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大罪と美徳  作者: 秋雨
閑話集
120/130

間話 嫉妬の1日

「…………」


嫉妬の契約者、陽炎詠

物言わぬ彼女の住居は、洋館である。


アンティーク風に整えられた室内に備え付けられた、天蓋のついたベッドで目を覚ます


「おはようございます、マザー。ご機嫌いかがですか?」


身の回りの世話を担当する上級系譜、ミス・ファントムが恭しく一礼。

――普段のイブニングドレスではなく、仮面はそのままのメイド服で。


「…………」

「では、御召物を」


ネグリジェを脱がされ、ゴスロリ系のドレスへと着替え――

それから髪の手入れをやらせつつ、詠自身は自身の顔に化粧を施す


――ココだけの話、彼女は化粧が趣味で、その腕はプロにも引けを取らない程である。


「出来ましたわ。今日もお美しい」

「…………」


コンコンッ!


「どうぞ」

「失礼いたします――マザー。朝食の準備が整いましたので」


顔から手に至るまで、全身をびっしりと包帯で覆い尽くした執事服の男。

上級系譜、ミスタ・バンデージが朝食の知らせを。


場所は変わり、詠達は朝食のならぶテーブルを囲い、パンにスープ、ゆで卵等を食す。


「本日の御予定ですが――」


仕事の補佐は、ミスタ・バンデージが担当。


嫉妬のナワバリは、通称芸術都市。

詠が死霊を操る能力を持つ事から、オカルト方面の研究などが行われ、その過程で主に音楽や絵画などの芸術方面が盛んに。


美術・音楽系の名門校も多数存在し、契約者社会の文化方面で多大な貢献を成していた。


「以上になります」


と言うのは、世界崩壊前の話。

――現状は、主に荒れた人の心をいやす為の癒し系音楽、そして新しい方面の建築等に力を注いでおり、人心の安寧に貢献していた。


現状、最も多く建築物のならぶナワバリは、嫉妬である。


「…………」


朝食を食べ終えた詠は、ミス・ファントムを連れ一路とある部屋へ。

――その中に備え付けてある、パイプオルガンの前に座り。


~~♪


日課の演奏を始める。



「あなた、詠様の演奏が始まりましたよ」

「おおっ、もう仕事の時間か」


「いつ聞いてもいいなあ、詠様の演奏は」

「本当ね。ココを選んで良かった」


「ん~……気持ちいい目覚めだ」



現在7時

詠の日課の演奏は、ナワバリ中のモーニングコールにもなっていて、全ての街に備え付けられたスピーカーから、流れるようになっていた。


『ではみな様、マザーの加護への感謝、お忘れなく日々を過ごしてくださいませ』


演奏終了後、ミス・ファントムによる挨拶が終わり――嫉妬のナワバリは稼働する。

嫉妬のナワバリにおける陽炎詠に対する支持率は、かなりの水準をキープしていた。


「ではマザー、公務のお時間です」


ここからは、ミスタ・バンデージと交代

ナワバリにおける執務の為に、一路執務室へ。



――数時間後


「…………」

「そろそろ休憩としましょうか――庭でお茶の御用意をいたしますので、少々お待ちを」

「…………」


基本的に、嫉妬の1日は平平凡凡と終わる物である。

――詠の機嫌が良ければ。





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