皇宮からの呼び出し
本日もう1話投稿しています。まだの方は一つ前からお読みください。
ラフィネ皇宮内、ある部屋にてー。
「へぇ、部位欠損をも治すポーションを作る医者…ね」
「はい。他にもよく効く胃薬や熱冷ましなど、様々な薬を取り扱っているようです」
「…どこから仕入れているんだか…」
「それが入手経路を確認できず…申し訳ありません」
「いいよ、そんな簡単に尻尾を掴ませるとも思えない。確かルルネからきた医者だったか」
「はい。リーンズ商会が王都に到着した日と同日にこの街に来ているようです」
「ふぅん…」
(間諜か他国の工作員か…。判断するには情報が足りないな)
「掴めたのはその情報だけ?生活の様子とか」
「はっ、それが…家の周りに強力な結界が貼られているようでして…覗くことさえもできず…」
「…結界?…一介の医者の家に??」
(怪しい…。一度この目で確かめなくては)
「…僕が行って確かめてこよう」
「ッ、危険です!彼女の正体もわからないと言うのになんの準備もなく会うのは…!」
「うん、だから見張っててくれ。だぁいじょうぶ、僕は自分で言うのもなんだけど顔がいい。たやすく転がってきてくれるのならそれでいいじゃないか」
そう言う男の容姿は本人が言うように非常に整っている。日に透ける柔らかな金髪に緑の柔和な瞳、整った鼻筋。誰もが絶世の美青年だと讃えるだろう。実際彼は社交界で「天使」と称されるほどだった。だが本当の彼を知っている者は絶対にそう呼ばない。なんて呼ぶかって?……「天使の皮を被った悪魔」。
「ふぇっ、くちっ」
鼻をすする。風邪引いたかな。
「おーい、会計お願いするよ!」
「あ、はーいっ」
薬屋は順調に営業できている。ジルも手伝ってくれて、小さなマスコットとして頑張っている。
「いやぁ、ここの薬はよく効くよ。嬢ちゃんが開いてくれて助かった」
「そう言ってもらえて嬉しいです」
世間話もそこそこに、また依頼を受けに行くと言う冒険者のおじさん。
「気をつけてくださいねー!」
「おぅ!」
今日は急患もいなくてわりかしゆっくり出来ていた。さっき最後のポーションが売り切れたので閉めなきゃね。
表に出て売り切れの看板を立てていると、
「やぁ、もう閉店かい?」
青年が話しかけてきた。すごい美形だな。
「…!はい、もう売り切れちゃって。また明日…」
フラッシュバック。誰かの顔と重なった気がした。だけどすぐ消えちゃって結びつかなかった。
「…?僕の顔がどうかした?」
「…ううん、何もない。…今日はもう閉めちゃうからまた明日来てね」
そう言うと青年は、
「いや、ちょうどよかった。君にこれを渡したくて」
す、と便箋を差し出してくる。
とりあえず受け取って、くる、と裏返すと。
「ラフィネの国印…?」
封蝋の紋様はラフィネの国印。…てことは。
「貴方は皇宮からの使者ってこと?」
「まぁ、そんなとこかな」
………。
僕は便箋を突き返す。
「悪いけど、これ持って帰って」
青年は少し驚いた風で、
「まだ中身も読んでないのに?」
「中身読んで突き返したらもっと失礼でしょ。読んでないんだからまだマシ」
そう言うと、青年は堪えきれないと言う風に笑い出した。
「っ、あははっ!そうくるか!でもいいの?中身が勅命だったらそれを無視した君は反逆者だ。この国に居られなくなるかもしれないよ?」
「………」
「それは困るって顔だね。それなら受け取ることをお勧めするよ」
「……わかったよ」
突き返していた手を引っ込めて。
「…読んでいい?」
「どうぞ」
ぺり、と封蝋を剥がして中身を読む。
「………」
中身はまぁ要するに皇宮への呼び出し。皇太子様からだ。なんで呼び出されるのかは書いてない。三日後、皇宮まで来るように、か…。
うへぇ、という顔をしていると、
「…ッふ、君、表情を全く隠そうとしないね」
「精一杯の抵抗」
しばらく肩を震わせていた青年。
「じゃあ門番には話が通ってるから。三日後ね」
「…わかってるよ」
ひらひらと手を振って青年は帰っていった。
店に戻るとジルが少し不安そうにしていた。少し口論めいていたのを見ていたからだろう。
「だいじょうぶ?」
頭をなでなでしながら、
「大丈夫、何もないよ。新しく予定が入っただけ」
「予定?」
「うん、三日後皇宮に行く用事がね」
「お城に行くの?」
「そう、ジルも行く?」
「う、うん」
少し不安そうだが了承してくれた。
次の日は『明後日は休店します』と言う張り紙を貼って営業した。急に閉めちゃうと来た時に困る人がいるかもしれないからね。
使者(?)の青年視点。
「いかがでしたか、彼女の様子は」
「うーん、顔には全く反応しなかったなぁ」
執務室にて、椅子に座った青年は従者の問いにそう答えた。
「顔も反応しないし、便箋に関しては明らかに嫌がってた。もしかしたらなんの関係もないのかも」
「しかし演技という可能性も…」
「そうだね、その可能性もある。だけど彼女の功績はちゃんとあるんだ。そこはしっかり評価しないと」
「…そうですね」
「父上が病に臥せっている今、皇太子である僕が代わりを務めねばならない。不安の芽は摘んでおかないと」
リヒト・ルクス・ラフィネ。青年はラフィネの皇太子であった。




