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大罪と美徳  作者: 秋雨
閑話集
122/130

宇佐美とナツメの奮闘記  “思念獣”

こっちの更新、完全に滞ってしまいすみません。

本編の改訂、思った以上に難航してしまい……


ちょっと間は開くかもしれませんが、ちゃんとこちらも更新予定はありますので。

「次の段階?」

「そう、次の段階」


上級系譜になりたてのナツメ、そしてまだまだ美徳としては修行中の宇佐美。

――現在、上級系譜に至る為の必須技能“思念”の扱いについての講習中である。


「思念獣を創って貰う」

「思念獣って、誠実の契約者が使ってたあれかな……?」

「――知ってるなら話は早いな。でも誠実は契約者1の思念獣の使い手だから、あんまり参考にはならないだろうけど」

「どういう事?」

「まあ論より証拠。とりあえず、ちと待ってな?」


光一は数枚の真っ白なペラ紙とナイフを取り出し、ナイフで指先を軽く切って血をにじませる。

その切った指先で紙に文様を描き、それをさらに取り出した自動拳銃に貼りつけ――その紙に手を添える。


『キキキキッ!』


その銃は姿を変え、銃と蝙蝠へと合わせたかのような、奇妙な何かへと変貌した。


「――これは?」

「思念獣。ただし自立した意思は持たず、俺の意思を介さないと動く事さえできない非人格型のな。余談だけど、フェアリー、ファミリア、スレイヴ、チャイルドと、色々な呼び方があって、俺はこいつを“鮮血ブラッド奴隷スレイヴって呼んでるけど」

「……スレイヴって、奴隷って意味でしょ?」

「俺がフェアリーだのチャイルドだのなんてガラかよ」

「――まあ良いけど」

「で、人格型だけど――それはこっちを使う」


そう言って、光一は1つの結晶体を取り出した。


「それって、クリア?」

「ああ。思念獣の人格は主に自己投影、つまり自分の分身その物を創る訳だから」

「成程ね。クリアは言うなれば、意思の力そのものだから自己投影の媒体として、これ以上の物はないって事だね? 久遠の兄さん?」

「そう。ただ、契約条件が強く影響されるから、基本的に俺達負の契約者は人格型は使わないんだよ。主に生活補佐の為に使うんだけど……」

「クリア1つで都市1つのエネルギーが賄える以上、そんな使う機会がないって事?」

「そう。ただ、誠実はクリアの精製に関してもトップクラスだから、媒体として使う分には問題は一切ないけどね――でも、覚えといて損はないだろうし」

「わかった。えーっと……」

「あっ、こっちは血はいらないよ」


――流石に宇佐美も女の子であり、あまり傷をつける事は好ましくはない。

内心ホッとしつつ、自身のクリアを取り出す。


「――幸い、この前の練習で造ったのがあって良かったわ」

「ウチも」

「――さて、じゃあ俺のやるのをよく見て」


光一がクリアに手を添え、そっと目を瞑る。

――手に薄い念動力の膜が構築されて行き、光一の手を、そしてクリアを包み込む。


その膜がクリアを包み込み、その次の瞬間膜がゆっくりと光り出し、共鳴するかのようにクリアが光り――。


『きぃっ!』


その次の瞬間、掌の上には手のひらサイズのデフォルメ光一が立っていた。


「わあっ、可愛い」

「抱っこしたい抱っこしたい!」

「おーい、お前らの番だぞ?」


――それを見てはしゃぐ二人をなだめ、開始を促す光一。


「えーっと、こうかな?」


宇佐美は光一がやったとおり、まず自身の手に念力の膜を構築。

そしてそれで、自身の手とクリアを包み込み――。


「そうそう、そのままクリアに自分の姿を焼きつけるイメージで」

「焼きつけるイメージ……」


眼をつむり、宇佐美とナツメは想像する。

――クリアに自身の姿を焼きつけ、具現化するイメージを。


「…………」

「…………」


ひたすら続ける事、10分。


「……なんで光らないの?」

「イメージが弱いからだ」


――30分後


「……何これ? ホントにできるの?」

「集中しろ集中。雑念入ると、イメージ崩れるぞ?」


――一時間経過


同調が上手くいったのか、クリアが光を放つ。


「やった?」


プツンっ!


「――あれ?」

「出来てないのにイメージが途切れるとそうなる」

「……難しいね」

「ちなみにイメージが弱いと、イメージ+スライムを足して2で割ったみたいになるから」

「「それは嫌!!」」


先ほど以上に集中し、手に念力の膜を造り上げ、クリアと自身の手を包み込む。

――そして、今度は光出してもただひたすらに集中。


『にゃっ!』

『ぴぃっ!』


「――やっとできたあ」

「――思ったより大変だったよぉっ」


『にゃっ?』

『ぴぃっ?』


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