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それじゃアポなしみたいなもんだろ②

~前回のあらすじ~

重音さんら と訓練をした。メイアさん には剣術の全ておいて敗北を喫し、重音さん とは情報交換を行った。


コウヤ との訓練…? 嫌な予感がするな……

in医務室

医務室で目が覚める。


 「あ、おはよ~」


 「おはよぅ…」


時計を見る。本当は3コマ目の講義がある時間だ。今日はもう講義はないため、帰っていいのだが、ベッドに横になっていた。


 「なんでこうなったかの経緯…覚えてる?」


 「あぁ…大丈夫だ」


覚えている。


 3回も コウヤ の暴発に巻き込まれた


怪我くらいする。嫌な予感は的中した。


1回目 剣術の訓練中に聖剣を呼び出して、校庭にデカイ穴を作る。

2回目 魔力トレーニング用で学校が貸し出ししている魔法ペンを爆発させる。

3回目 トイレで態度の悪い先輩に絡まれトラウマスイッチが入った コウヤ は軽く発狂。聖剣が暴れ出しトイレは半壊。トイレに居たやつは コウヤ以外 皆気絶。


ここ2時間くらいで起きたことだが、ここまでくると笑えてくる。


 …いや、笑えないわ


 「アマノン 災難だったね~。 よりによって男子トイレでそんなことがあるなんて、予想してなかったから…」


 「…重音さん がいなかったら、もっと怪我してたから感謝してる」


ホントだ。1回目も2回目も 重音さん のおかげで無傷で済んだ。物質化した鎖で爆発の被害を最小限にしてくれた一番の功労者だ。3回目は、プライバシーを配慮してくれたからモロに巻き込まれた。仕方ない。


 「アマノン の感謝は嬉しいけど、もっとどうにかできたよね~色々」


 「ははは…」


重音さん が何を考えてるかは正直定かではないが、割と常識的なタイプなので、今は心配しなくて良さそうだ。ヤバイ時の 重音さん は雰囲気で分かる。


シャリシャリシャリ…


 「はい、できた! 兎さんだよ~」


重音さん はアプルを食べやすいサイズに切り、皮を綺麗に残して兎と言い張る。


 「どこにあったの…?」


 「ヨウさん だっけ? お願いしたの」


 「……そっか」


ジロウ のお世話係の ヨウさん が話題に出てくると思わなくて反応に遅れる。


 「本当は アマノン に直接会いたかったみたいだけど、お見舞いの果物と手紙とか置いて、ジロウ と一緒に行っちゃった」


 「…まぁそうだよな…」


 「うん、だよ~ だから、美味しく召し上がらないと♪」


重音さん はアプルを食べさせようとしてくるが、手で少し遮る。


 「自分で食べれるよ…」


 「怪我人なんだし、無理しちゃダメだぞ!」


 「大丈夫だよ…」


 「まったく~ 青春物語だったら雰囲気ぶち壊すだよ~」


 「悪かったな…」


そういう割には嬉しそうにニコニコしているのが不思議だ。


 「はい、恥ずかしがり屋さん」


 「どうも」


重音さん から皿に乗せた食べやすいアプルをもらう。


 「…おいしいね」


当たり前だ。ヨウさん が選んでるんだ。


 「よね~ ちなみに私が選んだやつ」


 「……」


 「そこそこ食べ比べしてきたからね! 舌には自信があるよ♪ あ、これが手紙ね~」


 「ありがとう…」


重音さん から ヨウさん の手紙をもらう。これまた丁寧に、ご迷惑をおかけしましたと謝罪の手紙だった。


 コバヤシ兄妹 との急な会合といい、お酒の件といい、ジロウ のせいで色々巻き込まれたと言っても過言ではない


俺は怒って当然だと思うし、謝罪も状況には適している。


 〈ジロウ が書けとは思うが〉


 「アマノン はさ、ジロウ君 に甘いよね」


 「…そうか? 厳しいとこを見てないだけさ」


 「だって、顔が(ほころ)んでるよ」


 「……」


 「予想なんだけどさ… 昔の マキ君 と重ねてるんでしょ?」


 「……だったら、なんだ?」


 「アマノン が ジロウ君 を見る眼は、お父さんとかお兄ちゃんみたいに温かかったよ……」


 「……」


 「過去に未練があるんでしょ? 当時の日常が、やり場のない想いが、どうしようもないミスが……」


 「………!!」


 「忘れられないんじゃないかな……?」


当たっている。当たっているさ。心を読んでないとは思えないほど、当たっていたんだ。


 「……そうだよ」


 「…ごめんなさい! その配慮がまた足りなかったよね。忘れてくれない…?」


別に怒ってるわけじゃない。その問いの行きつく先は、向き合わないといけないと思った。


 「怒ってないさ。まだ聞きたいことがあるんだろ?」


根拠はない。そんな気がしただけだ。


 「……マキ君 を会えたらどうするのかな…? とは思ってたよ」


 マキ と会えたら……


 《オレを放置したら、世界は大混乱を引き起こし、ばあちゃんも危ない。 な? やるしかないだろ?》


 〈おばあちゃん の眠り病についての真相を話してもらう〉〈危ないことは止めてもらう〉〈もう独りには……〉


ドクン…!!


 《()()()()()()()()()


あの時の言葉が反芻する。状況を全て思い出すと、心が持たない。


 「アマノン!!」


 「…大丈夫……。ほんとに、うん」


 「…………」


なんてことないんだ。ただただ、親と衝突して軽いトラウマができただけ。


 なんてしょうもない人生なんだろう


マキ や 重音さん と比べられないほど、取るに足らない格好の付かない生き様だ。


コンコン…


 「入るぞ…」


その人物が来る可能性を一ミリも考えてなかったわけじゃない。


 シュウ・ケンリュウ


一般家庭からは珍しい、恩賞による『決闘者』という二つ名持ち。俺の父親だ。


 「…父さん」


 「…元気そうだな」


 「……」


 「席外そうか?」


 「あ…あぁ」


 「…貴方が重音様ですか?」


 「様を付けないで下さい、重音 です」


 「申し訳ありません……ご本人だと証明できるものがあったりしませんか?」


 「…これで良かったですか?」


重音さん は王家の紋章が入った紙束を取り出す。


 「本物の小切手…ですね。 疑ってしまい申し訳ありませんでした」


 「気にしないで下さい。 離席しますね」


 「お気遣いありがとうございます」


 「……」


重音さんが視界から外れていく。


 始まってしまう…


 「さて…何があった?」


大丈夫。想定していた質問だ。


 「…隔離市に行ったら 重音さん から熱烈なアプローチを受けるようになりました。それが原因で、王様に呼ばれてます」


 「…順を追って説明しろ」


 〈そう言われて当然だ…〉


これも、想定できた。


 「第2王子の ジロウ様 に誘われて飲食をしていたら、誤ってお酒を飲んでしまって…気付いた時には、おばあちゃん家にいました」


 「どうするつもりだ?」


想定…していた。


 「……」


話すのは大前提として、いつ? 何を話すか? ってことのはずだ。


 いつ…???


汗が噴き出る。


 〈学校ない時? 隙間時間?〉〈土日なんて余計に無理だ〉〈明日?〉〈相手に確認取ってないのに決めれない!〉〈誰に確認する?〉〈何を話す?〉〈面会内容は書いてた〉〈それとそれ以外を聞いてる?〉


 「……えっと……」


言葉が纏まらない。そのまま言ったら、否定される。


 準備不足だ


 〈息が…苦しい…〉


 -‹仲良しですって言いに行くだけだよ。面会日なんて、なるはやで、とかでいいんじゃない?›-


医務室の出入り口に視線を向けると、ドアの前で立ち止まって動かない 重音さん がいた。


 -‹余計だった……?›-


 〈…いいや…ありがとう〉


 「…経緯と誠実さを示すだけです」


 「具体的に」


経緯 については、もう話した。なら、誠実さ について、だ。


 「…誠実さ は… サンサン王国 に対して反旗を翻す意思も、何かを要求するつもりもないこと です」


 従順で、無害をアピールする


 「身だしなみ と 礼節 も忘れるな」


 「っ… ごめん…なさい…」


 「…私は帰るぞ」


 「……お気をつけて」


カツカツ……ガラガラ……


 「………」


どっと疲れが押し寄せる。


 「はぁ……」


額を拭うと湿っていた。苦手で、嫌いで、会話をするのも苦痛なんだ。体もそう言っている。


 昔は…こんな圧がある人じゃなかった


ギィ~~……


 〈何の音だ…〉


出入口付近だが、人気はない。ベッドからそっと足を下ろし、音がしないように近づく。


 「……」


 「…けほぉ……っ…」


 -<助けて…>-


掃除用具入れに 重音さん が入っていた。


 「……もしかして、そこで隠れてたの?」


 -<うん♪ ドア開けたら音がするでしょ~ 挟まって出られなくなったけど>-


 〈ほんとに何をしているんだ。この人は……〉


 -<…マジで出られないヨ?>-


そんなことないだろうと疑いたくなるほどのスキルを持っているが、事情があって使えないのかもしれない。助けよう。


 「箒もっとくから、顔から…」


 「ぷは~~~ 生き返った。 わぁ、近いね~ さっきぶり?」


 「…余裕あるな。放していいかな?」


 「待ってよ~ 足が~~」


 「ったく… ほいっ…」


 「ありがと、アマノン」


 「……」


さっきの会話で、言葉が詰まってたのもあって気まずい。


 情けない……


 「うっひゃ~ また体洗わないと~~」


 「そうだね」


 「あれ? アプル 全然食べてないじゃ~ん」


 「悪いな…食べとくよ」


 「アマノン の家に全然果物なさそうだったし、ちゃんと持って帰りなよ~?」


 「…ありがたくいただくよ」


 「あ、王様に会いにいくのは確定でしょ?」


 「あぁ…」


 「なら、連絡しよっか? 当て ある?」


 「……誰に連絡するつもりだ?」


 「私はさ、毎日のようにアッチの人と連絡取ってるんだよ?」


 「……」


 「私の担当の子がいるんだよ♪」


それもそうかと納得する。ただ、重音さん の笑顔が気になった。




ーーsideココロ・ティラ

わたしは父がいない。本当は、ティンタ商店、別名『T商店』の社長 アラタ・ティンタさん がわたしの父親。


 でも、父の意図せずに生まれた わたし は、親子として見られることはなかった


母は出産したことを嫌がらせと言っていた。母には わたし への愛なんてなくて、お金稼ぎの道具だって思ってるのは分かってる。


 「ティラさん! 遅いです。いい加減慣れて下さい」


 「すみません!」


義務教育だけで社会に放り出されて、私は社会に合わないって思い知らされただけだった。


 転機は約一週間前


父が仕事をくれた。それは王宮内の召使い(メイド)。その中でも、特に不人気な役回り。


 ゴミ・汚物処理


仕事の内容は難しくない。『勇者』様 達にお会いする機会は皆無で、重労働、そして、精神的にキツイ。


 でも、これすらできなかったら、繋がりが本当になくなる気がした


 「一週間で、ここまで できない子、初めてね」


 「…すみません」


そこまで言わなくてもいいじゃないか、と思う気持ちがあっても言えなかった。


 「そもそもなんでいるの? 誰の伝手?」


 「ホントよねー。 あ、アレじゃない? 誰かの隠し子的な」


 「……はは… すみません」


 やめてよ……


つい昨日、父 に再会した。仕事を恵んでくれたお礼に一言でも、言いたかった。


 ハンドサインを出された


「どっかいけ」ってことを意味することくらいわたしでも分かった。思い出すだけで辛い。


 「否定しないし、ホントかもよ」


 「ホントかどうかはおいといて… ここまでコミュ障だと困りますね。やる気はありますね?」


 「あります。 すみません」


ガラガラ~~


 「あ、いたいた」


場違いな声が響いた。


 「……」


 「…タイヨウ様、エイト様」


王様 の名前が出るとは思わずびっくりしながら周りを見ると、他のメイドは既に頭を下げていた。慌てて頭を下げる。


 「お見苦しいところをお見せしました。どうかなさいましたか?」


頭を下げながら、男の人たちの先頭に立っていた女の子に違和感を持ち直す。長い黒髪に、真っ白な肌……見た目の若さからは考えられない発言の数々。


 王様もいたんだよね…どういう状況…?


 「あぁ…それは」


 「私が言ってたのは、この子」


 「……その子は…」


ゆっくりと顔をあげると わたし に指されていたことが分かる。


 「へ? へ?」


 「私の連絡係」


 「カサネ様! 私じゃ務まりませんか?」


 「別に問題があったわけじゃないよ。 ただ、この子にしてもらうのが一番丸く収まりそうなの」


 「…丸く収まるとはなんだ! ちゃんと説明しろ!」


 「…言わないとダメ…?」


王様 の弟の エイト様 だ。私でも分かる。それに負けてない女の子の正体が気になる。


 「…雇用側にも、職員側にも理由が必要だろう? 頼む」


 「…この子がいじめられてた」


 「……!」


 「それが アマノン の目に入ったらどうするのさっ!」


 へ……??


 「私の評価が下がるでしょ? だから丸く収めるには、この子が連絡係になって発言権を持つこと」


 「……連絡係になって解決するのか?」


 「私がいるから成立するんだよ。下らない いびり も、悪口も、筒抜けだと思ってよ」


 「……!!」


 「…すぐには首を振れないが、色々確認をしておくよ」


 「…タイヨウ様 の寛大な心に敬服します」


 「……カサネさん の能力を高く買ってるよ。今後も期待している」


 「ありがとうございます。 まだ確定じゃないけど、よろしく。 えっと、ココロちゃん?」


 「は…はい、よろしくお願いします…?」


まさか、このやり取りをしたその日に、また会うことになるなんて思いもしなかったーー

~キャラ情報~

・シュウ・ケンリュウ(52) 恩賞による『決闘者』という二つ名持ち。アマノの父親。昔から寡黙な人だったが、兄を失くした同時期に性格が変わる。膝を悪くしている。

・ココロ・ティラ(16) ティンタ商店、別名『T商店』の社長 アラタ・ティンタ が父親。アラタには家族がいて、家庭があった。ココロの母親から定期的に金を強請られ、アラタには親子揃って嫌われている。


~~~~~~~


   更新は調整中!


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