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(3)

「ローウェル殿、また助けられたな」

「いや、なんのこれしき。陛下がご無事で何よりです」


 父ローウェルは何事もなかったかのように空中から舞い降りると、瞬く間に騎士たちをすべて昏倒させ、国王陛下の身の安全を確保した。


 陛下がお礼を口にすると、父は気さくそうな笑顔を見せて軽く頭を下げる。


「お父様、お母様、関所の封鎖で情報は何一つ入ってこなかったはずです。どうして、助けに来てくれたのですか?」


「関所が封鎖? 変だな。昨日、手紙が屋敷に届いておったぞ。デルタオニア王女ミランダ殿から、ローザを王子エルムハルトの手から助けてほしいと」


「ミランダ殿下から手紙ですって!?」


 そういえば、ミランダ殿下は辺境の別荘の中にいた。

 あの方は何をしているのか一切教えてくれなかったけど、まさか関所を解放しようと動いていたのだろうか。


 確か、私たちクロスティ家のファンと言っていたわね……。


 両親に手紙を送ってくれたのは何よりもの援助だった。

 だからこそ、私もグレンも助かったのだから。


「ミランダはエルムハルト以上に何を考えているのかわからん娘だったが……まさか、このような形で助けられるとは」


 陛下も意外だったらしく目を丸くしていた。

 ミランダ殿下は陛下にとっても不思議な方だったようだ。


「しかしブルーノがあんな最期を迎えるとは。やつが行ったことは、決して褒められたものではない。しかし、元はといえば余がやつとまっすぐに向かい合って話をしなかったことが原因だ」


 ブルーノ殿下はクーデターを起こした。

 しかし、それは陛下が隠れてグレンを次期国王にしようと働きかけていたことが発端だった。


 それは彼の自尊心を大きく傷付けたであろう。

 確かに陛下の責任がないとは言えないかもしれない。


「まぁブルーノ殿下、亡くなってしまわれたのですか。お可哀想に。ローザ、それはどのくらい前の話なのですか?」


 母は心底同情したような顔をして、私に質問をした。

 ブルーノ殿下が亡くなった時間など聞いて、どうするんだろう?


「まだ三十分も経っていません。グレンの大怪我は彼の体内に仕込まれていたという爆弾が原因で――」


「そう。それなら、話は簡単ですわ。……時の精霊よ。我が魔力を糧に因果の理を反転させよ!」


「……こ、これは? 俺は一体……」


「「「「っ!?」」」」


 両親以外、この場にいる全員が驚いて声を失った。

 なんとブルーノ殿下が蘇ったのである。

 そんな馬鹿な。死者蘇生なんて芸当、できるはずがない。

 いや、できるから目の前に殿下がいるんだけど、これは一体どうなっているのか。


「この空間のあらゆるものの時間を三十分前の状態に戻したのだ。イレイナの時空間魔法……見るのは久しぶりだな」

「戻せる時間は一時間が限界ですけどね。間に合ってよかったです」


 時間を巻き戻す?

 まさかそんな魔法まで使えるなんて知らなかった。

 ずっと一緒に過ごしていたのに、底知れない人である。

 まさか死んだ人間の時間まで戻して復活させるなんて……。


「どういうことだ!? 騎士どもはどうして倒れている!? エルムハルト! 貴様もなぜ!?」

「殿下、あまり騒がないでもらえますか? 身体が傷付きますので」

「はぁ? お前は誰だ? うぐっ……」


 母は状況がわからずに騒いでいるブルーノ殿下の腹に腕を突っ込んだ。

 殿下の腹からおびただしい量の血が噴き出す。


「これがローザの言っていた爆弾? 物騒ですね。こんなものをお腹に埋め込まれていたなんて……」


 母はブルーノ殿下の腹から黒い結晶を取り出すと、上空にそれを投げる。

 すると、再び空中で大きな爆発音が響き渡った。


 そうか。三十分前の状態に時間を巻き戻したから、爆弾もまた殿下の体の中に戻ってしまったのか……。


「ば、爆弾!? いつの間にそんなものが。は、腹の怪我も治って……何がどうなって……」


 殿下はその様子を見て唖然としていた。

 もう彼から戦意は感じない。

 本能で悟ってしまったんだろう。決して勝てない相手が側にいると。


「ブルーノ、エルムハルト、お前たちの処分は明日言い渡す。それまでは地下牢に拘束する」


「父上、お、俺は……」

「馬鹿者……」


 ブルーノ殿下とエルムハルト殿下は拘束されて、地下牢へと入れられた。

 裏切った騎士たちもことごとく捕まり、クーデター事件は幕を閉じたのである。

 

 みんな無事で本当に良かった。


「お嬢様、怪我はありませんか?」

「ええ、大丈夫。あなたが守ってくれたから」

「……それは何よりです」


 グレンはいつものように私に気遣いの言葉をかける。

 当たり前だったそれが、随分と久しぶりのような気がして胸が温かくなった。


 やっぱり私は……グレン、あなたが側にいないと――。

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