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大罪と美徳  作者: 秋雨
第6章 絶望と憎悪の宴
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第97話

一条宇宙。


かつて、第三次世界大戦を終結させた、14人の契約者の1人。

前勇気の契約者、朝霧裕樹の対であり、現勇気の契約者、一条宇佐美の兄であり――今は亡き存在。


その彼の墓は――


「――意外かい?」

「――ああ、意外だね」

「逆に問わせてもらおうか。同胞の墓を参って何か悪いのかな?」


世界崩壊の折に破壊されたため、会議場の地下――正負廟に安置する事になっていた。


「――同胞か。お前からそんな言葉が」

「僕は彼を見放した覚えはない。確かに正負友好の折、僕は君達に反対し何度も敵対したが、別に否定してはいないよ」


――ユウと宇佐美が、光一とナツメを伴い、クエイクの背に乗りナワバリへと変えるその少し前の事。

ユウと宇佐美は、宇宙への墓参りをしようと地下へと降りて――


そこで、花を添える知識の契約者、天草昴。


「――まあよそう。折角の墓参りだ、無粋な争いを見せたくはないだろう?」

「……ちっ」


ユウと宇佐美は、花を添え手を合わせる。


「……」


その様子を、昴はじっと見ていた。

――彼らが立ちあがる時まで


「……1つ、聞いていいですか?」

「なんだい?」

「――貴方は、兄さんと敵対してたんですか?」

「そうだよ。当時は、正負友好なんてやった所で、逆に無駄な犠牲を募らせるだけだった」

「でも、兄さんは――」

「わかっているさ。彼は彼で最善の道を選ぼうとした――だが、僕も僕の、北郷さんも北郷さんの、最善と思う道を選んだまでさ」


そう言った所で、くいっとメガネを直す。


「――正解も不正解もない。ただ、僕は北郷さんの正義が必要と判断し、彼を否定したまでさ……今の君ならわかるだろう?」

「――わかりたくもありませんでした。でも、ここまでつきつけられて理解できない訳にもいかない」

「うん。ああいう者達が跋扈し、北郷さんはそれを止める手段として殺害を選んだ――実際無駄じゃないさ。彼のやった事はね」

「――宇宙は意味がある事は認めてはいたが、それを毛嫌いしてたがな」

「“お手手つないで仲良く歩きましょう”――そう教わっておきながら、つなぐべき手で命を奪い、仲良く歩くための足で命を踏み躙る者たちなんだけどね」


テロに次ぐテロ、世界崩壊等で減少した人口は、人の手で減り続けている。


「でも、彼らも人です」

「――人である事に意味はないよ」

「……ならなぜ、昴さんはここにいるんですか?」

「それが僕の責務だからだ。だから、いい加減な事も投げだす事もしないし、感情も一切交えない――慈愛を陥れ、憤怒を襲ったのも、憤怒の力が強くなりすぎ、世のバランスを大きく崩した故さ。言い訳に過ぎないが……っと、そろそろ時間だ。失礼するよ」


長髪を翻し、昴はその場を後にする。


「――ああ、それと」

「え?」

「色々と見て、色々と考えて、色々と話してみる君の真摯な態度、評価に値する――頑張りたまえ。君なら、僕達と並ぶのはそう時間がかからない筈だ」



――そして、その日の夜。


『第三次世界大戦――あの戦争で、人は一体何が変わったかな? ……何も変わってないよね? ただ、契約者の正と負、そして人という区別が生まれただけだった』


『――人である事に意味はないよ』



「…………」


宇佐美は、思い返していた。

――自分と同じであり、先輩である人達の言葉。


そして、東城太助の――人に絶望した男の言葉が、脳内に半濁する。


カチャッ……!


「?」

「…………」

「あら、葵? どうしたの?」

「――一緒に寝る」

「そう……なら、おいで」

「ん」


初めて契約者としての仕事に取り組んだ際、光一とともに保護した少女、三村葵。

――彼女とは今も一緒に暮らしていて、皆とすっかり打ち解けていた。


特に宇佐美が懐かれていて、良く布団にもぐりこんでいたりする事が多い。


「――あったかい」

「よしよし」


抱きついてくる葵の頭をなで、宇佐美はゆっくりと目を閉じる。

――明日、明後日、果ては1週間、1ヶ月、1年と、いつ答えが出るかわからない自問自答を、今は忘れて。



――その次の日


「故障!?」

「ああっ、クエイクのブースターが壊れたらしくて、今修理中」


朝一番に、ユウと宇佐美が光一を伴い、出向いた場にて。

移動手段ともいえるクエイクの不調に、2人は唖然としていた。


「おいおい……じゃあ時間が」

「――傲慢に連絡入れて、予定を伸ばして貰ったから。それと、友情が配備した量産型クエイクの事で、用事があるっつって」

「友情――アスカか」


友情の契約者、アスカ・ホークアイ。

宇佐美もまだ、自己紹介の時に会話を交えただけだが、ボーイッシュで気さくな女性、という事しか知らない。


「あたしには、何の用かな?」

「単純に、会って話したいってだけじゃないか?」

「――ちょっと、楽しみかな?」


――生き場のない感情、終わりのない問答

それぞれの正義、持論――大罪、美徳との会話は、宇佐美にとっては貴重な物。


「――改めて、どんな人なのかな?」

「会ってみりゃわかるさ。契約者1のムードメーカーでもあるから」



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