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病院に入院しない人々  作者: VANRI


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第五話 私を嫌いなあなた、あなたを嫌いな私

 訪問看護では時として患者に嫌われることがある。

 その理由がわからないことが多々あることも事実。

 先輩が言われていたのは、

「笑顔が気持ち悪い。」だった。


 今回はそういうお話。


 60代男性。この人は私のことが嫌いである。

 最初はただの無愛想な人、としか思っていなかった。

 しかし他のスタッフに聞くと、毎回笑顔で会話をするそうなのだ。

 私の時はそんなことは一度もない。当然のように眉をしかめてぶっきらぼうに返事をする。


 細かい点でも他のスタッフの場合といくつか違う点があった。


 訪問に行き挨拶をする。これは無視である。何も答えない。

 私を険しい顔で見てくる。顔にはっきりと『お前が嫌い』と書いてある。私も負けじと顔に『私も嫌い』と書いてるのだが、マスクをしているので伝わることはないだろう。


 そしてスリッパがない。他のスタッフにはスリッパを勧めるとのこと。被害妄想だろうか、床も私の時だけ汚れている気がする。


 世間話もない。体温や血圧などを測り、薬をセットして終わり。時々私を見て舌打ちをされる。


 帰り際、靴を履く時に自分の靴下が黒くなっているのを見て、毎回「この野郎」と思う。


 本当に行くのが苦痛で行きたくないのだが、この程度では訪問を免除してもらえない。

 暴力や罵倒などがあれば訪問中止になる。もしくは私は訪問免除になる。

 もういっそのこと殴ってはくれないだろうかと何度も思った。

 訪問当日は、訪問時間一分前までキャンセルの電話が鳴ることを祈っている。一分切った所でやっと腹を決める。


 それくらい嫌いなのだ。

 お互い嫌い同士なのだから、ある意味相思相愛かもしれない。


 それから数カ月後、訪問看護不要とのことで契約が終了した。心底ホッとした。心からヤッター!と思った。


 後からわかったことだが、私はこの男性の娘に似ていたらしい。

 喧嘩して家を出て行った娘に。

 私を見ると思い出し苛々していたようだ。


 その後、その娘と何十年ぶりかに会うことが出来たとのこと。


 偶然、ショッピングモールで娘さんと一緒の所を見掛けた。向こうは気づいたようで、照れ笑いを浮かべながら会釈をしてきた。


 私は、嫌がらせを許していないので見て見ないふりをした。

 私が許すことは一生ない。



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