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王様とお話ししました

ついにサンサン王国の国王 タイヨウ・ミカド と話をする一歩手前まで来た アマノ。

しかし、舞台は少し前へと遡る。

ーーsideエイト・ミカド

俺は 現王 である タイヨウ・ミカド の弟であり、宰相(さいしょう)だ。俺が実権の7割を司っていると言っても過言じゃなかった。


 あの女さえいなければ…!!!!


少し前までは大人しかったが、好き勝手に暴れ始めた。問題児のジロウ が可愛く思えてしまうほどに、だ。


 どいつもこいつも、俺の苦労を知らないらしい


 「…少し、席を外すぞ」


 「……あぁ ()()()()が来るかもしれない」


 「…だから なんだ」


 「ヤニーも、ほどほどにな…」


 「分かってる」


俺より観察眼も、知能もない馬鹿兄なんかに指図されても不愉快なだけだ。


ガチャ…


いつものトイレまで行く。俺だけの個室。喫煙の場所がここしかない。安心してヤニーを吸える。


 「…はぁ…………」


ガヤガヤ…


窓が真後ろにあるため外の声が聞こえる。


 妙に騒がしい


兄が、客が来るとも言っていた。


 「…この声は…ジロウ だろ……」


直ぐに勘付く。いつも、王宮で笑わない ジロウ が笑っている。


 なら、その傍にはヤツがいる


あの日、『勇者』らと会合し、盗聴器を切った人物。


 俺の裏の顔を、知る可能性がある人間


 「……くそ…」


窓枠からヤツの姿を視認しようと目を凝らす。


 アマノ・ケンリュウ


才能のも、金も、後ろ盾もない 取るに足らない存在だ。いや、だった。


 「そう言えたのかもね。 でも、今は違う」


窓から想定外の人物が顔を出す。


 「…重音様…」


 『千里の鎖』重音


もっとも邪魔な存在だ。冷静さを装う。


 「…ここは閑所(かんじょ)です。ですのd」


 「うんそうだね、でも、牽制しないと何するか分かんないじゃん」


 「…先程から不敬ですぞ」


 「は? アマノン と ジロウ を殺そうとするやつに礼儀なんている?」


シュバッ…!


 「…おわっ…!!」


吸いかけのヤニーを鎖に奪われる。


 「さっぱりしたばっかりだからさ… 臭いが付くなんて論外なんだよ… ゴミはちゃんと捨てないとね」


ヤニーを挟んだ鎖が視界から消える。


 「お前なんかに時間割きたくないから、手短に行こっか」


 「……」


ここまで敵意を剝き出しにされたのは初めてだ。


 [重音は国民並びに重音自身を守るためにスキルを使うことを約束し、スキルで人間を傷付けてはならない]


契約 で殺せないのが分かっていても、圧で殺されそうだ。


 「…アマノ? ジロウ様 を殺すですって? 私が、ですk」


 「ねぇ… 私の警告 ちゃんと覚えてるよね?」


 「……」


忘れるわけがない。朝、兄に会うまで、[ジロウ に手を出すな] と文字を形どった鎖が、ずっと目の前にあった。人前に出るかを悩むくらいには、迷惑だった。


 「…それは覚えてますけど!」


 「バレてないとか思ってんの?」


 「……何を言ってるんです? 何も隠してないですよ」


 マズイ…


これまで努力が、水泡に帰すと言うのか。


 それだけは…


 「タイヨウさん に告発する」


 「私は! 何も!」


 「直接的には、してないね」


 「……はぁ…?」


 「本当は今すぐにでも捕まえたいけど、決定打に欠けるし… お前は絶対、実行犯にはならないし、組織規模でしょ? たとえ組織ごと潰しても、別の組織に依頼するだけだから… 根本的解決にはならないもんね」


 「……本当に…何を言って」


 「部屋も、別荘も、軽く調べた…」


 「……そ、そんなとこまで…」


落ち着け、問題ないある程度は予想していた。対策はしている。


 「『ブラック・パレード』は、もう動かないよ」


 「……」


 何を言って…


『ブラック・パレード』は確かに俺が依頼した暗殺集団。別名、闇の執行人だが、表の顔もある。『セイント・サンライト』として真っ白な組織でもある。


 ただの悪ではない


法で裁けない犯罪者を裏で殺したり、魔族への対抗手段の一つでもある。


 欠かせない組織だ


 「…組織全員の身柄と証拠を合わせて、マサじぃちゃん に渡しちゃった」


 なんてことを…!


 「自分がしたことを分かっているのか……!」


 「設立時は知らないけど、腐ってる組織なんて悪だよ。 有害な味方は、敵より邪魔でしょ?」


顔が超至近距離まで迫る。


 この女には、今、感情がない


理解する。殺しができるヤツの顔つきだ。


 「く、くるなぁーー!!」


金縛りだ。そうとしか言えない。体が動かない。


 「…何か言いたいことでもある?」


 ここから、生き残る方法……


 「……魔が差したんだ。 だって、怖いじゃないか…! 自分が築き上げてきた地位を滅茶苦茶にされるかもしれないと恐怖するのは生存本能だ。 蹴落とそうとするのは、安心感が欲しかったから…」


本音を吐露する。少しでも共感を得れたら、同情を買えたら…淡い期待だ。


 「……」


 「もうしない! 反省してる。絶対しない。約束もしよう! 何だってする…だから…」


スッ……


 「……!!」


目の前に俺の手が運ばれる。俺の意思じゃない。それはどうでもいい。[フォンフォン] が握られていた。


 繋がっている…… 兄と!!??


 「今の会話と、お前がしてたことは伝わってるよ」


 「…………」


 終わった……


生きて解放されても、これじゃ犯罪者扱いは免れない。俺の栄華は音を立てて崩れた。


 そして、もう一つの衝撃


俺達が知らない能力を所持している。確定だ。


 俺らが知ってる 重音 のスキルは、センサーのような探知能力 と 物質の鎖を遠隔で創造し、操作できること


 〈こんな風に、体を勝手に動かす だなんて知らない!〉


 これができるなら、契約は破綻している…!!


重音 を制御できたと思っていた。


 〈悪魔だ。コイツは……〉


放心しかけた俺に 重音 は続ける。


 「……私は…国民を守るためにスキルを使うことを約束してるし、スキルで人間を傷付けられない…」


こんな危ないやつが考えなしに 契約 なんてしない。


 人の体でも操れるなら、他人に 殺し をさせればいい


抜け道はいくらでも思いつく。


 「…お前が国民だなんて思えないし、スキルが無くても人くらい殺されるよ…」


ジャリリリリリリリリ……!!


 「ひぃ……!」


震えあがる俺の正面で、鎖が人の形に成っていく。


……バゴンッ…!!!!


人型になった鎖を 重音 の手が貫き、目の前で 握り締めていた手を、開く!


 「……っ!!」


 殺される……!


 「……脅しは充分かな…? あんたが出しゃばらなかったら、こっちもこれ以上手を煩わなくて済むの。 今回の処分は、タイヨウさん に任せるよ」


 「……はぁ…はぁ……っ……はぁ……」


 「あー最後に 殺さないのは、タイヨウさん の弟だから… 勘違いしないでよ。自殺に見せかけるのは簡単だし、行方不明にだってできる。 んじゃ」


 「………………」


 ダメだ。終わりだ。人生詰んでる……


千切れて歪んでしまった鎖が泡のように消えていく。 重音 がいなくなった後でも、しばらく動けずにいたーー




in王宮 廊下

俺はなんとか歩けていた。


 周囲の視線がキツ過ぎる……!!


騎士や召使い、学者っぽい人ともすれ違う。同じような顔をされる。


 こいつ、誰だ…?


 〈そりゃあ…無名ですよ……!!〉


 「アマノン♪ 緊張しすぎだよ~ もっと気楽に生きないと、疲れちゃうよ」


重音さん は先ほどから上機嫌だ。おそらく、正装に着替えた彼女を褒めたからだろう。


 なんというか、紅いドレスが似合い過ぎている


 「…ん~ アマノン 的には、肌の露出多い方が好みだった?」


 「え、ちょ、そういう関係…ですか…!」


重音さん の担当と言われた ココロさん が純粋過ぎて困る。これまで担当だったのか疑いたくなる。


 「……真に受ける人がいる時はそういう冗談控えて下さいよ…」


 「ごめんってば~~」


 「なんだ…冗談か…」


王様の面会に足を運んでいるが、案内は2人ができるということで ジロウ と ヨウさん とはお別れした。重音さん と ココロさん とで廊下を歩いているが、俺からは話しづらいし、話題を考える余裕もない。


 「…あ、そう言えば、アマノン の ジロウ君 への説教聞いちゃった♪」


 「……ハズいな」


その場の勢いで言葉を紡いだせいで、途中、自分への言葉すら交じっていた。もっと良い説教ができたらとは思う。


 「アマノン は誇っていいよ! 最高だったよ! 言葉に気持ちが(こも)ってて、聞いててドキドキしちゃった」


 「はははは……」


 〈……あの場にはいなかったよな…? スキルで会話も分かるのか?〉


 -<お邪魔するね…。 そだよー。集中すればだけど聞こえるね!>-


本当に思う。スキルのできることが 重音さん だけ規格外だ。『初代勇者』もとんでもなかったと聞くが、近しいものを感じる。


 「重音さん がそこまで言うなんて… 聞きたかったです…」


 「……大したこと言ってませんよ。重音さん は褒め上手でありながら、冗談が好きですので……」


 言葉を真に受けないでくれ


直接的には言わないが、圧を送る。


 「……そ、そうなんですね!」


 「あ、ここだよ~」


ガチャ…


 「重音様、アマノ様、お待ちしておりました。 中に入られるのは、お2人だけでよろしかったでしょうか」


 「2人だけでーす」


 「…すみません、失礼しました」


 「奥の部屋で、タイヨウ様 がお待ちしております。 …あまり、タイヨウ様 を困らせないで下さいね」


そう言いたくなる気持ちもすごく分かる。


 「やめてくださいよ~ 私は ()()()()()()() お願いしてませんよ?」


 「は……ハハ…」


 「……」


 こういうとこだ


できることであるなら、お願いしても良いでしょという豪胆さ。肝が据わりすぎている。


 「…あ、あの… 私は…どうしたら」


 「あー、ココロちゃん は仕事に戻っていいよ」


 「……」


 なんでここまで、この子を連れて来たんだ……?


 「ココロちゃん と軽く話したりしたから、アマノン も頼りやすくなったでしょ~?」


その言い方はまるで…


 「…か、重音様…?」


 「連絡先渡すから、いつでも頼っていいよ」


 「……」


 「わ、私にできること大してないですよ…!」


 「そういうことだから、よろしく! またね~」


バターン!


王様が待っている部屋は奥だ。ここは廊下とその部屋の繋ぎの部屋で、人はいない。重音さん に小声で意見する。


 「……もう少し優しくしなよ…」


 「まーまー、あの子もこんな対応の方が生きやすかったりするよ、たぶん」


 「…全部は分かってないが、重音さん が言うなら… 理由はあるんだろ?」


 「もちのろんだよ。 適切な対応を心掛けてるんだよ。 誰に対してもね」


 「……タイヨウ様 に変なこと言ったら、後で怒る」


 「…分かった。 その都度 こっちの考え 話しておくね…」


 変なこと言わないじゃなくて、弁明するから納得させられたら怒らないで、だなんて……


そんな返しアリかよ。


 「……勢いに任せたのはナシな…」


重音さん が急かすように説得してきたら、王様の圧が怖かったら、間違った判断を下すかもしれない。


 冷静に考えて、ナシな話は止めて欲しい


 「…任せてよ。 アマノン を困らせるのは、不本意だから… 最大限気を付けるよ♪」


 「…………頼んだ」


邪気のない純粋な笑顔だった。重音さん は俺の反応を見て嬉しそうに奥へ進む。ついに、王様との距離は、扉一枚隔てただけ。


 深呼吸をしよう


 「すぅーーーーー  はぁーー……」


 よし……


腹を括る。


 「…じゃあ、準備はいい?」


 「……」


重音さん は俺の頷きを確認して、ノックする。


コンコンコン


 「どうぞ…」


 「失礼します…」


 「失礼します」


 「ああ…2人とも、よく来てくれた…… 座ってくれて構わない。 私もそちらに座ろう」


 「はい、失礼します…」


部屋は…よくある応接間といった造りだった。俺と 重音さん はソファーに腰かけると、テーブルを挟んだ正面のソファーに タイヨウ様 が座る。


 「堅苦しくしたくないんだ。 お茶と焼き菓子を用意していてね」


タイヨウ様 はカゴをテーブルに置く。


 「好きなものを食べていいよ。 お茶は今から作るから、少し待っていてくれ…」


 「は、はい…」


重音さん は焼き菓子に手を伸ばす。


 「じゃあ、コレ頂いてもいいですか?」


 「ああ、好きなだけ いいぞ」


 「いただきまーーす おいしい~~ アマノン も食べなよ~」


 「は…はは…」


 喉を通らないよ、普通…


 「…よし、良いな お茶もどうぞ… 熱いから気を付けてくれ」


 「ありがとうございま~す」


 「ありがとうございます…」


湯呑みで渡されるが、飲めない。


 「緊張し過ぎだよ~ アマノン」


 「……ははは」


放っておいてくれ、と言うのも変だったので、言葉で返せない。


 「…アマノ君 は好きな食べ物とかあるのかい?」


 「…好きな食べ物ですか…」


リラックスさせるための質問だ。深く考える必要はない。


 「焼肉とかですかね…」


今となっては行く機会がないが、昔は家族でよく食べに行ったものだ。


 「じゃあ… 好みは牛肉かな?」


 「はい、好きです。 …豚も鳥も好きですよ」


 「…いつも味付けはどうしてるかい? 焼肉の時は」


 「……味付けですか」


 あんまり意識していない


 「…店にあるのをそのまま使ってます」


 「私はね… つい、マヨネーズだったりかけちゃうんだよな~ あははは…」


 「あはは… そうなんですね」


 国王 がマヨラーだった


どうでもいい情報だが、字面が面白い。こんなことでも笑わないと緊張がきつい。


 「もっと面白い話題振って下さいよ~ 緊張(ほぐ)すにも効果薄いですって」


 「……そうみたいだな。 すまなかった」


タイヨウ様 が軽く頭を下げる。


 「いや、謝罪とか止めて下さい…!! ノり切れなかった自分が悪かったです」


 王様 謝罪させたとか、見る人が見たらこっちが悪者にされてしまう


 -<誰か呼べって振り……?>-


重音さん がスキルを使ったのか、心の声が聞こえた気がする。これが勘違いなら、もう頭が侵食され始めている。


 「…周りは謝罪に敏感なんだが、私はどんどん謝るべきだと思うから、重いものじゃないよ。 …反省はしてるがね」


 「だってさ、アマノン。 反省があるんだから、改善があるよ。 次は面白い話題来るんだろね♪」


 「……!!!」


 「手厳しいなぁ…… うーん、どうしたものかな…」


 〈重音さん… 流石に良くないよ〉


 -<大丈夫だよ アマノン。 だって、王様 は アマノン をリラックスさせたい。私は自由を振る舞って、アマノン をリラックスさせたい。想いは一緒だよ。 不敬に見えるかもだけど、ある程度は気にしなくていいから、この部屋なんでしょ>-


 だとしても…


 -<……あとさ、王様 今頑張って笑ってるんだよ>-


 ……どういう意味なんだ…?


と思って正面の タイヨウ様 をコッソリ見ると、言いたいことが分かった気がした。


 無理している顔だ…


 「…………」


 -<弟さんが逮捕されてもおかしくない状況に陥ってるからね…>-


 なんだよ… それ


 〈自分が関係してたり…する?〉


 -<んー、してるっちゃしてるね。でも、アマノン は何も悪くないよ>-


分かんないことが多い。全部は教えてくれないのだろうか。


 -<…たぶん、その話もするだろうから、まだ待ってて…>-


 王様 が無理していて、元気がなかったとしても……


 -<王様 のためでもあったよ? それでもダメかな……?>-


重音さん がしたことを全部許すのはいけない。


 〈…まず事後報告で減点〉


 -<そんなぁ… 誰にも迷惑かけてないよ…>-


確かに 重音さん のおかげで空気が明るくできたところはある。でも、王様に謝罪させるのは控えめに言ってヤバイ。


 〈十分、アウトのラインだよ。 もっと慎ましくしないと…〉


 -<ごめんなさい… 調子乗りました…>-


 「…いやぁ、考えたけど良い話題って難しいものだね。 若い子ともなったら尚更だよ」


 「こちらこそ、すみません」


 「タイヨウ様 申し訳ございませんでした」


 「……君たちの謝罪なんて不要だよ。 何も非がないからね…」


 「……はは…」


 「…本当に仲良しなんだね。 安心したよ」


 「疑わないで下さいよ~ 私も尽くしたい人くらいいますよ」


 -<…あれ…? 語尾伸ばすのって、慎ましくない……?>-


 〈…程良く使う分にはいいんじゃないか〉


 -< OK!>-


 「……」


 「…アマノ君 の意思も聞いていいかな?」


 来た…!


俺から 重音さん への意思確認。面会内容として、聞くと明言されていたことだ。


 「…自分は 重音さん の全部を肯定するわけじゃありません… ただ、危なっかしさ と 異次元的なスキル、が先行して人間離れした印象を持たれていますが、とても理性的で、きちんとした倫理観のある女性だと思います」


 「……」


 -<倫理観はあるって思われるだけお得だからね~>-


重音さん へのそのままの評価だ。倫理観はアレだ。


 〈…ふざけたように見えて、制裁だったり、要求だったりの加減は上手いと思ってる〉


 -<お、褒めてくれるね~ まぁ、私にしてみれば、いつもちゃんとしてますよってアピールが倫理観(誠意)で、お願いを通しやすくする最善策だからだよ~ 気持ちなんてないよ>-


重音さん は、なんだかんだ 分かりやすい。


 〈…気持ちがゼロってわけじゃないんだろ?〉


なにもかもに感情移入してたら、捨てられないんだ。大事なものを最小限にしたい、そういう人だ。


 -<…アマノン って心読むスキルとか知識が特別ないのに、私のこと分かってくれるよね…… 全部じゃないけど♪>-


 分かってる…


全部、理解できるなんて思わない。


 ただ… 価値観が、部分的に近いんだと思う


 「……ありがとう。 アマノ君 の言葉が聞けて良かった」


 「…こちらこそ、お時間いただきありがとうございます」


 「…うん、未来の話をしよう。 カサネさん は今後どうするつもりだったのかな?」


 「タイヨウ様 と交わした契約を遵守した上で、アマノさん を支えることに専念します」


 「……」


重音さんからの「さん」呼びは初かもしれない。


 それだけおふざけ無し(本気)で言っているのだろう


 「アマノ君 はどうなんだい? 迷惑だったりするのかな?」


 「正直に言っていいよ。 私、ここにいない方がいい??」


重音さん をあえて無視する。その必要はないと態度で示す。


 「…重音さん がいて困るってことは、ないです」


 「……」


ここで変に言い切らないのは良くないと思った。


 あと、実際問題、迷惑(大変)だったのは コウヤ や ジロウ だ


タイヨウ様 は穏やかな表情で頷く。


 「うん… なら いいんだ。 不安の種が一つ消えたよ。 ありがとう」


 「…自分は何もしてませんよ!?」


 「いいや… アマノ君 で良かった…本当にね」


 「……はは…はは… ありがとうございます」


よく分からずに感謝の言葉を言う。重音さん も笑っている。こういうことが最近多い気がする。反応に困る。


 「…それじゃあ、報酬とかどうしようかな。 何か欲しいものあるかい?」


 「報酬なんて…不要ですよ。 何もしてませんから!」


 「カサネさん。 アマノ君 が欲しそうなものとかない?」


 「……そうだな~」


マズい。


 〈何言うか、こっちに言ってくれ!〉


 -<えーー。 なんでもいいって言われてるんだy>-


 〈ぶっ飛んだものは、ナシだ!!〉


一瞬、王様に借りを作るのも考えたが、立場が良くない。ジロウ と違って親しい間柄でもないのに、あっちにこれ以上、悩みの種を作らせたくない。


 「ん~~ アマノ君 は欲しいって言わないですからね~」


 -<パッと思い浮かんだのは2つだよ。 悪友の マキ君 の情報、そして~、今着てるスーツのお金とか?>-


 〈……言うなら後者だな〉


 -<了解!>-


 「あっ、そうだ。 正装を買うお金で少し困ってましたよ」


悪くない線を行ったと思う。


 「ふむふむ… 10着くらい好きに選べる金額にしようかな?」


 「いいと思います~」


 「そこまではいいですよ…!」


 待ってくれよ……


この人たちの金銭感覚がマトモなわけがない。


 「遠慮するんじゃない。小切手で良かったかな? あぁ、ヨウさん とも交流があるんだし、そちらで現金手渡しでもいいな」


 「…え……何イェンですか?」


 「さっきまで、80万イェンって思ってたけど… いや~少ないなぁ」


 「十分過ぎますよ!! 1/8でいいです!」


もらわなかったら、逆に、王様側に傷がつきそうだ。


 とにかく、なんもしてない俺に、80万はおかしい


 「ダメだよー、そんなに遠慮しちゃ~~ アマノン がいなきゃ、私は悪に染まってたかもしれないんだよ?」


 「……はは…」


強く否定できない発言だ。


 「そうだぞ~アマノ君~ 学生の教育費用なんて、100万イェンもすぐ無くなるからね~」


 「……はい」


それはそうだって素直に思う。


 「だから、120万イェンにしようと思う」


 「!! 増えてますよ!?」


 「いや~ カサネさん の言葉聞いたら100万切るのもダメだな~、自腹切らないと、ってね!」


 「多過ぎますって…!」


さらっとポケットマネーを切る判断しないで欲しい。重い…!


 「…受け取っていいと思うよ、アマノン」


 「……さすがに、多過ぎますよ」


 「じゃあ、お願い。 貰ってよ、 アマノン。 私の光堕(ひかりお)ち…って、そんなに価値ない?」


断れないツボを…押さえている。


 「……分かった…」


 「……」


タイヨウ様 に向き直る。


 「この度は、このようn」


 「堅い堅い! しなくていいんだって」


 「そういう訳には…!」


 「受け取ってくれるってことだよね。良かった! これで カサネさん については聞き終わったね!」


 「いや…、え……?」


2つの衝撃で、混乱する。


 別件の話で、まだ終わらないのが確定したこと


 「…? どうかしたのかい?」


 「あの…け、契約だったりは…?」


 「あーいいよいいよ。 人を見る眼には自信があるんだ。 不安なことはない」


断言される。絶対に、契約はすると思っていた。


 「あの…自分が、脅されたりとかもあり得るんじゃ…」


契約の真価は、裏切り防止にあると言っても良い。重音さん にもしている契約を、自分にしないメリットがない。


 「基本的には、カサネさん が守ってくれるだろう?」


 「そうだよ、アマノン。 安心して」


 「自分が、お金や私欲に走って、不利益を被る可能性は捨てきれませんよ…!」


自分は聖人なんかじゃない。それを分かってるから、無条件に信用されると、止めてくれと心が叫ぶ。


 「君に限ってないだろ?」


 「…………」


もちろん、率先してやることはない。でも、引っかかる。


 俺は… 聖人じゃない……


頭に響く否定の声が段々大きくなる。自分のことを誰より疑っているから起きる現象だ。


 〈……………………〉


 王様 の前で抱く感情じゃない


必死にそれを押さえて、質問に答える。


 「…しません。 でも、絶対とは言えないじゃないですか… 契約できませんか?」


 「……んあぁ… うん、分かった…もちろん、いいよ」


少し歯切れが悪い。


 「…やっぱり、大変ですよね…」


 「全然、いいんだ。 気にしないでくれ! ちょっとだけ面倒なだけなんだ…」


当たり前だ。あんな文章誰が好んで作りたがるかって話だ。


 「…契約内容は、後日でもいいかな? また、手紙形式で送って、ヨウさん からでも言ってくれたらいいからさ」


 「あ、はい… ご検討いただきありがとうございます!」


 「じゃあ、カサネさん の件で聞きたいことはもうないかな?」


 「はい、もうないです!」


 …何を話すと言うのだろう


 「まぁ、身構えないでくれ。 雑談だよ、雑談。 ジロウ がお世話になってるって、いつも聞いていたからね」


 「ほんとに大したことしてませんよ…」


 「他は何かあるんですか~?」


 「ははは… あとは…ないかな。うん」


 「…大事な話題が、まだ 2つ もあること… 忘れてますよ」


 「…何の話だい…?」


 〈重音さん…!?〉


重音さん の雰囲気がマズい。やらかしそうな気がして恐ろしい。


 -<アマノン には、絶対に迷惑かけない…>-


 〈……分かった…〉


 「…弟さん の話 と アマノさん 過去の話 に触れますよね?」


重音さん は言っていた。俺にも関係があると。タイヨウ様 の目が暗くなっていくのを見て思う。


 明らかに タイヨウ様 は話したくなさそうだ


 〈…俺の過去…ってなんだ?〉


 -<そのままだよ。 アマノン の過去を、不意に聞こうとしてたんだよ。 面会内容って事前に言ったやつ以外で、大事なこと聞くのは反則だよね~~>-


どちらのやり方にも、理解できるとこはあるが……何を聞かれるか分からないせいで、タイヨウ様 の肩を持ちたくなる。


 -<聞かれるのはたぶん、ジロウ になんで好かれるようになったかのきっかけ。 あと アマノン に、どれだけアッチの知識があって、どんな知り合いがいて、契約とかしてないか とかが聞かれそう>-


 〈…なるほどね…〉


尚更、事前に言われなかったのが分かる。そして、重音さん がこうして教えてくれなかったら、思考停止確定ルートになってたかもしれない…。


 「……」


実際に説明するシミュレーションを行ってみる。


 〈……あ…………うん………………まずいなぁ…〉


言葉が(まとま)まらない。


 これ…もしかして、事前に知っても詰んでね??


自分にとって一番、関わり深い 姉貴 は…非常にめんどくさい存在である。


 ロクに説明したことがなかったこと、相手が国王であること、重音さん もいること


どこまでをどう説明すべきか、本当に困ったものだ…。

~新情報まとめ~

・コウヤ たちに盗聴器をしかけたのは、現王タイヨウ の弟エイトだった。

・王族に開示していた 重音 のスキルは探知能力と物質化した鎖のことだけ。エイトを脅す際に、スキルで人体を動かす技をお披露目した。


~~~~~~~


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活動報告にXを、質問受付をマシュマロで、そして、noteに裏話や設定などの場所を設けています!

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アルファポリスで【解放】を約4年かけて完結!!

【解放】→https://www.alphapolis.co.jp/novel/872985425/671478042


また、TALTOの方で【解放】のTRPG版アナザーストーリー【解放〇】を掲載中!

【解放〇】→https://talto.cc/projects/IigrzQxXtenCvrZKmVcYD

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