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大罪と美徳  作者: 秋雨
第6章 絶望と憎悪の宴
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第100話

トウテツ襲撃による、憤怒の機能低下。

――テロの襲撃や犯罪契約者の横行こそないにしろ、一般人からは安心と笑顔が消え、誰もが不安におびえていた。


各地の防衛戦力の生産をおこなっているだけに、その影響は大きく――

その事が、各地の不安を増長させ続けていた。


「はっ……はっ……」

「――今日はここまでにするか」

「――まだまだぁっ!!」


14人の大罪、美徳の中で、自分だけが美徳として機能出来ていない。

元々その事が重くのしかかっていたところへの、トウテツの襲撃。


――知らず知らずのうちに、宇佐美は焦燥感を募らせる事となっていた。


「やあっ!」


宇佐美は基本、兄と同じく格闘と風を組み合わせ、戦うスタイル。

細かく言えば、宇佐美は腕を防御に使い、風を纏わせた蹴りや鎌鼬を放つ事をメインとしている。


――ただ。


「遅い」


スタイルこそ確立しているとはいえ、それでも目の前の存在は――

自身の……かつては兄の対である男には、一切通用しない。


契約者1の剣を抜かせた――その成長を現す物こそある。

――いや、表す物があるだけ。


――結果は、地面に倒れ込んだ眼前に、剣を突きつけられる……いつもと同じ光景。


「大丈夫か?」


その後、剣を納め心配そうに手を差し伸べる――これも、いつもと同じ光景。



――時々、こう思う事がある。


『勇気を受け継ぐ者は、本当で自分でよかったのだろうか?』



「――不安に思う事?」


先ほどの組み手を終えた後。

ユウの家がある山の、少し離れた開けた場所での昼食。


お茶を呑んだ宇佐美は、おにぎりにかぶりつくユウに問いかけた。


「――うん」

「なんだよ? まさか、この前のトウテツ襲撃で怖気づいたとか?」

「――そんなんじゃ……そうかも」

「――不安は抱えてるけど、それでも前に進まなきゃならない……俺は1組織の大将なんだ。いい加減な事はできない」


――相違点。


大罪も美徳も、それぞれ1組織を築いている。

――宇佐美の兄が率いた組織は、均衡が崩れた際に瓦解し、フォールダウンとなったり他の美徳の傘下に落ちついている。


組織を持たないからこそ、出来ることだってある。

――そう言われた時もあるし、実際にその通りではある事を宇佐美は理解している。


しかし、理解はできても納得自体が出来ていない。


「――世界大戦を止めた人たちと違うのは、当然だってわかってるけどね」

「大戦止めたっていっても、俺達元々選択の余地があった訳じゃ――」


ユウが突如言葉を止め、手のおにぎりをほおばりもしゃもしゃと咀嚼しながら、刃を潰した訓練用の刀を手に取る。

宇佐美もコップを置いて、オープンフィンガーグローブをつけた。


「――誰かいる、でいいのよね?」

「勿論」

「じゃああたしに行かせて。ユウは援護で」

「――了解」


肩をすくめて、宇佐美の意見に同意。

いつでも飛びだせるように気構えをし、宇佐美は気配のする個所へ向かう。


「――誰?」


そっと、近付いた場所――そこで見た物は


「…………」


1人の女の子が、ぐったりと横たわっている光景だった。



――その少し後


「かふかふっ、もぐもぐっ、ごくごくっ!」


もう何日も食べていない。

そう思わせる様に衰弱していた少女は、ユウ達が昼食に用意していたおにぎりにお茶を、かきこむ様にかぶりつき、飲みほしていた。


「――ぷはっ……ありがとうお兄さん。もうダメかと思ったよぉっ」

「で、なんであんな所で倒れてたんだ?」

「――もう何日か前かは忘れちゃったけど、正負友好反対派のテロでパパにママが殺されて、命かながらに逃げて……」


この時代、孤児はそれこそ大勢存在する。

――元々契約者には孤児が多く、各契約者のナワバリには孤児院は必要不可欠のものとなっている位。


「……親戚は?」


少女は振る振ると首を横に振った。


「じゃあ、孤児院紹介しようか。ちょっと連絡……ん?」


ふと、少女のブローチに目を向ける。


「これ、ブレイカー?」

「うん……こんな時代だから、何かあった時のためにってパパが」

「なら――」


ふと、ユウは宇佐美に目を向ける


「?」

「――宇佐美。どうせだ、この子を育ててみる気は?」

「え? ……ええーっ!?」


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