表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/80

第1章44話【天的才能】‐高すぎる障壁‐








 ズガァアアアァァン


 崩落した天井を湿った空気が包み込む。崩れ去った造り物は、暗闇となった地に濁流の様な粉塵を巻き起こす。

 都市の排水機構である空間に人工的で無い、光が差し込まれた。

 瓦礫の山となった頂上に映る影。その姿は、獲物を屠る捕食者ーー。


 蒼く特徴的なバンダナが左腕で靡き、粉塵は渦を描く様に散り……。

 鼻を慣らす様にクイッと顔を上げ、紅い灯籠が煙の中を逡巡する。



「ーーいた。」



 奴は人じゃ無い。ホンモノの化け物だ。ビケイムは思わずとも絶句する。

 ストベニーツァの背叛(はいはん)的アーテルに勝る可能性がある人物は、ルアン・ロネリー(紅冰露の英雄)以外にいるとは夢にも思わなかった。その背叛的アーテルこそが何十年かけて適応させたたった一件の成功例だと言うのに。



「なっ!?ストベニーツァは……。ーーこれだから天才は嫌いなんだ。」


「ヴァルエは、類い稀なる才能を持った天然的天才だよ。」



 ヘクタは彼女の事をそう評価する。戦略も無ければ知略も無い。

 それでも彼女が生存するには理由があった。それはアーテルのずば抜けた才能だ。元々ワーマナの最高戦力の1人でもある彼女だが、規則で単独行動は許されていなかった。

 その為、元来の力を出す事も成長する機会も無かったのだろう。


 目の前の猛獣(ヴァルエ)は、睨みつける様な瞳のままヘクタの方へ向き直り、喉を鳴らす。



「コイツは?」



 「誰?」とまで言葉を続けない。ヴァルエは聞かなかった。その必要が無いと感じたから。



「イミヤの敵だ。」


 ーーチッィ!



 その言葉を飲み込み、得意な行動をすぐ移した。



 鈍い音と共に暗闇に消える。

 今、僕は何をされたのか。

 頬を殴り飛ばされたビケイムは、考える余地は無かった。


 妙な浮遊感と共に感覚が鈍くなっている気がする。今自身がどの方向に向いているのか、どう飛んでいるかなんて気にする余裕は無く、只々飛んで、飛んで、回って、飛ばされてーーー。



 姿の見えなくなった(ビケイム)を横目に、ヘクタは深く息を吐く。不要となった二酸化炭素を体外へ排出し、過剰となった酸素を排除する為に。



「まさか、ヴァルエが此処に来るとは思わなかったよ。」


「チッ、逃げられた。」



 蒼炎を波の様に纏っていた彼女はそう言葉を発した後…霧散させた。チラリと此方を確認すると煩わしそうに、一声。



「……礼なら帰ってから沢山して貰うから。」



 ヴァルエらしいと言えばらしい。勝負事の結末は決まって御褒美(お酒)が用意されている必要がある様だ。



「分かったよ。ところでそのアーテルはどうしたんだ?」



 知らぬ間に大胆な地形破壊を行える様なっているヴァルエの蒼炎(アーテル)が疑問に思い声を掛けたが、どうやらお気に召さなかったらしい。あしらわれてしまった。



「私のアーテルなんてどうでもいーでしょ。ーーで?そっちは、どーゆー状況?」


「見た通り、端的に言うならアレカサンドゥリアの中枢を支配する敵を誘い込み、君が撤退させた。」


「ふーん。つまり、大元に黒星をつけれたってことね?ならさっさとイミヤちゃんのとこに帰るよ。」



 グッと前に身体を突き出し、ヘクタに向け人差し指で牽制する。もはやヘクタの身体を引き摺りそうな腱膜だ。

 それでもヘクタにはやるべき事、必要がある事をしなければならない。



「すまないが、まだやり残した事がある。サタブラッドの後片付けをしないければならない。」


「ーーこれは?」



 ヘクタの発言にまるで興味が無いように、と言うよりも興味が他に映ったのだろう。感覚が過敏な彼女が、流石に気付かない筈が無い。


 辺りを見回して不思議な感触に気づいた彼女。それは温かくも冷たい側面を持っている様で…。

 親指で差した殻にヴァルエはシンプルな疑問を呈した。


 彼女が知らないのは仕方ないだろう。何せ『ステラ』システムの存在ですら正しく理解できているか怪しい所ではある。



「ステラだよ。『ステラ』システムの中枢。」


「ふーん。思った以上に生き物みたいなんだね。もっと、こーなんて言うんだろ。機械みたいな感じだと思ってた。」


「あながち間違いでは無いな。部分的に今、現在でも電子部品を用いている様だ。」



 確かにイミヤの場所に向かいたくはあるが、忘れてはならない重要な事がある。それは言わずもがな。


 ミスリアとヴァルエの活躍によって問題の一つであるアレカサンドゥリアの実質的な隷国化は防ぐ事ができる。そして、サタブラッドの援軍は、『ステラ』システムの問題を解決すれば脅威では無くなるだろう。

 ただでさへ通信環境の構築が空気中のアーテルによって阻害されているにも関わらず、正確にこちらに向かって来ている事を考慮すれば自然と導き出される答えがある。

 サタブラッドの機械部隊は『ステラ』システムの残滓を介して行動を制御、位置情報の確認を行っている。

 こちらからの信号を途絶えさせれば、良くて遭難。最悪到着するまでの時間稼ぎにはなる。

 だから、一歩、二歩、歩みを進め、殻の様な繭を目の前にして……。



「ーー後はステラ、君だけだ。」



 その言葉をヴァルエは、適度な距離を保ちながら、じぃーと覗き見るだけだった。

イミヤ

▶︎ボイス:01

「あっ!ヘクタぁ。ここに居ましたか。探したんですよ、執務室にいらっしゃらなかったみたいで……。えぇと、、そうですね。ヴァルエさんの武器の事で少し助言を頂けないかなと。色々と試したのですが、その殆どが破損してしまって……。元々ヴァルエさんは長い棒状の物を利用して戦闘を行っていたんです。はい。ですから最近ではブレードを使ってもらっていたのですが、ヘクタも見ていましたよね?それもこの間折れてしまって……。ーーいえ、心配ではありません。彼女のアーテルとブレードの相性は重々承知しているつもりではあるんですけれど…、何か引っかかりを覚えるので…。ーー何も武器である必要がない?んんーー。難しいですね……。もう少しヴァルエさんとと話し合ってみます。」


 Autiful武具身体的影響及び開発記録一部会話抜粋

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ