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大罪と美徳  作者: 秋雨
第6章 絶望と憎悪の宴
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第98話

「アスカ・ホークアイ……友情の契約者で、大罪美徳1のムードメーカーであり、最強の発電能力者」

「発電って、光一と同じ?」

「そう。更に言えば、契約者で最も広範囲攻撃を得意とする奴だ」

「――上級系譜の発電系能力者を知ってるだけに、なんかあれ以上って想像しにくいわね」

「指弾で光一以上の“超電磁砲レールガンを連射できるって言ったら?」


あーっと、宇佐美は納得したように頷いた。


「ユウは契約者1の剣の使い手。怜奈さんは契約者1美しい、月は契約者1の医者――か」

「そりゃ頂点だから、何かしらで契約者1の物は持ってるさ。宇宙だって、空中戦と格闘戦じゃ、契約者随一だったし」


上級系譜相手、光一には勝てる様になったとはいえ――剣を抜かせるようになったとはいえ、やはりユウに届かない。

そんな自分に、兄の様に――兄の、そして今は自身の対である男と、同じ立ち位置に立てるのだろうか?


――契約者となって、何度も自分に問いかけた事だった。


「――焦るな」


クシャっと頭をなでられ、何度もかけられた言葉。


「……やめてって言ってるでしょ」

「あっ……悪い。でも別に、セクハラとかそんなつもりじゃ」

「そう言う事じゃない!」

「――!」

「……ごめん」


――それが宇佐美にとって、何よりも嫌だった。


ユウにとっては、自分は兄に対する贖罪の対象。

――審判の日と呼ばれるあの日以来、それを突きつけられている様で


「なんか兄妹みたいなやりとりだね」


それに割り込むように、2人の間に1人の少女が顔を出した。


「――アスカ!」

「はろはろー♪ 友情の契約者、アスカ・ホークアイですよ-」


タンクトップにホットパンツ。

月とは違う、健康的な色気を漂わせる少女、アスカ・ホークアイ。


人懐っこい笑顔を浮かべ、一歩下がる。


「この前配備してもらった、量産型のロボットについての話」

「何か問題でもあったか?」

「ううん。ただ……もう少し数を増やす事って出来ないかな? 知ってると思うけど」

「友情のナワバリで起こったテロに、それを行ったと思われる奴が魔王勢力の手にかかった、だろ? ――生憎と無理だ。光一、ナツメ、宇佐美にも手伝って貰ってるけど、エネルギー不足であんまり回せないんだよ」


世界崩壊に伴い、この時代は食糧不足を始めとする、様々な問題が生じている。

その内の1つに、エネルギー不足がある。


「ココでも問題かあ……」

「――全体の問題として挙げられてるから、俺達頭悩ませてんだろ」

「ちぇーっ……」

「…………」


――自分とは違う、多くの命を背負ってる者達のやりとり。

それもその筈、大罪も美徳も宇佐美を除いて、ナワバリというそれぞれのコミュニティを形成している。


些細な違いが、大きな隔て。

このご時世でも自分にはファンがいるが、それとは違う物を彼等は持っている。


……本当に自分は勇気の契約者――美徳の一角なのだろうか?

宇佐美は、そうぽつりと思った。


「――普段は鍛冶屋なのにね」

「? 何か言った?」

「……何も」


疑問符を浮かべ、やれやれと肩をすくめるユウ。


「ん~~~」


それを見つめる、1人の少女。


「――何?」

「ううん。結構いい関係築いてる様で、安心した」

「――正直、俺も驚いてるよ。宇宙の仇だって言うのに」

「まだはぐらかすんだね?」

「――はぐらかすも何もない。宇宙は俺が殺した」


世界崩壊後も、ユウは宇宙の死の真相を明かす事を拒んでいた。

宇佐美がそれを否定しようとしても――結局は根付いてしまった概念故に、それに意味はない。


「――まあ良いけどね。まだ悔いてる、それがわかっただけでも」


そう言って、アスカは退く事に。



――所変わり


「活気あるね」

「漸く、だ」


量産型クエイクが、警備のために歩き回る。

それさえなければ、にぎわいと活気にあふれたバザー。


――これも、テロがなりを顰め、魔王勢力の矛先がある程度定まったが故の物だが。


ガシャーン!!


「! なんだ!?」



「テメエ、人間の分際で何寝言ほざいてやがる?」

「ねっ、寝言って――ただ、店先で食い散らかさないでって」

「人間の分際で契約者に指図だあ!? ふざけんなこのゴミが、契約者のやる事に人間の分際で文句ぬかすんじゃねえよ! 死んで償え!!」


「はい、そこまで」


人間なら、一撃で即死するだろう拳。

それをユウは間に入り、受け止めていた。


「なっ!」

「――公共の場で寝言ほざくな。全の場で1の我儘がまかり通る訳ないだろ」

「うるせえな! まぐれで受け止め――」


『アクシデント発生。対象と思われる男を捕縛します』

「え?」

『救援要請受理、到着。これより対象者の捕縛に入ります』


あっと言う間に、男は量産型クエイクに取り囲まれ、あっさりと囚われ連れだされて行った。


「――人間まだ捨てた物じゃない。そう思える場で、ああいうのが起こると流石につらいな」

「…………アスカさん」


ヴィーっ! ヴィーっ!


「どうした?」

『四凶“トウテツ”の接近を確認しました!』

「何!?」


ドドドドドドドドドドドドドッ!


『はっ、早い! もう……うわっ!』

「おい、どうした!?」

『警備、突破されました!』

「被害は!?」

『いえ、こちらには目もくれず、一直線に飛び越えて行きました! 方向からして、第3バザーの方角かと』

「第3って……ココじゃねえか!? こうしちゃいられねえ!」 



ドドドドドドドドドドドドドドドッ!!


羊の身体に人の顔。

その虎の様な牙がずらりと並ぶ口は、ボタボタト垂れる涎にまみれていた。


『かろろろろろろっ!』


唸り声を上げ、涎を垂らし、ただひたすらに駆け抜け――


「うっ、うわあああああああっ!!」

「きゃーーっ!」

「たっ、助けて!!」


ユウ達がいる、第3バザーの入り口前へと姿を現した。


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