第7章 準備
その後、遥人は商人ヴォルフマンと会い、信頼関係を強めた。
自らの剣だけでなく、しだいに軍の大半の資材を彼の元から買い入れることになった。
それは、国王側の機嫌を損ねることになった。
対立はしだいに深まっていく。
大臣ジークフリートが遥人のもとにやって来た。
「勇者殿。最近、ヴォルフマンとの商いが多いようですが…」
「彼の商品が良いからだ。問題あるか」
「問題です。王家はゴルトシュタイン商会が元々の取引先です」
「王家利権の元締め、ということか」
「勇者殿。ひょっとして以前の話をされているのか。あの夜のことは、忘れてください。私も酔い過ぎて、いらぬことをしゃべってしまった」
「忘れてしまったよ。しかしヴォルフマン商会のものの方が質が良く安いのは事実だ」
「王家に異を唱えるおつもりか」
「そんなつもりはない。これは商売の話だ。ゴルトシュタイン商会が安くて良いものを出すなら、そちらから買おう」
そのうちにヴォルフマン商会はだんだんと力をつけていった。
そして遥人は、魔物とも交渉を始めた。
戦いの裏で、魔物の上層部と秘密の会談を行なった。
「人間に指図はされない」
初めはそんなふうに言っていた魔物たちだった。
交渉に関わる魔物たちを、裏切者という強硬派も多かった。
「殺された仲間を忘れたのか」
それでも、魔物側の良心派は、遥人を信じてくれた。
彼は説得を続けた。
「俺たちのやったことだから、非難は当然だ。信じてくれないのもわかる。だが、本当にこのままでいいのか」
そんな彼に、魔物たちも態度を変えていった。
「人間たちを許して、前に進もう…」
時は次第に熟していった。




