第5話 裁判所
毎週木曜日に連載(?)していきます。
フィクションな部分もありますが、ノンフィクションな部分もあります。
正義とは何なのか。
一緒に考えてくれると嬉しいです。
その後もずっと待っていたが、裁判所に行くと言われて連れていかれた。
この裁判所は簡易裁判所で、検事から出された勾留についてどうするか決めるのだと説明された。
中に入ると、5畳ぐらいの小さな部屋に白髪混じりのおじいさんと助手のような人がいた。
おじいさんの方が裁判官のようだ。
座ってと促され、座る。
「検事に言ったことと、今の気持ちに何か変化はある?」と聞かれた。
数時間前の事なので、特に変化はない。
その事を告げると、次は、
「相手の家は知っている?」と聞かれた。
「謝りに行ったので、なんとなくはわかります。」と答えた。
「そうか。わかった。じゃあこれを書いて。」
そう言って渡してきたのは誓約書だった。
「私は被害者に会いに行き、証拠隠滅をはかりません。」
そんな内容だった。
当然そのような証拠隠滅をする気などないし、
第一話をしたところで何が証拠隠滅になるのかわからなかった。
ということで、サインをして、
「誓います。」
と伝えた。
すると、裁判官は、
「わかりました。検事の勾留請求は却下します。」と言った!!
これで勾留は終わるのか!!
良かった!!!
真っ先に思ったのは、子ども食堂の事である。
昨日逮捕されて、今日釈放ということになれば、
子ども達が食べることができない期間は二日間だけということになる。
それならもし万が一何も食べることができなかったとしても飢え死にすることもないだろう。
本当に良かった。。
しかし、裁判官はこう告げた。
「ただ、検事の方から準抗告というものが十中八九出ると思う。
そうすると、今度は3人の裁判官に判断されることになる。
だからこれで、出られると決定したわけではないんだよ。」と。
そんなシステムなのか。
それならばそういうものだと理解して、
結局待つしかないということだ。
また、検察の中の待っていた部屋に戻されてそこで待つことになった。
この待ち時間は非常に長かった・・・。
最初に一緒に来た人達もどんどんいなくなっていく。
隣の部屋などに入れられていた人もいなくなったなと気配で分かった。
つまり一人になったのだ。
さらに1時間以上は待っただろうか。
状況の説明をされた。
検事から準抗告というものが出されて、今その結論を待っている。
地方裁判所で結論を出すらしい。
地方裁判所には自分は行かないそうだ。
つまり、話をしてアピールするなどは全くできない。
ただ待つしかないのだ。
外の様子は詳しくわからないがもう暗くなっている。
とにかく何もしないで待つしかない。
そのうちに部屋を移動すると言われた。
いよいよ結論が出たのか。と思ったが、
本当にただ移動するだけで、待つだけというのも変わらなかった。
夜ごはんとして弁当が出た。
もうそんな時間になっているのだと改めて認識される。
弁当は昼食のパンよりはおいしかった。
弁当を食べてからさらに3時間は経っただろうか。
もうこの建物の鍵を閉めるので、車で待機することになると伝えられた。
もう3人の裁判官は集まったからそこまで時間はかからないと思う。
と警察官に教えられた。
この警察官は逮捕された警察署の警察官で、
もし勾留ならそのまま警察署へ車で連れていくという形だ。
釈放ならこの場に着替えなどすべて持ってきているから
ここで着替えてそのまま帰って良いということらしい。
警察官二人に挟まれて後部座席に座っている。
ここでもかなり長い時間待たされる。
警察官も疲れているようだ。
もうすぐだと思うけどな・・・。そんな言葉を10回以上は聞いた。
長い時間があるので、様々なことを質問してみる。
その中でわかったことは、なかなかこのようなことはないらしいということだ。
一人の警察官は初めての経験だと言う。
年に1度か2度かぐらいのことらしい。
釈放になればこの場で解放ということだが、
お金があるのでそのまま帰ることができるのは良かった。
すぐに家族と連絡を取りたいが、電話は押収されているのでどうすればいいか。
公衆電話など最近あるのだろうか。
など考えていた。
もちろん引き続き勾留されるということもある。
しかし、自分にできることは何もない。
神に祈るしかない。
ただ、神に祈っても結果は変わらないのだろうなとどこかで思っている自分もいた。
車の横に人が来た。
いよいよかと鼓動が早くなるのを感じる。
それは車内にずっといて空気が薄くなっていたからかもしれないが、
それだけではないのもわかっていた。
しかし、その人は門を閉めるから車を移動させてくれと言いに来ただけだった。
それでも胸の高なりや息苦しい感じはもう収まることはなかった。
そこからさらに一時間ぐらいだっただろうか。
また車の横に人が現れた。
さっき少し寝ているように見えた運転席の警察官が降りて話をしている。
これは本当にいよいよ結論が出たのだろう。
勾留か、釈放か・・・。
もし勾留されたら落ち込んでしまうために、絶対に釈放されるとは思わないでおいた。
どちらになっても心の準備はできている。
戻ってきた警察官はこう告げた。
「勾留状が出るみたいよ。」と。
何てことだ・・・。。。。!!
神への祈りが足りなかったのだろうか。。
本当なら解放されていたはずなのに!!
本当ならというのは正しくないかもしれない。
解放される可能性があったのは事実なので、
残念な思いが強い。。
ただ、涙などが溢れてくるということはなかった。
勾留の可能性も頭にあったからだ。
そして、じたばたしても変わらないということも理解していた。
しかし、頭の中にあるのは子ども食堂に来る子たちの顔だ。
これからどうなってしまうのだろう。
それは自分の事ではない。
子ども達が、だ。
十日間勾留されることが決まったので、
十日間もしかしたら飲まず食わずの子が出るかもしれない。
死んでしまう子がいたらどうなるのか?
どうしたらいいのか?
いったい何が正義なんだ?
自分の中で何度も何度も問いかけていた。