宇佐美とナツメの奮闘記 “思念獣”
こっちの更新、完全に滞ってしまいすみません。
本編の改訂、思った以上に難航してしまい……
ちょっと間は開くかもしれませんが、ちゃんとこちらも更新予定はありますので。
「次の段階?」
「そう、次の段階」
上級系譜になりたてのナツメ、そしてまだまだ美徳としては修行中の宇佐美。
――現在、上級系譜に至る為の必須技能“思念”の扱いについての講習中である。
「思念獣を創って貰う」
「思念獣って、誠実の契約者が使ってたあれかな……?」
「――知ってるなら話は早いな。でも誠実は契約者1の思念獣の使い手だから、あんまり参考にはならないだろうけど」
「どういう事?」
「まあ論より証拠。とりあえず、ちと待ってな?」
光一は数枚の真っ白なペラ紙とナイフを取り出し、ナイフで指先を軽く切って血をにじませる。
その切った指先で紙に文様を描き、それをさらに取り出した自動拳銃に貼りつけ――その紙に手を添える。
『キキキキッ!』
その銃は姿を変え、銃と蝙蝠へと合わせたかのような、奇妙な何かへと変貌した。
「――これは?」
「思念獣。ただし自立した意思は持たず、俺の意思を介さないと動く事さえできない非人格型のな。余談だけど、フェアリー、ファミリア、スレイヴ、チャイルドと、色々な呼び方があって、俺はこいつを“鮮血の奴隷って呼んでるけど」
「……スレイヴって、奴隷って意味でしょ?」
「俺がフェアリーだのチャイルドだのなんてガラかよ」
「――まあ良いけど」
「で、人格型だけど――それはこっちを使う」
そう言って、光一は1つの結晶体を取り出した。
「それって、クリア?」
「ああ。思念獣の人格は主に自己投影、つまり自分の分身その物を創る訳だから」
「成程ね。クリアは言うなれば、意思の力そのものだから自己投影の媒体として、これ以上の物はないって事だね? 久遠の兄さん?」
「そう。ただ、契約条件が強く影響されるから、基本的に俺達負の契約者は人格型は使わないんだよ。主に生活補佐の為に使うんだけど……」
「クリア1つで都市1つのエネルギーが賄える以上、そんな使う機会がないって事?」
「そう。ただ、誠実はクリアの精製に関してもトップクラスだから、媒体として使う分には問題は一切ないけどね――でも、覚えといて損はないだろうし」
「わかった。えーっと……」
「あっ、こっちは血はいらないよ」
――流石に宇佐美も女の子であり、あまり傷をつける事は好ましくはない。
内心ホッとしつつ、自身のクリアを取り出す。
「――幸い、この前の練習で造ったのがあって良かったわ」
「ウチも」
「――さて、じゃあ俺のやるのをよく見て」
光一がクリアに手を添え、そっと目を瞑る。
――手に薄い念動力の膜が構築されて行き、光一の手を、そしてクリアを包み込む。
その膜がクリアを包み込み、その次の瞬間膜がゆっくりと光り出し、共鳴するかのようにクリアが光り――。
『きぃっ!』
その次の瞬間、掌の上には手のひらサイズのデフォルメ光一が立っていた。
「わあっ、可愛い」
「抱っこしたい抱っこしたい!」
「おーい、お前らの番だぞ?」
――それを見てはしゃぐ二人をなだめ、開始を促す光一。
「えーっと、こうかな?」
宇佐美は光一がやったとおり、まず自身の手に念力の膜を構築。
そしてそれで、自身の手とクリアを包み込み――。
「そうそう、そのままクリアに自分の姿を焼きつけるイメージで」
「焼きつけるイメージ……」
眼をつむり、宇佐美とナツメは想像する。
――クリアに自身の姿を焼きつけ、具現化するイメージを。
「…………」
「…………」
ひたすら続ける事、10分。
「……なんで光らないの?」
「イメージが弱いからだ」
――30分後
「……何これ? ホントにできるの?」
「集中しろ集中。雑念入ると、イメージ崩れるぞ?」
――一時間経過
同調が上手くいったのか、クリアが光を放つ。
「やった?」
プツンっ!
「――あれ?」
「出来てないのにイメージが途切れるとそうなる」
「……難しいね」
「ちなみにイメージが弱いと、イメージ+スライムを足して2で割ったみたいになるから」
「「それは嫌!!」」
先ほど以上に集中し、手に念力の膜を造り上げ、クリアと自身の手を包み込む。
――そして、今度は光出してもただひたすらに集中。
『にゃっ!』
『ぴぃっ!』
「――やっとできたあ」
「――思ったより大変だったよぉっ」
『にゃっ?』
『ぴぃっ?』




