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大罪と美徳  作者: 秋雨
第6章 絶望と憎悪の宴
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第95話

世はひたすらに静かだった。


変わらず営みがある物は、契約者の機関のみ。

テロがなりを顰めると同時に、ぴたりとベヒーモスや四凶の出現は治まっていた。


だんだん落ちついてくると、人は外に出る様になり、徐々に活気を取り戻し――。

少しずつではある物の、元の状態に戻りつつあった。


――ただ、人心が落ちつきを取り戻していくように、疑念もまた巻き起こる。


“契約者はやはり危険な存在だ”


そう言う意見が出るのは、さほどかからなかった。


疑念は不安を呼び、不安は恐怖を産み、恐怖はやがて狂気となり……。

再びテロを引き起こす事となる。


――しかしそれも“四凶”により喰い荒らされ、それが不安をあおり逆戻りの悪循環。



契約者社会の魔王、東城太助。

人への絶望を掲げる彼の存在は、大罪と美徳、政府に次ぐ新たな均衡の一因となっていた。




大罪・美徳と政府高官との、会議にて。


「ピュアプラントの稼働率向上。この調子なら、植物性食品の不足問題は解決できるわ」

「はい。慈愛で行っている水産養殖も順調です」

「こちらも、食用しょくよう合成獣キメラの生産は順調ですね。植物、水産、動物性でこれだけの収穫があれば、食糧問題解決の兆しは十分見えるでしょう」


慈愛、色欲、暴食からの報告を受け、首相はにっこりと少し翳りのある笑みを浮かべる。


「嬉しい報告だわ。ありがとう、月ちゃん、怜奈ちゃん、我夢君」

「ありがとう。首相にそう言ってもらえてうれしいわ」

「はい。ワタクシ達にとって、首相は恩人ですから」

「小生も同じです。大罪、美徳の違いはあれど、貴方が居たからこそ今があると言うのは、全員同じだと胸を張って断言できます」

「――ありがとう」


東城太助の反乱は、政府にも影響を及ぼしていた。


というのも、大罪側に攻撃を仕掛け大量虐殺をおこない、その後はテロに対する攻撃。

最初の襲撃以来、民間の被害が出ていないとはいえ、大罪全員相手に多面攻撃を仕掛けてきたという事実は大きい。


それに拍車をかける様に、対契約者強硬派が東城太助の反乱を理由に攻勢を仕掛け、議会は荒れに荒れ……る事はなかった。

その議会の次の日、その全員の宿泊地が四凶に襲われ、喰い殺されてしまったが故に。


――余談だが、その宿泊地で殺されたのは、対契約者強硬派の高官のみ。

他の宿泊客や従業員は、一般人契約者問わず一切手を出す事なく、去って行っていた事が様々な推測を呼び、この事から東城太助に対する賛同者も出始めていた。


「以上で、報告は終了だな――しかし、東城太助についてはどうする? 奴を野放しにする訳にもいかんだろう?」

「うん。これじゃ誰も外に出歩けないし、社会機能がストップしちゃうよ」

「……めんどくせえ。誰も何もできなくなる」


王牙、アスカ、公人の3人が、ポツリとそう呟き――。


「だが、奴を倒した所でまたテロとの堂々巡りだぜ? それに、人に絶望したって言うあいつのいい分、わからん訳でもねえじゃねえか」

「ジレンマだね……皮肉な事に、彼の行動が世界の問題解決を助長しているんだ。彼をどうするかで、この先の人類の命運も大きく変わる」

「…………(こくこくっ)」


それに対して、シバ、昴がそう返し、詠がうんうんと頷く。


被害こそ出て入る物の、世の問題解決に取り組む環境が整えられていること故。

結果として大罪、美徳間でも意見は分かれていた。


「――お前達はどうなんだ? 朝霧裕樹、一条宇佐美」


それまで黙っていた白夜が、2人に問いかけた。


「――正直、わかんねえよ。なんでかはわからんがな」

「……ユウ」


「――何を選ぶか。それで未来は大きく変わる……全ては選択次第。誰のせいでもありはせず、何が悪いと言う事もありはしない」


それまで黙っていた凪が、割り込んできた。

――愛用するタロットカードをシャッフルしつつ。


「――凪」

「いずれにせよ、東城太助という男を野放しにはできない――我らは我らの役目がある」


ぺらりとタロットカードを並べ、2枚を手に取る。


「――だが、彼が人に絶望した事も理解出来る」

「どっちなんだよ!?」

「――どちらでもない。増して、そのどちらでもない答えもある」

「……回りくどい野郎だな、あいかわらず」

「半端な人間程、近道をしたがる物……最もそういう人間に縁があったが故だ。すまない」


誠実のナワバリは、魔術都市として知られている。

特に誠実の傘下には凪を始め、予知能力を持っている契約者が多く、それ故に独自のシステムを構築し問題の解決に取り組んでいる。


――それ故に、あらゆる方面から悪用したがる者からのアプローチが最も多く、それが世を揺るがす問題となった事があった。

それが経済バランスが大きく崩される事に繋がる、と言う予知を見たが故に、凪自身がそれを首相に相談した事。


それが、契約者との接触における制限の誕生につながった。


「いや、良いよ……お前なりの誠意だってのは、理解してるから」

「――感謝する」


故に彼は、誠意を大事にする。

欲望でも流されての物でもない、本物の意思――それを尊重する傾向が強い。


「ふーっ……で、どうすんだ? ユウよお」


葉巻を吹かし、シバが問いかける。


「……東城太助について調べて、その上で決める」

「良いだろう。元正義のナワバリ限定で、通行を許可してやる」

「……すまんな」

「あたしも、お願いできます?」


それには、その場の誰もが驚いた。


「――構わん。すぐにでも手配しておく」

「……ありがとうございます

「では、解散!」


白夜の号令で、解散。


「……ねえ、ユウ」

「ん?」

「――兄さんの死を弄んだ人。憎い筈なのに、なんでだろ?」

「……俺も同じさ。だから、その答えを探しに行くんだよ。一緒にな」

「――うん」


会議場から外へ出ると、光一とナツメの出迎え。

その後に、クエイクの背に乗っての空の帰路


「――正義のナワバリに?」

「ああっ、不謹慎なのはわかってるが、留守は任せていいか?」

「わかった。任せてくれ」

「うん、光一の兄さんのサポート、任せてよ。ユウの兄さん」

「ああっ」



「……見つかる、かな? あたしは、結局何をすべきなのか――ううん、見つけよう」


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