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追放された。

 僕はエル。女の子。親は流行病で死んでしまった。僕は今宮廷魔導士長として王太子殿下の教育係的なものをやらされている。その王太子殿下は最近私になにやら不満があるようで。

「追放だ」

城の一室。王太子サマに僕はそう言われた。


「お前のリリィに対する行動は見逃すには危険すぎる。陰口だけでは飽き足らず、階段から突き落としたり、あまつさえ毒殺しようとした。いくら自分が無能だからとリリィに嫉妬して危害を加えるのは筋違いじゃないか?」

怒った王太子サマは私を詰めてくる。隣でグスグス嘘泣きをしているのは聖女リリィ。

だがこれには僕も反論がある。

「お言葉ですが。陰口はもちろん、階段から突き落としたり、毒殺したりなどしておりません。陰口はリリィ本人が流したデマ、階段から落ちた件は僕がリリィに突き落とされそうになったので避けたら勝手に落ちていっただけです。そして毒殺は親睦会とか言いながらしれっとお茶に毒を混ぜてきやがっ…失礼、混ぜてきましたので、すり替えただけです」

「嘘よ!私そんなことしてないわ!いくら私が憎いからって…ッ」

また泣き崩れるリリィ。嘘くさいね。

「何度も申し上げていますが、リリィに肩入れするのはおやめください。貴方はわからないかもしれませんが、これは貴方の心の弱さに漬け込んでいるだけです。このままでは貴方の評判が下がるだけ…」

「黙れ!リリィはお前と違って優しいんだ!お前なんか顔を合わせれば小言じゃないか!無能のくせに!」

「アレン…」

感極まったように王太子を見つめるリリィ。

 無能ねぇ。こっちからするとそちらの方がむの…いかんいかん。

「無能といいますが、仮に僕がいなくなったとして、ポーションや結界はどうされるおつもりですか?リリィには荷が重いと思われますが」

ルルネ国は魔の森と接しているため、魔物の出没頻度が多い。魔物討伐の遠征の度に作っている大量のポーションや国の守りの要である結界を維持しているのは僕だ。

「無能なお前にできるんだから、リリィならもっと上手くやってくれる!」

「そうよ!貴女にできるなら私にもできるわ!」

…そのリリィって魔力全然ないんじゃなかったですっけー?まだバレてないのか。

 めんどくさいなぁ…。

「なんだその目は!僕を馬鹿にするのか!もういい、お前は追放するんだからな!!」

「城からでしょうか、国からでしょうか」

「しっ、いや国からだ!!さっさとででいけ!!」

よし、その言葉を待ってたぜ!

「お世話になりました」

さっさとと退散ッ!

バタン、と扉が閉まる。

あっさり追放されると思っていなかったのか唖然とした顔が最後にチラリと見えた、

扉の前にいた騎士に

「王太子直々に国外追放を言い渡されたので、僕は国を出ます。国王陛下によろしくお伝えください」

「え、?!そんな、困ります、私どもでは殿下を抑えられません!」

「知りませんよ。リリィの外面に騙されて職務を放棄してきた貴方たちの責任でしょう。とにかく、私は国を出て自由に暮らすんです」

スタスタ、と部屋をあとにした。


荷物はそんなにないので、軽くまとめて城を出る。

せっかく自由の身になったのだ、好きなことをしたい。

 大体どうして平民の私が王宮勤めなんかしているのか。原因はあの王太子サマにある。私がまだ魔法学院の生徒だった頃、あの王太子サマが授業に見学に来たのだ。そしてなぜか私に懐いた。あの頃はなんか平民だからとか関係ないーみたいなこと言ってたね。そして城に来いとか言われて、卒業間近だったこともあってそのまま王宮勤めが決定したわけですけれども。

王宮は意外と実力主義で、私が魔導士長まで上り詰めるのにそう時間はかからなかった。

 で、まぁそんなこんなで割と順調に過ごしていたわけですけれども。リリィが来てから王太子サマは変わった。

やたらとリリィを贔屓するようになった。

国庫のお金を無断で使うようになった。

勉学、剣術をおろそかにするようになった。

他にも変わったところはたくさん。それも悪い方に。

「リリィはありのままの僕を受け入れてくれる」うんぬんかんぬん…。要は楽な方に逃げたのだ。

そりゃね?厳しくはあったと思うよ?でも逃げるのは違うじゃん。

 嫌なことから逃げ、都合のいいことしか考えないようになった殿下に教えることは何もない。諫めた。

何度も。それでも治さなかったのは殿下だ。私からいうことはもう何もない。この国にも未練はない。

 血縁もいないしね。

隣国にでも行ってゆっくり暮らそう。隣国であるラフィネは平和でいい国として定評があるからねー。まぁ不安材料がないこともないんだけど、多分私には関係ないし…。


「ここからラフィネまでどのくらいだろう…。《オートマッピング》」

目の前に立体的な地図が浮かび上がる。

「まぁざっと40マイルってとこかなぁ。ゆっくり行こう」

私はラフィネへ向かって歩き出した。


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