年上女性と添い寝したと知ったら、どう思いますか?
~前回のあらすじ~
第二王子である ジロウ に半ば強制で、異世界人の コウヤ と メイア と食事会をするも、突然 寝落ちしてしまう!!
in自宅
朝、目が覚める。なぜか床で寝ている。頭が重い。
「……」
時計も確認するが、朝練に余裕で間に合う時間帯だ。
<だが、気持ち悪いは気持ち悪い…>
昨日の食事中の気絶はお酒のせいだ。十中八九、ジロウ が犯人だ。お店にお願いしたんだ。そうとしか考えられない。
あのバカ のせいで二日酔いコースだろ、これ…
「はぁ……」
幸い、布団はある。寝返りを打とうと体勢を換えただけで、弾力を感じる。生き物 的な温もりを感じる。
温もり…?
一気に目が覚めるが、頭痛も忘れず主張してくる。
「いってぇ……」
「……んん~~……もぅ…あさぁ……?」
「…………」
人間の女性だ。メイア ではない。
だれ……?
「……どした~~?」
「…どなたですか……?」
「アハハハハハ♪ カサネ は カサネ だよ! 昨日のこと、な~~んにも 憶えてないの…?」
「…………」
ケラケラと笑う声も、無邪気そうに見える満面の笑みも、一切 見覚えない……。
「……何かしましたか?」
「さぁ~~? どうでしょー?」
一応聞いてみたが、ふざけた感じで応えてくれる。下着につけた アレ を確認すると、あっち方面のチェックはできる。
<……まぁ、大丈夫だわな>
「うわ~~女子がいる目の前でそういうチェックしちゃう?? やるなら、大胆に見せてもいいんだよ?」
<……何言ってんだ…この人>
「無茶言わないでください……ってか…よく確認したって分かりましたね」
下着につけているのは紐状の便利グッズで、背中側から、しかも、服越しに感触を確かめただけ。傍から見たら、腰の近くを掻いただけにしか見えない。
「まぁ…千里眼 的な?」
<誤用では…?>
その疑問を口に出す前に踏みとどまる。彼女が何者か分からない。新手の強盗かもしれない。
「それは違うよ。 強盗だったら、姿見せるメリットなんてないよ」
「…心が、読めるんですか……?」
「顔に書いてあったんだよ~~」
警戒は解かずに改めて伺う。
「…すみません、なんでここで寝てたかを、教えてください」
「契約したじゃん。 隔離市で」
「……」
隔離市 は 獣人 や 特殊な人 が合意的に住まう 施設 を指す。
彼らは好んで そこに居るわけで、別の場所に行きたくなったら、契約しないといけない
貴族だったり、特殊な人だったりが、互いを尊重して契約する。
そう、金のないモブには無縁の話だ
契約書に関わること自体数えるくらいしかないというのに、してたら覚えているハズなんだ。
「なんで…契約したんですか……?」
「君が、誘ってくれたじゃない」
「そんなわけ……いや…」
「本当なんだよ」
「…………」
カサネ の顔色が、がらりと変わる。本当のことを言ってるように感じさせる。昨日の記憶が、おぼろげに蘇る。ただ思い込みによる虚像かも分からないレベルの解像度だ。
<……カサネ…いや、まさかな………>
改めて外見を確認する。童顔で、長い黒髪に、病的に白い肌も、確かに一度見たことがある。
全く変わらない だから そんなわけない
「そんなわけないって思ったでしょ……?」
「心読んでるだろ、絶対」
「女の勘ってやつだよ」
適当に喋っているようで、こちらの反応を細かく確認している。そして、隠された計算高さが、そこにはあった。
<若くはないな…>
でも、確定じゃない。そう言い聞かせる自分がいた。
「今、年齢のこと考えたでしょ?」
「…あぁ悪いかよ」
「悪くないよ。でも安心して! ずっと引きこもってて歳は取ってないようなもんだから、20歳ってことで!!」
別に見た目は大して歳を重ねているようには見えない。正直、女性の年齢なんて分かりはしない。この言い方から察するに、20歳では絶対にないのは確かだが……これ以上は考えない。
ただ…無理あるだろ…
「良かったですね…」
「もっとピチピチしてたら喜ばれた……?」
<…それはない>
誰であっても、目を覚まして知らん人が居たら怖いが勝つ。
「……」
「うん、だよね。知ってた」
「何も言ってない」
「言わなくても分かるよーー。あんだけ熱い約束交わしたんだから…w」
カサネ が抱きつこうとするのを、なんとか躱す。
バタン……!
「ひどーーい!」
「…おぅ………ぅ……」
姿勢を変えたからか、胃の痛みと頭痛とが襲い掛かり吐きそうになる。
「大丈夫ー? 水でもいるー?」
「……頼むわ」
どう対応するかもこれで分かるハズだ。弱ってるフリをしながら、[フォンフォン] を準備する。
フォンフォンフォン♪
「すいません、いつもお世話になっております。アマノ・ケンリュウです」
「…朝っぱらからなんだ!」
学校の先生と繋がっている。朝から聞きたい声じゃないが、仕方ない。
「…『勇者』事案で急を要するので、昼から登校しても良いですか?」
「なにぃ?!! 貴様如きが何を言う!! 証拠があるなら見せてみろ!! ないだろ!!」
「………」
うるさいに尽きる。酒場のうるささ とは違って不快感しかない。どうしたものかと、言葉を決めかねていると、[フォンフォン] を奪われる。
「『千里の鎖』って聞いたことあるでしょ?」
女性の周りの空気が変わる。
「な、なんだ貴様は!」
「あのさぁ…邪魔しないでよ」
「ヒ、ヒギャーー!!バサバサ バターン!」
ツゥツゥー……
「切れたね~ ま、そんなことよりお水でしょ?」
「…………」
確定してしまった。 彼女こそ、 初代勇者 の次に異世界から来た人間。
『千里の鎖』カサネ
『勇者』として期待されるも、戦闘や血、死に耐えられず『王族を守ること』を条件に戦線離脱したと聞いたことがある。そんな彼女がいた場所が、隔離市。
昨日、ジロウ が行こうと提案した場所だ
水を飲んで、少し冷静になる時間を作る。さっきの電話じゃ、連絡できたと言えない。
「もう一回電話する…」
フォンフォンフォン♪
「………ダメそうね」
えらく機嫌がいい。軽く威嚇でもしたのだろう。威嚇された 先生 の怒りの矛先は、間違いなく 俺 だ。
「はぁ~~~…… 学校に電話かける」
先生が電話を取れない状況になったとしても、学校には繋がるだろう。
フォンフォンフォン♪
「こちら、英雄大学の窓口です。いかがなさいましたか?」
「もしもし、剣士生1年の アマノ・ケンリュウ です。 担任の先生に繋がらなくてお電話しました」
「あ、学生さんね~。担任ね…… あ……ちょっと待ってね あ、マサキリ先生!」
「!!」
「………」
『鬼人』ハルガラ・マサキリ
初代勇者 の魔王討伐隊に最年少でチーム入りして、その後も 防衛戦や災害の救助活動でも活躍し、引退後は教える立場で国を支えている。今年で65歳とは思えないくらいの体で保っているマジの偉人。
「…もしもし? 私は教師の マサキリ だ。アマノ・ケンリュウ君 だね?」
「は、はい!」
「『千里の鎖』を名乗る女性が、近くにいたりするかい…?」
「あ、はい、います」
「そうか…… あぁ、こちらから質問してすまなかった。要件は何だい?」
「あーっと、『勇者』事案ができたので、昼から登校したいです…」
「分かった。公欠にしておこう」
「あ、ありがとうございます!」
「私もそこそこの付き合いになるから、仲良くなりたいなら秘密を一つおs」
シュン!!
「ダメだよね~~ 人の秘密を話すなんてさ…」
電話を切られた。 目が笑ってない。 あの『鬼人』と『千里の鎖』が顔馴染みだなんて初耳だ。
「そうだな…」
「ま、おじいちゃんのことなんかより……自由になったんでしょ? 遊ぶ?」
服を脱ぐ動作をしながら言う上に、目がマジだ。こんな人と同居したくない。
「冗談だって… アマノン かわい~~~」
「アマノ だけど…」
「あだ名だよ、あ だ 名」
「嫌って言ったら……?」
「他のあだ名にするか、名前呼びするか……?」
「…好きにしてくれ…」
「うん、そうする」
「……」
今からすべきこと。 まず 隔離市に行って、確かめないと、な。
「行くんでしょ?あそこに」
「……そうだよ」
年上のせいだからか、スキルや特技か、悉く考えを読まれる。
でも……
不思議と悪い気はしなかった。
in隔離市
「昨日、契約してたじゃない……本当に覚えてないのね」
隔離市の番頭は呆れたように吐き捨てる。確認したかったことは、契約を交わしたか、否か。そして、内容だ。
「……契約内容を確認させてくれ…」
「…持ってるわよね?」
「私が持ってま~~す」
カサネさんが契約書らしきものを広げる。
[ ~契約書~
契約者>アマノ・ケンリュウ 重音<
以下の契約内容に同意したものとし、契約を反故してはならない。
・契約の絶対条件を守った上での契約であること。
・アマノ・ケンリュウは、重音の一時的な外出 を許可するものとする。外出が終わるまでに、重音は誰にも危害を加えてはならず、アマノ・ケンリュウは重音に危害、及び、洗脳やマインドコントロール等で心身を歪めてはならない。
・重音は上記の契約有効期間であっても、王族との契約は継続する]
「……持ってたんだ」
「聞かれなかったから出さなかったけど、出しても納得しなかったでしょ?」
「……」
契約書 は偽造できるものではないから、納得しないということは…おそらく、ない。それでも、確認のために隔離市に訪れたのは変わらない。契約内容すら確認しなかったさっきまでの自分が、如何に頭が回っていないかが分かる。
「内容は粗方分かったが…」
要は、重音の一時的な外出を認めただけ
全く身に覚えがないのは、契約書見る前後で変わらなかったが、結論は出た。
「もう、外出は終わりでいいのか? どっか行ってくるか?」
『千里の鎖』と呼ばれるくらい国にとって大事な人材だ。こんな契約書なくたって、外出に制限があったわけじゃない。隔離市が都合いいから居ただけで、自由なハズだ。
「そうだね。もう外出はいいかな」
おば様はカサネから契約書を受け取る。
「こっちで処理しとくわよ?」
「うん。破棄する」
「お願いします」
おば様に任せておけば大丈夫だろう。知らないうちに契約させられたのは、初めてだったが、内容が緩めだったから、おば様が軽いノリで許可でもしたのだろう。
<………そうだとしても、聞いたことないようなパターンだが、二つ名持ちの異世界人だ。優遇されてんだろうな……>
「ねぇ…アマノン……」
「え? ああ」
あだ名に慣れていないせいで反応に送れる。
「今日寝てたとこに住んじゃダメ?」
なに 言ってるの??
「……やめてください…」
「ん~~じゃあ、ババ様! 住むとこ探してくれない? 英雄大学 近辺でお願~い」
二日酔いで見えてなかったものが一つあった。カサネさん の眼だ。
「…ははは……」
ジロウ の眼に似て、尊敬や全肯定が言動に現れている。そして、その熱量が ジロウ 以上だ。
これから…どうなるんだろうな……
国家の最重要人物と言っても過言ではない『千里の鎖』から好意を持たれること。それは、とんでもないリスクを孕むことくらい簡単に予想できる。
でも、こっちからはどうしようもできない
一先ずは、現実的な問題を片付けなければならない。
大学に登校して、どう報告しよう…………
それだけを考えることにした。
~新情報まとめ~
・重音(??) 『勇者』として期待されるも、戦闘や血、死に耐えられず『王族を守ること』を条件に戦線離脱したと噂されている。見た目は、童顔で、長い黒髪に、病的に白い肌。昔と変わってない??
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