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再び王都へ(1)

「“精霊樹の枝”を煎じてみましたが……どうでしょう?」

 

 私は“精霊樹の枝”をすり潰したものを、水で煮出して、煎じ薬を作ってみた。

 煎じ薬は“精霊樹の枝”と同様の輝きを放っている。


 万能霊薬(エリクサー)のような効能を持っているという話だが、本当にそうなのだろうか。


 今さらだけど、不安になってきたわね……。


 見た目はどこか神々しくもあり、効果がありそうだけど。


「精霊樹には神の力が宿っていると聞く。この明晰が頭脳が言っている。この薬は効く、と」


 イカロス様はまるで自分に言い聞かせるように、薬を私から受け取った。


「これを飲めばいいのだな。死ぬのは怖くない。僕はもうすでに死んだようなものだからな」


 バルバトス様は薬の効能をあまり信用していないような感じね。

 はっきり死ぬとか口にしているもの。


「「……ごくっ」」


 二人は意を決して、私が手渡した薬を飲み込んだ。

 すると二人の顔色はみるみると青くなってきて――。


「「がはっ! ごほっ! ごほっ! げほっ!!」」


 匂いがきつかったのか、味が不味かったのか、とにかくすごい勢いで咳をする。


 あ、これは良くないかも。

 まさか、失敗した? 確かに上手くいく保証なんてなかったけど。

 見ていられない。どうしよう。私はなんてことを――。


「「ぐあっはっ!!!」」

「あっ! ローザお嬢様、見るっす!」

「うわぁ……」


 レズリーの声に反応して、私は顔を上げる。

 バルバトス様とイカロス様の口の中から小さなカブトムシの幼虫のようなものが、ボロボロと出てきていた。

 そのグロテスクな光景に私は引いてしまって、再び目を逸らせた。


「はぁ、はぁ……これで全部か」

「ふぅ……二度と体験したくないな」


 吐き出した寄生虫を眺めながら、二人は安堵の表情を見せる。


 私は一度も体験したくない。

 万能霊薬(エリクサー)のような効果があると聞いていたが、結構力押しで治すのね……。

 

 とはいえ、良かった。

 ちゃんと効果があって、二人から寄生虫を除去できたのだから上出来だ。


「……ありがとう、ローザ」

「ローザ、礼を言う。この恩は忘れない」


 バルバトス様とイカロス様はこちらに頭を下げられた。

 九死に一生を得たからなのか、穏やかな口調になっている。


「頭を上げてください。治せて良かったです。運良く“精霊樹の枝”を持っていたおかげですが」


 実際、辺境伯様から“精霊樹の枝”を頂いていなかったら、打つ手がなかった。


 まだまだ修行が足りないわね。


 実家に戻ったら、母から治癒魔法の特訓をしてもらおうかしら。


「いや、運じゃない。普通は命を狙ってきた元婚約者なんか助けないよ。僕は君の度量の大きさに感服したんだ。……騎士失格と蔑まれようとも、一から自らを鍛えなおす決心がついた」


「この私の明晰な頭脳を以てしても君の行動は読めなかった。その崇高な精神に報いることができるよう、私もこれから努力しようと思う」


 まるで精霊樹の光が移ったかのごとく、瞳を輝かせている二人。

 そんな大層なことはしていないんだけどな。

 ただ、見捨てられないと思っただけで。


「……ローザお嬢様、周囲の偵察に行ってきたっす。この辺りにいた騎士たちは王都に向かって撤退を始めたみたいっすね」


「私が国王陛下に直談判するしかない、と結論づけると読んでいるのね」

 

 実際、もう私に残された手段はそれしかない。

 辺境伯様のところにいたこともバレているし、何よりも彼の身柄も無事なのかどうかわからない。

 

 私たちの追跡をやめてもらう、辺境伯様を助けるように便宜を図ってもらう……この状況を打破するためには国王陛下との謁見しかないのである。


「どうするっすか? 王都に行くのはさらに危険っすよ。ここはグレン先輩を信じて待ったほうが……」


「そうね。グレンなら大丈夫だと思うけど……いえ、やっぱり王都へ向かいましょう」


「ええっ!? 危険すぎるっすよ!」


 グレンのことを信じていないわけではない。

 しかし、レズリーからの報告を聞いて私は猛烈に嫌な予感がした。

 騎士たちを王都へ帰還させたのは、単に私たちを待ち構えるだけではないような、そんな気がしたのだ。


 あなたは怒るかもしれないけど、私はやっぱり放っておけない。


 だって、あなたは私にとって誰よりも大事な人だもの。


「レズリー、あなたに付いてきてとは言わないわ。確かに危険すぎるから、私一人で行っても……」


「お嬢様! 水臭いっす! あたしがビビってるわけないっでしょ。グレン先輩に遠慮して止めてみただけっすよ。主人のいるところがどこであろうとお守りする。それがクロスティ家の使用人っす」


 レズリーはムッとした顔をして、私についてくると宣言した。

 頼りになる。彼女もまた、グレンと同様に……。

 

 だったら、私はクロスティの人間として使用人である彼女とグレンを守ってみせる。


「僕も行くぞ。ここで君だけを行かせたら、それこそ後世の笑い者になってしまう」


「私もバルバトス殿も、エルムハルト殿下の謀略を証言できるからな。陛下の謁見が叶ったら、あの男の傍若無人ぶりを伝えてみせよう」


「バルバトス様、イカロス様、ついてきてくださるのですか? 捕まったら今度こそ命の保証はありませんよ」


 まさか二人が意見を顧みず、王宮へと一緒に向かってくれるなんて思ってもみなかった。

 

 とにかく今の私には味方が少ない。


 二人が力を貸してくれるなら、ありがたい。


「命など惜しくない。それよりも僕の騎士道を貫き通すことが大事だ」

 

「私はあの王子に自尊心を傷つけられた。この屈辱を晴らせるなら協力は惜しまない」


 バルバトス様もイカロス様も思うところがあるらしく、エルムハルト殿下への恐怖は微塵も感じなかった。


 殿下とは会ったことがないが、それでもとてつもない悪意は肌で感じている。


 彼を野放しにするわけにはいかないのも確かね。

 

 この選択が彼の術中なのはわかっているけど……全面的に対決するしか道はない。


 私たち四人は国王陛下との謁見を目指して、王宮へと向かった。

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吐き出した寄生虫(証拠)は念のため持ってけよとは少し思った
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