第102話 エピローグ
――リディアとの共同生活開始から2週間後。
「ふぅっ……ふぅっ……」
「はっ……はっ……」
アイドルとしてのレッスンの合間を縫っての訓練。
ユウに言われ、訓練の時間を全部、リディアとの時間に費やしていた。
「――はーっ……やっぱり強いなあ、宇佐美さん」
リディアの呼び方が“ちゃん”から“さん”となり、同居人に対する人見知りも、すっかり緩和されていて――
リディアは今や、家族の一員と呼んで差し支えなかった。
「おふたりともー。ごはんできましたよー」
「はーい」
「じゃあいこ、ゆさみさんにみやちゃん」
――余談だが、見た目の年が一番近い京が一番早く馴染んでいた。
「いただきまーす」
「どうかな、リディアちゃん?」
「とても美味しい」
歩美の作った食事を食べて。
「ん~……」
曲を作ってるさやかの手伝いをして。
「…………?」
「…………」
葵とにらめっこをして……
「くぅーん」
「……きゅーん」
「わんっ! わんっ!」
「わんっ!」
「おいでおいでー」
秀頼が秀吉に寄り添われ、毛繕いして貰いながら寝てる横で、信長と家康と一緒に遊んだり。
「やっぱり、能力はフィーリングだと思うんだよ」
「フィーリング?」
「そう。こんな能力を持ちたいっていう、そんなフィーリング」
ナツメに色々とアドバイスをもらったり――そんな日々を過ごしていた。
「はーい、みやちゃんですよ~♪」
「「「みーやちゃーん!!」」」
「さやかお姉さんは元気でーす。みんな元気~?」
「「「ハッスルハッスル!!」」」
「歩美です。よろしくお願いします」
「「「よろしくお願いしまーす!!」」」
「皆お待たせ―!」
「「「宇佐美ちゃ―ん!!」」」
宇佐美には、ナワバリもなければ組織も持っていない。
――しかし、彼女には歌で元気づけるという役割があり、時を置いてのライブを大罪・美徳・政府共同出資で開いていた。
――実際、これらは成功を喫しており、元々世界崩壊に伴っての娯楽がない事を抜いても、勇気の契約者として前に立とうとする意志。
それらに共感し、生き抜くと言う意志を奮い立たせる者も出ていた。
「――宇佐美ちゃん」
そんな宇佐美の姿に、リディアは――瞳を輝かせていた
「――やっぱり、アイドルって女の子の憧れだね」
「お前が女の子ってガラかよ」
「失礼な」
ライブの際の警備は、主に憤怒が担当。
補佐として色欲と慈愛が入り、襲撃の暇も与えない布陣を敷いていた。
リディアは光一とナツメの付き添いの元、ステージわきでその光景を見ている。
「――光一さんは」
「ん?」
「……光一さんは、どうしてユウさんにつき従ってるんですか?」
「単純な理由だよ。俺にとってのボスは、ユウただ1人だけだから」
「――それだけ?」
「いつかわかるさ――リディアにもきっとね」
「……」
――ライブ終了後
「お疲れ様です」
「お疲れー」
怜奈と月の労いがかけられ
「今回もよかったぞ」
「うんうん、流石はラッキークローバーだね」
光一とナツメが、拍手をしながらほめたたえ。
「ご苦労さん」
にっと笑みを浮かべ、ユウも称賛する。
「…………」
「ん? どうかしたの、リディア?」
「――リディアも」
「え?」
「リディアも、なれるかな? ――宇佐美さんみたいに」
宇佐美がリディアに歩み寄り、膝をついて目線を合わせ――。
「なれるよ。あたしもまだ、道の途中なんだから」
「――リディア、宇佐美さんと一緒に行きたい」
「ありがと」
「――光一の兄さん」
「ん?」
「――もしかして」
「なんとなく、こうなるとは思ってただけだよ――てか、お前もリディアを見習って」
「ウチ世界崩壊からは、ちゃんと仕事してるよ」
「はいはい。期待しな――とくよ」
「うー……もうっ!!」
「――一条宇佐美……勇者一条宇宙の遺志を受け継いだ、新たな勇者」
宇佐美達のライブの中継。
それを見ながら、東城太助は椅子に座り――1人ごちていた、。
――侮蔑の視線を向けながら
「――だが一条宇宙同様、あまりにも無知で愚かだ。人が如何に意地汚く自分勝手で、救うに値しない存在かを全く理解していない……命が大事、そんな寝言ほざきながらそれを踏み躙り、誰もが自分勝手に走り、それがどういう意味を持つかを理解できない存在――それが人間だ。そんなゴミどもに必要なのは、北郷正輝の掲げた正義……四凶を飢え死にさせることすらも出来ない事が、その証拠だ」
まるで人が浮かべる物とは思えない表情のまま、映像を消し――
「不快だな――あの女、魔王の名において必ずや抹殺してやる……命は輝くための物ではない、糧となるべき物だと教え込み、絶望させ、踏み躙ってやる!!」




