第94話
大罪に対する多面テロ勃発。
大罪のナワバリで住民どころか、下級とはいえ契約者を喰い殺しまわった、四凶を模した巨大合成獣。
そしてスペック上は上級系譜に匹敵する生体兵器、ブレイブシリーズ。
それらは、大罪のナワバリに多大な被害を齎した後――
「ぎゃああああああああああああっ!」
大地の賛美者、あるいは至上主義を掲げる契約者の組織――それらを始めとするテロ組織。
それらに攻撃を仕掛け続けていた
その際にブレイブシリーズが出る事はなく、メインは巨大合成獣“四凶”。
そして――
『ぐおおおおおおおおおおおおおおおっ!!』
巨大な牙に、明るい紫色の身体に、真黒な鬣。
牛や象を思わせる太い脚には、ライオンやトラの様な脚があり、斧の様な爪を持つ、“ベヒーモス”と呼称される合成獣の群れを使い……
攻撃を受けた組織は悉く食い散らされ、地獄絵図の様な最期を迎えていた。
『欲望を満たす事しか頭になく、自身の欠点や問題の本質を省みない存在“人間”……好き勝手にのさばる事が何を意味するかも理解できない者達を、僕は許さない――故に僕は調和を取り戻すべく、僕の造り上げた巨大合成獣“四凶”、ブレイブシリーズ。そして、新しく開発した合成獣ベヒーモスを用い、調和を乱す者を処分する』
彼は自身の存在と目的を宣言。
――世界崩壊以上に実感のある恐怖として、世に暗雲を齎した彼は程なく“魔王”と呼ばれる事となる。
「魔王――か」
魔王の襲撃が齎した地獄絵図
それが世の広まると同時に、テロの気配どころか一般人も契約者も、外に出る事は滅多になくなってしまった。
大罪が療養中、上級系譜が重体と特に被害の大きい憤怒のナワバリは、人は怯え外に出られず――機能は停止していた。
――いうなれば、人死にが出ない代わりに、安寧など存在しない世界。
「――皮肉な物ね。魔王の存在が、逆に人死にをなくしてしまうだなんて」
「一時的なもんだよ。圧迫された状況は、いずれ暴動を起こす……という理屈も、通用しそうにないな、これじゃ」
「――四凶にブレイブシリーズが齎した被害が被害だから、あたしでもわかるよ」
テロリストは、乱世で家族や友人を失った者が大半。
その者達にしてみれば、正負友好など許される事ではない。
――しかしそれすらも、占拠した街で横暴を働く者が大勢いる為、形骸化してる印象が否めない。
「――兄さんが未来を信じて、正負友好を考えた事と、北郷って人の正義――同じだったのかな?」
「……わからない。ただ、あいつは――東城太助は、北郷の正義に未来を信じてたみたいだった……だからかもしれない。あいつは、ジレンマに陥ってるような感じだった」
思い描いた未来と、目の前の現実――
更に言えば、北郷正輝が行方不明となり、彼の正義は否定され――
結局は、誰もが世界が抱える問題を蔑ろにし、目先の欲望のままに暴れまわり――
ある意味、あの乱世よりも酷い有様となっていた。
「――どうしようか? ……あいつがああなったの、すっげえ理解出来る」
「……」
「東城太助。正義の研究系契約者で、ブレイブシリーズの開発者--それがあの“四凶”を造り出し、世界に宣戦布告か……世界を敵にする科学者って、まるで漫画だな」
「――それが世のテロリストたちの抑止力になると言うのだから、わからない物だね」
「ははっ、違いない――しかし、理解出来るテロリストってのも、珍しいっちゃ珍しい」
「それはまあ、そうだろうね。北郷さんの正義は、やることなす事子供の癇癪以下の身勝手がはびこる世には、必要とされていたんだ。死を実感させねば、躾も意味がない程酷い有様だったのだからね」
「――違いない。で……」
強欲のナワバリの、とあるホテルの屋上庭園。
そこで知識の契約者、天草昴と強欲の契約者、武田シバの両名が話し合う横で……
「……なんでお前は我関せずの姿勢でのんびりティータイムなんかしてんだ?」
「……戦々恐々の空気が包む中で、良くそんな事が出来るね?」
傲慢の契約者、大神白夜
彼は不敵にも紅茶を嗜み、気象学の本を読んでいた。
「対処できる問題だ」
「――ああそうかい。確かに四凶やブレイブシリーズに、オレ達を倒せるような力はないが、憤怒の所に現れたって言う指揮官ブレイブ」
「――まさか、宇宙君の大脳を使用した生体兵器だなんてね。使っているのは系譜らしいが、十分美徳クラスじゃないか」
「……対処は出来る。本人の脳を使用しているなら、それを量産できる訳でもない。元々、一条宇宙は美徳の1人、戦い方を知らん訳でもあるまい」
――そう言って、白夜はそっぽを向き本に意識を向ける。
「――じゃあ質問だ。お前一体ここから何をする気だ?」
「何を、とは?」
「真理を使って世界を壊して――それからやった事といえば、正負の停戦と友好の提案だ。それからという物、目立った動きもないのはどういう事だ?」
「――待っていただけだ」
「待っていた? ――成程な」
「――世界崩壊すら、君にとっては布石でしかなかった。そう言う事だね?」
「理解が早くて助かる」
3人はお茶のお代わりを注ぎ、ゆっくりと飲み干す。
飲んだ後ティーカップを置き――
「じゃ、それなりにやるか」
「そうだね――人が人である事の意味なんて、既に存在しない世界なんだ。今更どうこういう気にもならないよ」
「――ならば、ここらで終了だ」




