第6話 弁護士との面会
毎週木曜日に連載(?)していきます。
フィクションな部分もありますが、ノンフィクションな部分もあります。
正義とは何なのか。
一緒に考えてくれると嬉しいです。
時刻はもう午後10時半を過ぎていた。
留置所に着いたら、弁護士さんが11時に来るという話があった。
夜遅くでも弁護士との面会はできるということらしい。
とにかく弁護士さんに子ども食堂についてお願いしてみようと思った。
夜11時15分ぐらいに弁護士さんは到着した。
他の予定を蹴ってこちらへ来てくれたそうでありがたい。
兄の知り合いということで心強い味方になってくれそうである。
開口一番に「子ども食堂に来ていた子達がどうなったか教えて下さい!!」
と言った。
弁護士さんは、少し驚いた様子で、「すみません、よくわからないのですが・・・。」
と言った。
そこから、自分がやっていた子ども食堂についてや、そこの子ども達が飢え死にしてしまうかもしれないと心配していることを説明した。
「事情は分かりました。その子達の住所などわからないと色々と難しいことがありますが、児童相談所には早急に伝えるので、大丈夫とまでは言えませんが、とりあえず安心なさって下さい。」
と言ってくれた。
その後は、自分のことについての相談をした。
どのようにこれから過ごせばよいのか。
弁護士さんは、
「取り調べを受けて少しでも違和感を感じたら絶対にサインしないようにしてください。
そして、心を正常に保つのが大切だから、ちゃんと食べて寝るようにしてください。
検事や刑事は有罪にするのが仕事で、正義感などがあるわけではなく、
自分の描いたストーリーにあてはめようとしてきます。
絶対にそのような流れに乗ってはいけません。」
と伝えてくれた。
警察や検事など当たり前のように正義だと考えていたが、
いきなりそのようなことを言われて、さらに正義っていったいなんなのかがわからなくなった。
私が傷つけてしまった子の親は私に何を求めているのだろう。
刑務所に入ることを望んでいるのだろうか。
私が刑務所に入ったら私という存在を奪われた子ども食堂の子達は、
奪った人、つまり警察や検察の人を恨むだろう。
いや、すでに恨んでいるだろう。
その子ども達から見れば、私をいきなり連れて行った誘拐犯と同じわけだから。
もちろん自分のした事を棚に上げて言うつもりはない。
ただ、もし、それで死者が出てしまうことになったら・・・。
小さな犯罪や被害者が一人などの場合、もっと大きなことにつながったり、
多数の人の悲しい思いにつながるようなこと、
つまり逮捕や勾留などはしない方が良いのではないかなどと考えてしまう。
これは危険な考えかもしれないとも思う。
多少異なるが、貧しい一人の子を犠牲にしても大勢救えれば良いみたいな話に繋がる。
何が正しいか正しくないかなど、考えれば考えるほどわからなくなった。
しかし、結局自分ができることは何もない。
自分は無力である。
もどかしい思いを抱えたままでいるだけなのか。
とにかく早く私を出してくださいと弁護士さんにお願いすることしかできなかった。