ハルノルト
ラフィネ皇宮のとある侍女視点。
私はラフィネの皇宮で侍女として働かせていただいている者です。
ー最近、お城に新しいお医者様がいらっしゃいました。その方は若く、それはそれは美しい方で。最初に拝見した時は天使様ではないかと見紛うほどでした。
肩口で切り揃えた綺麗な銀髪に赤い瞳。お名前はエル様とおっしゃるそうです。一見すると冷たく思える方でしたが、よくお笑いになることに気づいてからは、とても好感を持っております。
そして私、最初はエル様を男性だと思っていたのです。すらっと細身でいらっしゃるとは思っていましたが、少年の範疇といえばそうでしたし、一人称が「僕」でしたから。
エル様が女性だと気づいたのは皇太子様のエル様に対する対応からでした。エル様のお部屋を用意する際、女性のものを用意するよう仰せになったのです。最初は疑問になりました。拝見した際はエル様を少年として認識していましたから。
さらにその後の細かな接し方から、もしや女性の方なのではと考えたのです。そして失礼とは思いながら、エル様に直接、聞いてみたのです。「女性の方でしょうか」、と。するとエル様は少し面食らった顔をされたあとに、苦笑し、
「そうだよ。紛らわしくてごめんね?」
とおっしゃられたのです。
とんでもない!と返すと、
「そんなに緊張しないで?僕は貴族じゃないからね、立場はあなたと同じだよ」
と言われてしまいました。ですがこの国ではお医者様の発言は時に貴族より優先されます。対等になどできるはずもありません。そう伝えると、
「ふーん、そんなものかな」
とつぶやかれたあと、
「ならせめて体調が悪くなった時は遠慮せずに言ってね。僕は医者だから。分け隔てなくしたいんだ」
とおっしゃってくださいました。
そのあと感謝を伝え、別れました。
エル様はとても良い方。私の中で印象が決定しました。
そして最近、侍女仲間たちがこんな話をしているのを聞きました。
「エル様と皇太子様が一緒にいると、とっても絵になるわよね!」
「本当にそう!まるで絵画のようだわ!」
確かに。これには私も激しく同意します。2人が並んでおられると思わず見入ってしまうのです。そこにジルくんが入ると、少し和みますが。おかげでこの前、侍女頭に怒られてしまいました。不覚です。
そして今日。エル様が城にいらっしゃった時。
…あの方はどなたでしょうか。…とてもお綺麗です。
エル様とジルくん、皇太子様と一緒に1人の見知らぬ男性がいらっしゃったのです。
漆黒の短髪に凍えるような深い蒼。剣を携えたその男性はとてもお綺麗でした。なにやら真面目なお話をされているご様子。
はっ!いけない、こんなに見ていては気づかれてしまいます!お仕事がちゃんとできない侍女だと思われてはなりませんよ!
私はまたせかせかと働きだしました。
さて、そんなふうに称された4人の話している内容とは。
「あのバ……こほん、王太子殿下から話は聞きました。エル様がいなかったらあの国はもう終わりです。私も特に思い入れはないので出国してきた次第です」
「そう…もうすぐ結界も割れる。討伐遠征も増えることだろうね。どうなることやら…」
「どうでもいいです!」
「……ふ」
あまりにもきっぱり言い切るのでなんだかおかしくなってしまう。
「ルルネのことは忘れたほうがいいよ。気にしても仕方がないことだ。もう部外者なんだからね」
「そうだね…」
ルクスに言われて納得する。もう、部外者なんだ。
それからハルノルトにラフィネで宮廷医をやっている経緯などを話すと。
「私が助手となることは可能ですか」
と聞いてきた。店の人手が増えるのは歓迎だし、どうせ助手になるなら知っている相手の方がいいとルクスに伝えると、なぜか嫌そうなルクス。でも最終的には許可してくれた。
僕の服の裾を掴んで少し不安そうにしていたジルに、「この人は安全だよ。僕の弟子なんだ」と言うとおずおず出てきて、
「お兄ちゃん、怖くしない…?エルとらない?」
と聞いた。魔物との戦闘が少し怖かったらしい。僕をとらないはちょっと意図が分かんないけど。
「あぁ、しないよ。大丈夫だ」
安心させるような声色でハルノルトが言う。
「だが!エル様はやらんぞ」
「!…ゔー」
私に抱きついて威嚇。なんでみんな仲悪いの…。
そんな感じで、僕に助手ができた。
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