未来のことを話そう
重音さん の心の声が聞こえるようになったアマノ。
ならば一度、現状を再確認し、これからのことを考えなければならない。
新章の風を感じさせるそんな第1章最終話。
in留置場 面会室
こうした形で会うことが、重音さん の死を、決定的付けるわけで……いい加減、現実を認めざるを得なくなる。
-<アマノン に会う前から死の淵で彷徨ってたよ。だから、責任なんて感じなくていいよ。 でもさ、そんなに泣いてくれるなんて思わなかったな。 私のためだよね……? ありがと>-
「ああーーくそ………生理現象だ……」
気恥ずかしくて、意地になって抵抗してしまう。でも、上手く言葉にならない。言いたいことが言えない。
「……すぐ、またお別れなのか……?」
-<今は安定してるよ。一年くらいは持つんじゃない?>-
「……」
当たり前だ。いつまでのその状態なんて、都合のいいことあえり得ない。
〈重音さん にこそ、誰よりも……謝r〉
-<いいのいいの。霊体の方が私には合ってるからさ。 むしろ、感謝してるくらいだよ>-
「そういう訳にはいかないだろ……」
-<ホントだよ? 肉体に未練なんてないし、いつ死ぬか分からないのは体が在っても変わらないよ~>-
「…………」
心の底からそう言っているように聞こえるが、気を遣っているようにも見える。
「だとしても、ごめん。 本当にごめん」
-<……>-
許して欲しくて謝るんじゃない。自己満で終わらせたくないから、これからも毎日、行動で
-<私が死ぬのは決まってたからさ。気にしないで>-
「……俺が余計なことしなければ、もっと長く生きれたはずだ」
-<人間、寿命があるんだよ? 私は……寿命が迫ってるのも、すごく感じてたよ>-
「あのs」
「…ごめん、お話し中だよね?」
メイアさん が壁越しに話に割り込む。
「あぁ、そうだが……帰らないとだよな」
「うん、帰ろうかな。 伝言役…やってもいいよ」
「……誰かいるか……?」
-<…まず悩むなら、家族とか、マサじぃ とか……? ヨウさん でもいいと思うよ~>-
〈……そうだな〉
メイアさん の雰囲気がいつも通りに戻った気がする。顔を見なくても声色で分かる。重音さん の配慮のおかげで泣き顔を晒さないで済んだ。
〈重音さん もいつも通りで……良かった…………〉
「……いや、考えたけど…いい。 すぐ出れる訳じゃないし、出る必要がない」
「分かった。 …留置場の人に、何か言ったがいい……?」
「…いらないよ。 何も」
「分かった。 またね」
「ああ……一つ…、聞かせてくれ。 なんでここまでしてくれたんだ?」
「…私は ジロウ と一緒で、アマノ君 も 重音さん も2人共……好きなんだよ。 …それだけ」
「……!」
メイアさん からそういう返事が来るとは想定しなかった。
「あと、私は大したことしてないよ。 ココロさん を頼まれてたしさ…声かけに来ただけ」
「……………」
〈重音さん、壁 消s…〉
ジャララッ…………
目の前にあった鎖の壁が消えていく。することは決まっていた。深すぎない程度に頭を下げる。
「ありがとう」
「…うん、全然いいよ」
2秒もしたら静止をやめるのだが、顔を上げると メイアさん が背負うソレに気付く。
「……ココロさん、どうかした……?」
「さあ? 重音さん が帰ってきて興奮したんじゃない?」
「ははは……」
ココロさん は冗談で怒った芝居をしたのは分かっている。が、全部が全部冗談ではないとも思う。だからこそ、刺さったのだが……。
「あっ、今、渡してもいい?」
「? ああ、ありがとう」
[思い出石] を受け取る。色々あったというのに、もう作れたらしい。
「じゃあ、またね」
「ああ……そっちも元気でな」
「アマノ君 こそね」
バタン…
メイアさん は ココロさん をおんぶしたまま行ってしまう。
バタ……
「お話は終わったみたいだね。戻ってもらおうか」
「はい」
入れ違いで入ってきた留置場の職員についていく。檻の中に戻る。ただ戻るのではない。先ほどまでとは、心身共に、絶対的に違う。
-<まずは食べないとね。痩せこけてるよ>-
〈徐々にな……すぐには食欲出ないさ〉
-<まぁ、そっか。 ねぇ、聞いてもいい? 今後のこと>-
〈今後の何をだ……〉
-<行動方針かな。 目標、目的だよ>-
〈……まず先に、事実確認からする。 自分視点では、マキ が魔法か何かで隠した 重音さん を間違えて傷付けた、だ。 その前後を教えてくれ〉
-<私が覚えてるのは……王宮に出た魔族倒したら偽物の アマノン が現れて、気付いた時にはあの地下室だったよ>-
〈そうか……もっと詳しく知りたい……。 その時の マキ の様子とか、気になったところ、なんでもいい。アイツ の真意が知りたい〉
-<……私の【心響連鎖】で心の声は聴いたよ>-
「本当かっ!」
-<うん、完全にじゃないけどね。 ……でも、私の口から全部言うのは無粋かなって思ってる>-
「…………」
正直、ハッキリと答えてほしかった。が、重音さん がそう言うんだ。意図がある。
質問を通して…確認するのはありかな……?
-<……アマノン はさ、マキ君 の真の目的はなんだと思う?>-
……マキ は…………
〈アイツ はおそらく、俺だけが戻ってくることを予見していた〉〈『魔女』や他の魔族との繋がりはあったと思う〉〈重音さん の探知スキルをかいくぐって、俺達の生活の裏であの状況を作りたがっていたのは間違いない〉〈目的……? なんで?〉
《オレ は世界を変える。お前 は傍で見ている権利がある》
〈アイツ は小さい頃から野心があった。ただ、どう考えても俺への執着がある〉〈あいつは何かを求めている……?〉〈俺が 重音さん を殺すように マキ は仕組んでいたのか……?〉〈スキルが成長するとでも思っているのか……?〉〈分からない〉
《……教えてくれたじゃないか。衝動なんて…クソの役にも立たないって》
辛うじて耳に残った言葉も、気が動転していて声色とか顔色とか、何も分からない。
「ゲホゲホッ…………!! ぅぇ…………!」
-<アマノン……>-
〈……気にしないでくれ〉
息を止めていたようだ。黒く塗り潰して、もう見ないように封印しかけた記憶だ。すぐには、いつも通りとはいかない。
-<質問はもういいよ。目的は、今分からなくてもいいからさ。 アマノン は自分自身と向き合って、感情に左右されないようにしないとね。 まぁ、私も感情的になって捕まっちゃったんだけどさw>-
「…………」
重音さん の言うことは的を得ていた。今回の結末は、俺のしょうもない激情で引き起こしてしまった。もっと暴力的じゃない解決法もあったはずなのに、それしか考えられなくなっていた。
やることをきちんと見据えよう
〈……当面の目標が決まったよ〉
-<聞かせてよ~>-
〈マキ を止める。野放しにはしてられないし、友達でもあったからな……俺がしないといけない〉
-<うん、手伝うね♪>-
〈そして、重音さん の寿命をできるだけ延ばす〉
-<あ、アマノン? いいよ、私のことは! だって、今こうしてるのも奇跡みたいなわけでs>-
〈俺はちゃんと償いたい〉
-<…………>-
重音さん の感情が伝わってくる。
嬉しいけど、しても意味ないことを悟っているからの虚無感
〈してみないと、現状の把握はできはしない。やって後悔することは〉
-<嬉しいけどっ! ……アマノンには やるべきこと があるんだよ。 どっちも追うなんて無理だよ……>-
感情に左右されないようにしないと。さっき言われたことだ。だが、間違った選択とは思わない。理性もそう判断している。
〈可能な限り、重音さん の現状を知ること。それはマイナスなことじゃないだろ?〉
-<……ほどほどにでいいからね。 気持ちだけで嬉しいよ>-
「…………」
嬉しい、と言われて思い出す。
感謝が言えてない
〈重音さん……あのさ〉
募り募った 重音さん への想いも、言葉にしないと伝わらない。だから、伝えようとした。
バコン!! パラパラパラ……!
「なっ……!!」
「うぉ!!??」「うがぁっ!!」「しめたチャンスだ!!」「きゃああああ!!」
唐突に壁が爆発する。人々の動揺が波紋のように広がろうとする次の瞬間。
パチン……!!!! ドサドサドサァ……!!
辺りは静まり返る。周りを見渡すと皆眠っている。
〈何が起こって……〉
-<……アマノン……知り合い……?>-
重音さん の言葉を理解するより先に、土煙の中から出てきた人影が目に入る。
「あ、いたいた。やっほ~~、アマノちゃん」
まじかよ……
見間違いじゃない。『夜の女王』ルナ だ。そういえば、2週間経つんだから、そろそろ急かせれてもおかしくはなかった。まさか、留置場の壁ぶち壊してくるとは思わなかった。
「これ……重罪になりませんか……?」
「私が根回ししてないと思うか?」
「……だとしても ヤバイっすねーー。 なんでやったんすか?」
「今日は大事な日なんだ。思い切りも大事ってね」
再会して確信した。姉貴 と 重音さん は似てるけど全然違う。
「…今日はどんな用ですか?」
「今から時間ある?」
「……要件に依ります」
「私の最初で最後の結婚旅行にちょっと付き合ってよ」
〈何を言ってるんだ……〉
「は…吐く……」
「……!!」
姉貴 が抱えるように持っていたのは メイアさん だった。
〈なぜか、体調悪そうだな……〉
状況がかなり複雑化している。正直、病み上がりみたいな状態で抱えられるキャパを超えている。
-<アマノン 頑張って! アレだったら、メイちゃん とかに頼るよ?>-
〈まだ、大丈夫……〉
重音さん を延命させる手段を探すには、国内で一番信頼できる情報屋『A』である 姉貴とメノさん を頼るのが最善と言えた。そして、無下にできない恩義が 姉貴ら にはある。
「……詳しく話し合いましょう」
「良い目になったね、アマノちゃん。 お話し、しようか」
覚悟を決めて、姉貴 と向き合う。これは再スタートだ。マキ と 重音さん、そして、自分の弱さ と……きちんと向き合えていなかった俺とは決別しないといけない。
~新情報まとめ~
・アマノの目標① マキの暴走抑止
・アマノの目標② 重音の延命
・『夜の女王』ルナから「ハネムーンに付き合って」と相談される
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