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大罪と美徳  作者: 秋雨
閑話集
124/130

宇佐美とナツメの奮闘記  “思念獣” その3

「成程ね。で、こうなってる訳か」


話を聞いたユウの視線の先では――


「にゃっ!」

「ぴぃっ!」

「あら、可愛い」


ゆーみんとなっつを抱きあげ、にこにこと温和な笑顔を向ける怜奈と――


「あ~ん、可愛い♪」

「ぎっ!!? もごもごっ!!」


くおっちを抱き締め、胸で窒息させてる月の姿があった。


「それで、ユウ達の思念獣はこうしたらどうなるかに、興味が向いて」

「と言う訳だからユウの兄さん、思念獣プリーズ!」

「あのな、遊びでやるもんじゃ――」


「良いですよ」

「やってみましょうか」


「っておい!!」


断ろうとしたユウの言葉を遮り、怜奈と月が肯定の意を示す。


「別にいいじゃない。減る物じゃあるまいし」

「それに、こういう使い方も良いと思います」

「――わかったよ。じゃあまずクリアからか」


3人は意識を集中。

思念の結晶“クリア”を精製し――


「うわっ、早っ!」

「流石に頂点は違うわね」

「当たり前だ。さて……」


3人は意識を集中し――


ボゴンッ!!


「がるっ!」


まず、クリアを起点にマグマが噴き上がり、その中から飛び出す1つの影。

背は翼を思わせる様に炎が噴きだし、黒煙を上げぽたぽたと滴り落ちるマグマに包まれた手という、ユウの思念獣


ジャポンっ! ピキキ……!


「ふぅっ……」


続いて、同様にクリアを起点に水があふれ出し、それが一瞬で凍りつく。

その氷にひびが入り、割れた瞬間に出てきた、白い煙をあげる冷気を手に纏い、下半身が水を纏う魚という人魚の様な怜奈の思念獣


ガササッ!!


「ら~♪」


更に、同様にクリアを起点に木々や花が生え――

それが人の形を模り、まるで花の様な衣服を纏った木の精霊を思わせる月の思念獣。


炎、氷、樹の属性それぞれ3体が一斉に姿を現した。


「――なんか、すごいね」

「うん――あたし達とは大違い」

「そりゃ当然だろ。大罪に美徳なんだから」


自分達とは格が違う。

そう実感できる光景が目の前にあり――宇佐美とナツメは、唖然としていた


「ら~! ら~ら~♪」

「ぎっ! ぎぃっぎぃっ!!」


――が、月の思念獣が、くおっちを見た途端喜びながら駆けだし、抱きつき始めたのを見て。


「思念獣に影響与えるまでぞっこんなの!?」

「愛されてるねえ、久遠の兄さん――あれ?」


その光景に、唖然としながらも納得する2人は、光一の方を見て――


「むぐーっ!!」

「思念獣に負けてられない! というわけで、大好きよダーリン」


身体を蔦で絡め取られ、身動きが出来ない状態で月の胸に顔を埋める形で抱きしめられる光一の姿があった。


「――やれやれ。妬けるねえ」

「いや、ユウの兄さんも」

「え?」


「がるっ」

「ふぅ~っ」

「にゃ~」


光一の状況を見て肩をすくめるユウが、ナツメに促されて見たもの。

ユウの思念獣が、怜奈の思念獣とゆーみんと意気投合したらしく、笑いあってる光景。


「おいおい」

「名前だけど、ユウの兄さんのはマグマだから“ヴォル”。怜奈の姉さんは水だから“アクア”、月の姉さんのは“リリィ”ってどうかな?」

「ぷはっ! おーい、くおっちとかゆーみんから、随分と格が違わないか!?」

「良―じゃん別に」



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