第11話 改訂済
空に満月、あたりは静まり返った静かな夜。
大都会と表現するに相応しく、高層ビル並び立つ街並みの内の1つの屋上。
「優美な街並み、贅沢で静かな時間……この街でのそのすべてがオレの物」
「……偉く自分勝手な詩人ね」
「それがオレ、“強欲”の武田シバだ」
座敷を敷き、1人の男が肉を齧り酒を飲み、女を侍らせ優雅なひと時を過ごしていた。
「……俗物臭い光景だな、強欲のシバ」
それに呆れたような口調で茶々を入れる人影。
「いきなり御挨拶じゃねえかよ。こんなママゴトに茶々入れとはな」
「……お前の道楽をどうこう言う気はないが、態々街中のビルの明かりを消し、尚且つ周辺まで人払いおよび進入禁止とまでとなると、呆れも通り越す」
「金ならちゃんと払ってるぜ? それに栄華を極める事もまた、オレの“強欲”を強める手段。オレもこんな目先のママゴトで喜ぶ気なんざ、さらさらねえぜ。それよりホレ」
「私はまだ18なのだがな……」
差し出した盃を受け取り、白夜はグイッと飲み干す。
つまみとして差し出された肉を齧り……
「それで、用件は? こちらも暇ではない以上、手短に頼みたいのだが」
「かっかっか。大罪で最も腹黒い割に、大罪の名に似つかわしくない程くそまじめだねえ」
「どうでもいいことだ。それより、早く用件を言え」
「ほれ」
懐から一枚の写真を取り出し、投げ渡す。
「……やはり素質はあったか」
「当然と言えば当然だな。何せ兄妹なんだ、意識的に近い物があってもおかしくない……“真理”についても、同様かもしれねえな」
「真理、か……存在自体が怪しい物が、よもや美徳の死に関係しているやもしれんとは」
「違いない」
ごくごくと杯どころか一升瓶を煽り、シバは一気に飲み干した。
「ぷはっ……さて、どうすんだ? 俺は騒ぎにかこつけて、新しい興業の為のナワバリ拡張と行きたいんだがな」
「好きにすればいい」
――場所が変わって、ユウの実家兼公房
「……ふぅっ」
今日も今日とてスーツ姿の光一が、椅子に座りネクタイを緩め、疲れてますと言う表情で息を吐いた。
「あっ、いらっしゃい」
「順調か?」
「相変わらず。刀抜かせてはないけど、徐々に動きに対応はできるようにはなってるわ」
「--さすがは宇宙さんの妹か」
宇佐美の成長速度には、光一も目を丸くしていた。
普通、憤怒の動きについていくなど、美徳のブレイカーを使っているとはいえ、まだ契約者としては素人では到底無理な話だというのに。
「さ、頑張らないと」
「随分な熱の入れようだな」
「それはそうよ。契約者としてもそうだし、ユウ相手だからね」
「へえっ」
そう言ってジュースを飲む宇佐美を見て、ピンっと光一はひらめく
「前代未聞の恋物語(契約者バージョン)の始まりってとこか?」
「んっ!? けほけほっ……なっ、何言いだすのよ!?」
「と言うのは置いといて、頼まれた事だけど何とか納得して貰えた」
「ホント!? ……って、なんかはぐらかされた?」
宇佐美と歩美、さやかと京は人気アイドルユニット“ラッキークローバー”
その1人が、美徳シリーズの1つ“勇気のブレイカー”と契約し、勇気の契約者となった事。
それを事務所に伝えるべく、光一は朝方から出かけていた。
「しかし……いいのか宇佐美?」
「だって好きでなった訳だし、どっちも諦めたくないから」
「それは良い……でも計画の立案から作成まで、全部俺任せはどうかと思う」
「うっ……ごめん。だって、こういうの全部マネージャー任せだったから」
「ははっ、意外と人任せか?」
そこへ風呂からあがったユウが、茶々を入れた。
宇佐美はカチンときて…
「そんな言い方ないでしょ? 人の事言えないくせに」
「俺の場合は時間がないだけだ。できないわけじゃない」
「何よ、大罪のくせに器小さい」
口ゲンカを始める二人をほっとき、光一はくいっと飲み物を飲む。
「……宇宙さんが生きてたら、どう思ったかな?」
光一はふと、かつて大罪と美徳という対立する間柄にありながら、時には協力した1人の男……宇佐美の兄を思い出す。
「光一兄ちゃん、もうすぐ出来るけど食べてく?」
「んー……おい、いつまでも愛を確かめ合ってないで食卓つけ」
「「確かめ合ってない(ねえ)!!」」
「わあっ……(ドキドキッ)」
「宇佐美ちゃん大胆だね(わくわく)」
「おぉ~っ。みやちゃんドキドキですよ~」
「……宇佐美姉ちゃんって、呼ぶ練習したほうがいいかな?(ドキドキワクワク)」
「ほうっ、ユウもやるのう(にやにや)」
「ちょっ、待てよ! そうときまってなんかねえぞ!?」
「ちょっと光一、なにか――って」
「「居ない!?」」
「あばよ~とっつぁ~ん、かっつぁ~んってね……晩飯どうしよ?」
そろそろ人物設定出そうかな?
と思う今日この頃




