッとため息をついた。
「のんびりくつろぐ気分でもなくなったな」
ユウが面倒気に起き上がり、注いで貰った飲み物を飲み干す。
自室で寝ようとリビングを後に……
「……待って」
しようとした所を、宇佐美に止められた。
「聞きたい事があるんだけど」
「何?」
「……兄さんが死んだ時の事なんだけど」
勇気の契約者、一条宇宙の死。
それは突如として訪れ、その知らせが訪れると同時に正と負の均衡は崩れ、負の契約者達の暴走を引き起こした。
負の契約者達は、こぞって盟主を失った勇気のナワバリを荒らしまわり、世の情勢を大混乱に陥れる事態へと発展。
それも対を失った憤怒が、勇気のナワバリを荒らした契約者達を悉く潰し回り、それ以外は何もしない事でゆっくりと混乱は収まって行った。
……世は契約者を危険視し始めると言う傷跡を残して。
「……あれは酷かったな」
「ええ。兄さんが好きだった街並みが荒らされて、あたしの友達も何人も大ケガさせられたりした……兄さんへの罵倒も、よく耳にした物よ」
宇佐美の兄の死は、原因不明となっていた。
宇佐美も突如連絡が入り、死体となった宇宙と対面したのみで、一体何に関わり何があったか……それらを全く知らない。
だからこそ疑いは“勇気”の対である大罪“憤怒”へと向かっていた。
「――教えてくれないかな? 兄さんに、いったい何があったの? 何か知ってるんじゃないかな?」
「……知ってるどころか、俺はその場にいた」
「じゃあ教えて。一体何が……」
宇佐美はその先を告げる事は出来なかった。
ユウが普段、バンダナや眼帯で覆い隠す様にしてる左目を露わにし……その有様に絶句させられたが故に。
「確かに俺は、一条宇宙の死の真相を知ってる。だから宇佐美も助けたし、俺の対としてやっていけるまで守り抜く事も誓う……その上で言わせてもらう」
ゆっくりとユウは左目を、バンダナで覆い隠し……
「まだ早すぎる」
酷な判断だと、ユウにもわかっていた。
あの時以上に強くなった自信はあれど、剣を使うまでもない程度でしかない宇佐美には重すぎる真実。
だからこそ今は……。
「……ごめん」
「ううん……わかってる。まだユウに能力どころか剣も使わせてないあたしが、どうこうできる訳がないって事は、よくわかったから」
「でも宇佐美も契約者として生きていくことを決めたんなら、いつかは話せる。それまでは俺が……」
ふとユウは、何かに感付いたようなそぶりを見せると、すぐ窓を開け放つ。
「? どうしたの、光一?」
「……契約者がぶつかってる。しかも片方は、光一だ」
「え? わかるの?」
「その内宇佐美にも出来るようになる。すまないが、3人を連れて地下に隠れて……」
ユウの言葉を遮る様に、ユウの携帯が着信音を鳴らした。
着信の分類は……
「緊急!? ……もしもし?」
『あっ、ユウさんですか!? こちらナワバリの境目』
「どうした!?」
ナワバリの境目。
普段こそ一般人の出入りのため、検問地点の様になっているそこは、混乱していた。
――たった一人の来訪者により
「私は傲慢の契約者、大神白夜。夜分遅くの訪問申し訳ないが、お前達の盟主憤怒の契約者朝霧裕樹との謁見を希望する」
「俺を?」
『はい。一対一で話したい事があると……』
「――わかった、すぐに俺が行く旨を伝えろ。攻撃はするな」
そう言って、ユウは携帯を切って……
「夜遅くにすまない。事態は聞いてるか? ……そうか。ならこっちにクエイクを」
そう連絡し、戦闘用の服に着替え……
「……ユウ」
「心配するな。何もない」
「でも……」
「ごめん……でも、今は耐えてくれ」
宇佐美に頭をさげ、家を出ると同時にクエイクに飛び乗り、その場を後にした。
「覚悟してたとはいえ、事態の進みが早すぎるな……腹が立つ位に」




