これは夢だ。あぁ 夢さ……。
~前回のあらすじ~
重音さん に過去の因縁を説明し、帰り道では メノ の悪戯を受けるも、一日が終わる。
今回は、散々振り回される アマノ の原点が分かる、夢のお話。
これは夢だ。明晰夢だ。
夢現の頭が思い描いた情景は、ぼんやりとしていたが何の夢かハッキリ分かる
俺 と マキ の出会った日。家に居場所を失って、道場では現実に打ちひしがれて、自分の無力感を表すような空模様だった。
「………」
あてもなく彷徨っていると、ハイソン にいた。治安が悪く、立ち入ってはいけないと言われた危険区域だ。
ニャーーー
猫の声が聞こえた。そちらに目を向けると、怪しげな下水道点検口があって、もしかしてと思って入ってみると、同じ学校の人間がいた。
「やぁ優等生、何しに来た?」
ハイソン で会う人物なんて正気とは思えない。こんな場所なら尚更だ。
「…こんにちは、不良くん。マンホールが開いてたから来たんだ」
〈明らかに使って無さそうだったし、怒られることはないだろ……〉
「そーかいそーかい。早いとこ引き返しな、すぐ戻れるさ。ココ の空気に合ってないぞ」
彼 がいう ココ は、今立っている 使われてない下水道管 というより、ハイソンを言ってそうだ。
〈…猫もいないし、去るべきだな…〉
「警告どうも」
「オレの親は、大外れだったから羨ましーよ」
「……そうかよ」
「死ね」
確かにアイツはそう言った。身の危険を感じて反射的に対応する。
ビチャーーン
「って…!!」
汚そうな水だまりに手を着く。服が泥に塗れる。
「なにすんっ!」
「うわぁあああ!!」
会って1分とせずに殴りかかられるとは思わなかった。
大して痛くなかった
「ああああああああぁ!!!」
「………」
抵抗せずに拳を浴びせ続けた。程なくして、彼は手を止め呼吸を荒くする。
「はぁ……はぁ……」
「………」
「……もういいか」
「……!!」
〈なんだよ…… その顔…〉
恐怖に怯えた顔をしていた。
これじゃあ、こっちが悪者みたいじゃないか
「……」
「うわぁああ!!」
また拳を出そうとしていたから、迎え撃つ。
【ブースト】 >〖エコーブースター〗<
シュォン! ビュォオオーーーーーパァァアン!!
猫だましをしてみた。アイツの目の前で勢いよく手を合わせ、魔法で音を大きくするように仕向けはしたが、この閉鎖空間のせいで想像以上に反響している。
ダン……
「……って…」
尻もちをつかせてしまう。
これ… 手を出したことになるのか…??
グレーゾーンだとは思いながらも、声をかける。
「……大丈夫か?」
「…今日はオレの負けだ!」
〈なんでそんな返しになるんだよ…〉
「……」
でも…
「…次なら勝てるって?」
「当たり前だ」
面白い
「やってみろ泣き虫」
「…次会う時が楽しみだな〜」
「…知ってるかもだけど、親が一段まで極めてる」
「…関係ねーよ。お前に勝てばいいだけだからな」
「…もちろん指南されたこともある」
「……どれくらい?」
「7年くらいかな…」
実際は父が変わってしまってから、大して口も聞いてない。
「タノしくなってきた〜〜」
「勝算あんのかよ……笑」
「なにも力だけが勝負じゃない」
「なにがある…?」
「あっ……有段者が暴力沙汰したら破門じゃね?」
「手は出してないだろ?」
「当たりそうだったが?」
「正当防衛じゃないか?」
「目に当たりそうで怖かったなー〜」
「無抵抗ってわけにもいかねーだろ」
「トラウマができた。セイイ をみせろ!」
「俺の方が言う権利あるだろ!」
「…ぶっははは」
「っふ…ははははは」
初めて対等な相手ができた。
おばあちゃん家の地下室によくいた。まるで特別な秘密基地みたいでワクワクしていた。ああやって気分がアガったのは、2人でその部屋を見つけたからでもある。一人じゃ持て余してしまうし、特別感は薄いと今は思う。
「お前、『勇者』が好きなのか?」
他愛ない話題の一つだ。でも、話の流れを鮮明に憶えている。
「…みんなそうだろ」
「お前の眼は、憧れだ って言ってるぜ」
「そんなんじゃないって…!」
そう強く否定したのは、恥ずかしかったからだ。成れもしないヒーローを憧れてるなんて自分でも分かっていても、誰かに言われると否定したくなる。
「いーや、そう思ってるね。 だが、オレはその上をいく!」
「…上ってなんだよ」
「主人公だよ!」
「……は?」
「あの『勇者』だって、伝説でしかない。今の世界はオレらのもんだ。そうだろ?」
「…なんか考えでもあんのか?」
「ない!」
「おい…」
「…脇役で人生終わるなんて嫌だろ」
そう言われて、何も返せなかった。
〈今なら分かる〉
アイツ はずっと認めて欲しかったんだ
俺 や おばあちゃん だけじゃなくて、もっともっと大勢に。身近過ぎる 俺ら からだけじゃ、ただの同情にしか聞こえないのも、すごく分かる。
本当に色々あった。下水道管をめぐった不毛な喧嘩も、成果のないガラクタ集めも、【集約】くらいしか効果がなかったバカげた修行も……俺らにはかけがえのない日常だった。
捨て猫を拾って育てたりもしたっけな……
一年満たない期間だったはずなのに、思い出が多過ぎる。
アイツ は、家族も居場所も失って……
《その名は捨てたんだ。今は『フーマ』で通してる》
名前すら捨てていた………
《オレはさ、世界の歴史に名を刻むくらい デカイことしたいんだよ》《あの『勇者』だって、伝説でしかない。今の世界はオレらのもんだ。そうだろ?》
バカげたことを隣で言っていた アイツ は………
《オレは、世界をひっくり返すの男になる》《オレを放置したら、世界は大混乱を引き起こし、ばあちゃんも危ない。 な? やるしかないだろ?》
変わってしまった
重音さん とも、ルナさん とも違う 危うさ を漂わせて、帰って来た。
もう簡単には会えないし、話せない
俺の夢は……
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