第101話
「――成程ね。言いたい事はわかった……けど、あの子が系譜に至れる素質があるかどうかは、ハッキリ言って賭けだぞ?」
「それはわかってるさ。だが光一、宇佐美を契約者の立場から支えられる存在が、必要にはなってるんだ。あの子に系譜に至る素質があろうとなかろうと……」
「それに関しては同意できるけど……まあとにかく、フォローできるところはフォローするよ。いずれ俺やナツメの対になるかもしれないならな」
「頼む――しかし」
「ん?」
「いや、因果な物だって思ってな――世を騒がせる魔王様は、かつての正義の傘下契約者。そして……」
「美徳の新星は、一条宇宙の妹――確かに」
「という訳で、この子が新しい家族です」
ラッキークローバーの共同住宅。
歩美、さやか、京の3人と、合成獣少女葵は、宇佐美が連れてきた少女の紹介を受けて、目を丸くしていた。
「…………」
「ほら、ごあいさつ」
「ふぇっ!? ああっ、ああああああああああああああああああああああああっ……」
クラっ……
「落ちついて、深呼吸」
「ひっひっふぅっ……」
「それ違うよ!?」
「「「…………」」」
「……? ひっひっふうっ……? 良くわかんない」
――数十分後。
「――リディア・バートンです。初めまして」
褐色肌に、肩までで切りそろえられた髪。
12かそこらの少女は、控え目にそう告げてぺこりと頭を下げた。
「――結構あがり症なんだね」
「――だって、久しぶりのご飯食べたばっかりで頭ぼーっとしてたから、良くわからなかったけど、ラッキークローバーの宇佐美ちゃんに保護してもらうなんて」
「保護って言っても、憤怒の保護下同然だけどね」
「あー、そのブローチですがー、もしかしてブレイカーですかー?」
身長136cmの小柄な19歳、高嶺京がふと気付いた事を質問。
「あっ、みやちゃん――でいいんですよね?」
「けいごはいいですよー」
「はい――一応、量産型のブレイカーです」
「――なるほどー、じゃあゆさみちゃんのけいふこうほですねー?」
「けっ、系譜!? リディアが、ですか!?」
「――失礼」
ノックをして入ってきたのは、貧弱な体躯の男。
リディアは宇佐美の後ろに、さっと隠れる。
「どうしたの、光一?」
「いや、近く通りかかったもんで、折角だから声かけに来たんだよ」
光一は宇佐美の後ろ――リディアに目を向ける。
「――いずれ俺の対となる系譜候補にね」
「ひうっ!」
「いや、そんな怖がらなくても――」
軽い悲鳴を上げて、宇佐美にしがみつく用に震える少女に、苦笑しつつショックを受けていた。
「――とりあえず、自己紹介していいかな?」
「…………(コクっ)」
「俺は憤怒の上級系譜、残虐の契約者、久遠光一。よろしく」
「――リディア・バートン」
それだけ言うと、リディアは俯きダンマリを決め込んでしまう。
「――随分話と違うな?」
「あたし達と会った時は、数日ぶりの食事でお腹いっぱいになって、おおらかになってたみたいだから」
「……成程。それで、この子を系譜候補として育てるって話は?」
「今はまだ保留。あったばかりなんだから、気安く返事出来る訳ないでしょ?」
「――それもそうだな」
ポリポリと頭をかく。
「――光一、また眼の下クマが出来てるよ? また寝てないでしょ?」
「仕方ないだろ――この前のトウテツ襲撃で、あちこちに不安与えちまったから、そのケアに西へ東へ大忙しなんだ。それに今からクエイク量産ラインに使う、クリア精製もしなきゃいけないし」
「そう……身体壊さない様にね?」
「はいはい」
そう言って踵を返し、光一は出て行った。
「――さて」
宇佐美はリディアに目を向ける。
「――まずは、お互いを知ることから始めようかな?」
「――お互い?」
「そう、お互い。まだ出会ったばかりだからね、色々とお話ししよ」
「――うん」
カチャッ!
「お待たせ。今日の分の買い出し持ってきたよ」
今度は、買い物袋を片手に、ナツメが入ってきた。
「――」
「あっ、光一の兄さんから聞いてるよ。ウチは桐生ナツメ、ラッキークローバーの護衛やってるんだ、よろしくね」
「――リディア・バートン」
――次の日。
「――へえっ、瞬間移動能力がメインか。それは珍しい」
「何か、効率的な運用法はあるかな?」
在る程度理解を深めた宇佐美は、光一に質問を持ちかけていた。
「今だと、空間を歪めた盾に、位しかないよ? レベルが低いうちは、ヘタに物質同化系の能力使うと、元に戻らなくなる可能性あるし」
「――じゃあ、サブ能力着けるとか?」
「それもやめとけ。レベルが低いうちにサブを着けると、逆に効率が落ちるから。どうせなら、格闘教えたらどうかな?」
「――わかった。ありがと」
そう言って、宇佐美はさっさとリディアの所へ掛けて行った。
「わりと世話役が板についてるな」
「それは、私たちのリーダーですから」
「そうそう。お姉さんたちも、宇佐美ちゃんの決定ならわりと納得できるしね」
「ですですー」
そんな様子に、ラッキークローバーの面々+光一は、ほほえましいと言う様に笑みを浮かべる。
「――?」
「きゅーん」
「わんっ!」
「くぅーん」
信長、秀吉、家康に囲まれ絵本を読む葵は、そんな様子に首を傾げる。
「――きゅーん」
「おっ、久しぶりだな秀頼。おいで」
「わんっ!」




