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冒険

 放っておくのもなんなので、とりあえず傷口をみる。深い、けど治せない傷じゃあない。《空間収納》からポーションを取り出して狼の傷に振りかける。淡く光って傷口が塞がり、治り始めた。跡は残るかもしれないな。狼は気絶しているのか、ぐったりして動かない。

 このまま放っておいたら狩られるよな…。

狼を抱き抱えて考えていると、行商の荷馬車の列が通りかかった。

きゅぴーん。

「乗せてもらおう」

ぶんぶんと手を振って止まってアピールをすると、荷馬車の列は止まってくれた。

「どうしたんだい、お嬢ちゃん」

「王都まで乗せていって欲しいんです。その代わり王都までこのに馬車を護衛します。見たところ、護衛を雇われていないでしょう?」

「あぁ、ちょうど魔物討伐の遠征に駆り出されててね、空きがいなかったんだ」

…この馬車ルルネ国のものか。

ルルネは先日追放された国。結界もそろそろなくなるから魔物が増えてきているんだろう。

「護衛をしてくれるってんならありがたい。いいよ、乗ってきな」

「!ありがとうございます!」

荷台に狼くんを乗っけて僕も乗る。

さてー。

「《探知》」

敵がいないか確かめる魔法を発動する。

すると女の人が

「ん?あんた詠唱はどうしたんだい」

と聞いてきた。

 …やば。忘れてた。

「無詠唱で魔法を使うなんて、ルルネの魔導士長さまとそのお弟子様でもある副士長様くらいしか聞いたことないよ!あんた何者?」

 その魔導士長です…。

「あ、いやぁ…。あはは…」

なんか適当に誤魔化してその場は凌いだ。ふぅ。

それにしても。お弟子様かぁ。元気かな…。



一方少し遡って、ルルネの王宮ではー。

「…エル様がいらっしゃらないだと?」

「は、はい、部屋はもぬけの空で…」

「……わかった。下がっていい」

「はっ」

1人の男が報告を受けていた。黒い髪に冷たい碧の瞳。

男は考え込んだ。

(昨日あの王太子殿下に呼び出されてから行方がわからなくなっている…。聞き込みをせねば)


コンコンコン。

「入れ」

横柄な声が響き、部屋の扉が開く。

「急に面会依頼を出してくるとは、貴殿は礼儀を知らんのか」

「それそれは、申し訳ございません。何せ、とても大事なお話でしたもので」

「ふん…。それで、なんだ話というのは。リリィまで呼び出して」

王太子様は男を睥睨する。

にこ。

目が全く笑っていない笑顔で男は言った。

「エル様のことでございます」

ぴく、と王太子の顔が引き攣る。気圧されている。

「アレがどうした、私たちは知らぬぞ。なぁ、リリィ?」

「はいっ、知りませんわ、あんな女」

「…ほぅ?随分と悪意のある言い方をするものですね」

普段からこき下ろしていらっしゃいますものね。

そう言うと、

「無礼だぞ!大体どこにそんな証拠がある!」

「城で聞きまわれば山ほど出てきますよ」

殿下の振る舞いは城中に広まっていますからね。

言外にそう告げると、ぐぅ、と押し黙ってしまった。

「いつまでもその無礼な口を閉じないならお前も追放してやってもいいんだぞ!!!」

「へぇ。…"も"…ですか」

「っあ…」

しまった、と言うような顔をしてももう遅い。

「エル様がいらっしゃらないのは殿下が追放をされたからだと。そう理解しますが。宜しいのですね?」

「ふ、ふん!バレてしまっては仕方がない!あぁそうだ僕が追放してやったんだ!あんな無能、この国には必要ない!!!」

どうなでもなれと言うふうに叫ぶ王太子様。

「そのうちお前も呼び出そうと思っていたんだ!ちょうどいい、お前をエルの代わりに魔導士長に…」

「辞退させていただきます」

「んなっ!!!!」

断られるとは思っていなかったらしく、驚愕の顔。

はぁ、とため息をつきながら、かわいそうなものを見る目をする男。

「…な、なんだその目は…」

「まず一つ。殿下は王太子の身分です。魔導士長などの役職の決定権は父上である国王陛下にあります。よってエル様を追放されたことは王命に背いたこととなります。そこのあばずれも同様です。二つ。私はエル様がいないこの場所になど居続けるつもりはありません。お分かりになりましたか?」王太子とリリィを見つめて男が言う。2人とも状況をよく飲み込めていないようだ。

(これ以上の長居は不要ですね。エル様を追わなくては)

「では失礼致します」

マントを翻し、男は部屋を去った。


「陛下への告発文も書きましたし。エル様を追いましょう。《オートマッピング》」

(エル様が行きそうなところ…。ラフィネでしょうか…)

「ここがこうだから…北に行けばいいんですね」

そう言って北ではなく、あさっての方向に歩き出す男。だがそれを正すものはここにはいない。いつもなら師匠が「違う!!」と言って引っ張っていくのだが。

そう、この男、絶望的なまでに方向音痴だった。

そしてその師匠というのがエルなのである。


男の名前はハルノルト。エルからは「ハル」と呼ばれている。

ハルノルトの冒険も、始まった。







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