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ハルノルトの冒険と開店

「くっ、ここはどこなんだ…」

ハルノルトは草原の中でひとりごちた。そう。草原。見渡す限り、そこは草原だった。

「計算通りならもうラフィネはついているはず…まさか計算を間違えたか…?」

どうやらまだ自分が違う方向へ進んでしまったことに気づいていないご様子。

「も、もう一度地図を見よう…」

最初に見てから一度も見なかった地図をもう一度見ようとするハルノルト。この男、とんでもない方向音痴のくせして、地図をあまり見ようとしないのである。

「な、逆じゃないか!」

…ようやく気づいた。

「現在地がここで…ラフィネがあっち…と言うことは…もと来た道を戻らなくては…」

くるっと周りを見渡すハルノルト。

………草原。

もいちどくるっ。

………草原。

「どこから来たか分からないじゃないか!!!」

頭を抱えた。

「地図で見分けるしかないか…」

そうして地図を開き、方角を確かめ、進み出す。今回は合っていた。もと来た道を戻っている。


さぁ、ハルノルトの冒険はどうなることやら…。



一方エルは…

「…ついに開店したー!!」

「したーっ」

万歳した僕をジルが真似する。

今日オープンした薬屋は意外とお客さんが来てくれた。なんでもここラフィネはお医者様が少ないらしく。お薬とかそういうものが安価で買えるところは珍しいんだそうな。お医者様になるには免許が必要で、その免許を取るための試験も結構難しいらしい。

 え、僕は医師免許持ってるのかって?そりゃ持ってるさ!ルルネで免許を取って、ラフィネでそれを申告して、特別に技能試験受けさせてもらって見事合格したさ!!!だから違法じゃありませんっ。

 売れ行きがいいのはやっぱりポーション。冒険者も多いし、近くに魔物いっぱいの森があるからねー。他の店と比べれば安価ではあるけど、あんまり安くすると他の店に人が行かなくなって顰蹙を買う。だからほどほどに安くすることにした。一応ハイポーション(ちょーっと薄めたやつ)とかエクストラポーション(原液)も置いてるけど。売れるかな。

「これお願い」

どさ、と大量のポーションをカウンターに置いたお兄さん。冒険者かな。

「はぁい。傷治しポーション3点、毒消しポーション2点、魔力回復ポーション5点ですね。合計10点で5000リラです」

「はいよ、良心的な価格の店ができてくれて助かるよ、これからよろしく」

「はいっ、よろしくお願いします!」

ポーションは冒険者たちの生命線。足元を見て価格を釣り上げるところも少なくない。薬草取りに行くのも大変だし価格を上げたい気持ちはわかるけどね。

その後もいろんな人がやってきて…。

「なんか…冒険者しなくてもやっていけそうだなぁ…」

そんなことを思ってしまった。

「いや、ダメか。薬草取りに森に行かなくちゃだし」

依頼として出すのもいいけど、品質が悪かったりするからどうもねぇ…。やっぱり自分で取ってきた方がいいや。


 午前中に開店したけど正午になる頃にはポーションは軒並み売り切れ、熱冷ましやら胃薬やらも無くなりそうになっていた。

 傷治しポーションに関しては実演したからな…。

 お客さんを捌いていたら、血まみれの男の人が人を抱えて店に入ってきたのだ。

「魔物にやられたんだ!あんた、医者なんだろ!?こいつを治してやってくれ!!!」

慌てて駆け寄り、患者の容体を診る。……部位欠損ね。これはエクストラポーションだね。

棚からエクストラポーションを取ってくる。

「《洗浄》」

傷口を洗わないと化膿してしまう。ポーションをそのまま振りかけるのは汚れがついたまま治ることになるので本当はいただけないのだ。ガラスなんかが刺さっていたらそのまま治るとずっと痛むことになる。

「うぅ…ッ」

「痛いよね、ちょっとの我慢だから…」

一刻を争うので他の患部は一旦後で。

なくなってしまっている足にエクストラポーションを振りかける。

すると。

「足が…生えてきてる…!!」

どんどん生えてくる足。数秒経てば綺麗な元の足に戻った。

「次」

他の患部も洗って綺麗にする。エクストラポーションがまだ余っていたのでそれを振りかける。綺麗に治った。

「他に傷はない?貴方も」

「お、俺?俺は…擦り傷切り傷くらいだ。こいつが庇ってくれたから…」

「そう、じゃあ手当てするからこっちきて。…その人もベッドまで連れて行こうか。《浮遊》」

ふわりと浮かせて移動する。

「ごめんなさい、少し外します。お支払いの方は少々お待ちください」


一階にあるベッドに寝かせる。ちゃんと服も綺麗にしましたさ、洗浄の魔法で丸洗いよ。

もう1人の男の人の手当てをする。

話を聞いていると数を合わせたのは特殊個体と思われる魔物だそうだ。

「見たことないやつだった。最近、魔物が活性化してるから、その影響かもしれない」

「そう…」

「今日が開店の日だったんだろ?すまない、店の人たちを混乱させちまって」

「いいんだよ、僕は医者だから。患者さんを診るのは当然だ」

「ん、うぅ…ん…ここ、どこ、だ…?」

「…!アッシュ!!目ぇ覚めたのか!」

「うぅ…あれ、足がある…?!」

「お医者様が治してくださったんだ!」

「なんだって…!?」

こちらを見るアッシュという名の男性。

「ありがとう…ありがとう…ッ」

泣きながらお礼を言うアッシュ。

「だが、俺たちはあんたが使ってくれたポーションを買える金がねぇ。このお礼をどうしたらいいか…」

…普通のポーションと同じ材料だからなぁ…言わないけど。

「…出世払いかな!いつか返してよ。それまで待ってるからさ」

ニコニコしながら言うと、2人は感極まったようにお礼を何度も何度も言って帰って行った。

それからは効き目は本物だということで商品が飛ぶように売れ、あっという間に無くなった。おじさんがきた時にはもう無かったもんね。

「いやぁ、こんなに早く売り切れるとは予想外だった。どんな魔法を使ったんだい?」

「実演が効果的だったんだと思いますねぇ」

「あぁ、怪我人が来たんだったか」


それから色々話をして。

「じゃあ。傷治し、毒消し、魔力回復、熱冷ましもあるのか。胃薬その他…。これらを定期的にうちに卸してくれるかい?うちの新しい目玉になるだろう。差別化するために少し値段は上げるが…。客も少しは分散されて接客が楽になるはずだ」

「そうですねぇ」

契約書を書いて署名する。

「これで私たちは協力者だ。これからよろしく、エル」

「よろしくお願いします」

固く握手し合った。






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