02話 気と魔力
家に帰ると母さんがご馳走を作って待っていた。
「さぁ、今日は祝いだ。」
父さんがそう言うとみんなでご馳走を食べ始めた。
「やっとだな…。お前ならどんな気を授かっても大丈夫だろう。問題は魔力量の方がどうかだ。」
魔力量……
明日神殿で気を授かるには身体中のマナを覚醒させなければならない。
その過程で体内に魔力が発生するのだ。
たとえ、龍者の気を授かっても魔力量が少なければ強くはなれない。
逆に魔力量が多ければ基礎的な身体能力も大幅に上げることが出来るし、更には多くの魔法を使うことができるようにもなる。
もちろん何の気を授かるかは大事だが魔力量も大事なのだ。
「父さんは魔力量が少ないせいで騎士にはなれなかった。お前にはそんな思いして欲しくない。」
「何を言ってるの。ルイスは私似だからきっと聖者の気を授かるわ。聖者の気なら魔力量が少なくてもやって行けるし、私の跡も継げるわ。」
「まぁ…でも、1番はお前がしたいことをすることだ。どれだけ恵まれなくても俺たちはお前を応援している。」
「えぇ、そうよ。したい事を全力で頑張りなさい。」
俺は温かい食事と両親の暖かさを味わい、明日を迎えるため眠りについた。
次の日になると俺は村の中央にある噴水のところに向かった。
ここにはキャロルやバラキンなど、同い年の村の子供が集まってる。
村の人達に見送られながら馬車に乗り、街へと向かうのだ。
「おい、ルイス。どうせお前はしょぼい魔力量だろう……今のうちに俺からボコられる覚悟しとけよ。」
と突然バラキンが俺に突っかかってきた。
周りの奴らは喧嘩を売ってきても1度殴られれば大人しくなる。
だが、こいつは違う。
どれだけ俺に負けようとも喧嘩腰なのだ。
そんなこいつの根性だけは俺も気に入っている。
「どうした?殴られたりてないのか。」
「ふん、その口が後で聞けると思うなよ。」
いつも通りの言い合い。
26歳も下のやつに何をやってるんだか……
俺たちは村の人々の希望を胸に馬車に乗り街へと向かった。
ロード公爵家が治めるロード領の街、タミネス。
ここには今日近隣の8歳の子供が全員集まる。
もちろん、神殿で気を授かるためだ。
ロード公爵家の領地には10の村があり、それぞれの村からは5人前後、タミネスからは約20人の計70人ほどの子供が来るだろう。
俺もその中の1人というわけだ。
70人ほどという事は1人、聖者もしくは龍者が出ればかなりいいほうだろう。
俺としては、自分が龍者を授かるよりもキャロルに聖者を授かって欲しいと思っている。
もちろん。どっちも叶えば良いのだが……
俺たちが神殿に着くと中には子供たちが大勢いた。
多分俺たちが最後だったのだろう。
いかにも悪そうなやつから頭の良さそうなやつまで色んな子供が集まっていた。
まぁ筋肉美は俺が1番だがな……
俺たちが神殿に入ってしばらく経つと、いかにも偉そうな聖職者っぽいやつが出てきた。
するとそいつは、
「おっほん。えっえぇ…この神殿を管理しているハリー司祭じゃ。ワシは今日この日を迎えられたことを〜」
などと長たらしい話を始めた。
この世界でも偉そうなやつの話が長いのは一緒らしい。
「まずは私が君たちのマナを活性化させる。1人ずつ前に出なさい。まずはタンドク村のハン。」
そう言うとハンと思われるやつが前に出た。
ハリー司祭がハンの背中に手を当てるとハンの身体が光出した。
「ではマナを活性化させる。おぉこれは魔力量3000!素晴らしい……そして気は水者の気だ。」
マナを初めて活性化させた時の魔力量の平均は2000だ。
もちろん、魔力量は訓練により増やすことも出来る。
……が最初の魔力量で潜在能力がわかるという。
例えば、騎士になる基準は最初の魔力量が4000。
6000を超えると天才、8000を超えると神童と呼ばれる。
8000を超えるのはロード家領のみならず王国でも10年に1人ぐらいのもだ。
その点ハンの3000は優秀ではあるが騎士になれるほどではない。
しかし、それ以降ハンを超えるほどの魔力量は出なかった。
もちろん、龍者や聖者の気も…
「では、次はトルネ村のバラキン。」
遂に俺たちの村の番が来た。
「おぉ!これは素晴らしい。魔力量、4500。気は火者の気じゃ!」
4500、つまりは騎士になる基準よりも上。
バラキンは俺の方を見て「後でな。」とだけ言ってきた。
だが諦めろ。
俺はお前よりも強くなるからな…
「次、同じくトルネ村のキャロル。」
キャロルは少し緊張した顔つきで祭壇に登って行った。
「なんと!!!これは、魔力量6100更に気は龍者の気!!どうやらこのロード家領から天才が現れたようじゃ!」
神殿の中にいる子供たちがみんな驚きの声を上げた。
それはそうだ。
魔力量が6000ってだけでも問題なのに龍者の気となれば天才以上だろう。
しかし、本人は聖者の気を望んでいたのだ。
落ち込んでなければいいが……
だが、そんな俺の心配とは裏腹にキャロルは嬉しそうにしていた。
あれなら安心だ。
「では、最後に同じくトルネ村のルイス!」
遂に俺の番が来た。
これで俺も異世界人の仲間入りだ!