第1章19話【即席強請】-有り合わせ-
あ、ごめん前回の続きじゃないね。イミヤ達はまた来週とのことで……
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「それでどうするんだ?ヘクタ。」
「アレカサンドゥリアのネットワークに乗り込む。それしか道はない。」
「成る程な。アレカサンドゥリアの心臓部に侵入して奴らの手足とその他諸々の行動パターンを遅延させると。」
「上手くいけば、今後2度と動作しない。…が、今は3日持たせるだけで良い。大した時間も取らない。恐らく1日あれば事足りる。」
「作戦はわかったんだけど……。ネット空間に乗り込むってって、さぁ。生身でってこと?そんな大層な機材こんなとこにはないよぉ。」
「作れば良い。」
「作るぅ!?!?ーーできたとしても、精神的危険が大きいって。現実世界に帰って来れなくなるかもだよ?」
黙り込んだままだったグラナダは、暫し時間を持たせた後で、口を開いた。
「事例は数少ないが…。できなくはない、か…。」
「私こんな所で廃人形なんてみたくな〜い。」
ミスリアの言いたい事は分かる。意識が完全に深層ネットワークに持っていかれれば、魂の抜けた死骸ともいえない人形に成り下がる可能性があった。
到底一般人には理解できない現象でもある。
「……グラナダ。旧式の小型通信端末と浴槽、冷蔵庫でも良い、それとSwimProゴーグルを用意できるか?」
「そんな簡単に言ってくれるけどなぁ。ーー家庭用で良いのか?」
「十分だ。機器の調整はこっちで全部やる。異常検知と予測外の出来事を観測報告をしてくれれば良い。もしもがあっても強制的にパージしてくれ。」
「脳が焼き切れるぞ?」
「問題ない。」
「焼き切れたらダメじゃん。他の方法ないの?」
「……ない。その為のアーテルだ。」
「はぁ。だったら3分以内に帰ってきて。」
「それは難しい約束だな。」
「それでも。待ってる人もいるんだから。」
願うように言う彼女。ミスリアの瞳には灯る何かがあった気がした。
その願望を、本心を、言葉として伝えられたなら。
「ーー分かっているだろうが、強大なデータ空間は潜れば潜るほど意識を元に戻せなくなる。向こうも残滓を引き止めようとするかららしい。それも長時間となると残滓が馴染み始め融合する。『人類の発展と貢献』128ページの引用だ。警告はした。」
「危険性は十分に理解してるさ。」
目の前で見てきた。少年少女が目の前で安らかに眠る様を。身に染みて理解している。
「じゃあグラナダ。頼んだぞ。こっちはこっちで今あるもので準備する。」
「…あいよ。」
そう言って扉越しに消えていった。その歩く様は頼りになる老兵のような雰囲気を醸し出していた。
「ねぇ。ーーねぇってば。」
「どうした?今は構ってる暇はないのが見て分からないか?」
「そんなの見りゃ分かるって
『なら……』
口は動かせるでしょ。」
自分勝手に話を進めるミスリアに少し息を飲んだが、それだけだった。
かなり集中力を要するゴーグルの基盤部分の改造作業を進める。一つでも間違えば、意識障害が発生し、混濁して帰ってくることになるだろう。
簡単に言えば回路のように意識がぐちゃぐちゃになると言うことだ。
そんなヘクタを他所にツラツラと話し始める。
「私ね〜。ヘクタ達と会ってようやく決心がついたんだよ?まぁ、ヘクタ達がこなかったとしても、私はここにくるしか無かったんだけどね。多分これが命のやり取りなんだね、そして、人を動かす。その使命と重圧。多分私に足りてなかったのは経験と知識だったんだと思うんだ〜。」
「その小さな身体ですべて抑えられると?」
「できるできないじゃないと思うんだ〜。もう、やるしか残ってないんだよ。もうすこーしだけ、アレカサンドゥリアの日々に、日常に浸っていたかっまてのはあるけど……もう遅いっ!全部ぜーんぶ、私が選んだ道。だからグラナダにも言った。ケリを付けるって。」
「それでグラナダは?」
「黙って私をこずいたんだよ?ありえないよね?」
「そんな軽口を言ってる様なら大丈夫そうだな。」
「だいじょーぶじゃないのは貴方だと思うけどね。」
はぁと手を挙げてやれやれと言った様に肩を下ろすミスリア。その身体は少し身軽そうで…。
「ーー持ってきたぞ。これでできるんだな?」
「あぁ、任せろ。」
その時全ての材料が揃った。
ーー組むこと実に数時間。試作機と過去を連想させるような代物が組み上がる。
基本構想は頭蓋部分にのみ集中しており、それ以外は特にない。ゴーグルを頭部に嵌めれば基本的は大丈夫な作りにした。
そのゴーグルからは管が伸び、その先には冷蔵庫があり、そこで、処理と冷却を補う。
排熱はペルツェ液体を採用し、管を通り、エネルギーの無駄なく、機能を回し続ける。これにより少量の電力だけでも動作を実現させた。小型通信端末をアンテナ替わりにし、システム内へと侵入する。
あとは身を委ねて脳を、意識を入れるだけである。
ゴーグルを手にかけ、眺める。こんな物で本当に解決するのかと。イミヤ達、延いてはミスリアの助けになるのかと。ただの思い付き過ぎない。夢見る幻想だ。
ーーだが、やるしかない。多少のリスクは常に付き纏う。地に立ち、息を吐き、瞼を開き、生きているだけでも。
「行ってらっしゃい。」
その言葉一つにどれ程の重みを持ち得ているのか。
「あぁ。またな。」
装置の駆動音が頭蓋に響き渡る。ピクリと動く人差し指。感覚を足から撫でるように上昇させられ、ゾワッとした感覚が隈なく全身を巡り乱す。
そんな感覚ですら過去のことのようにーー
SwimPro 要するに家庭用ゲーム機のmmoゴーグルのような物だよ。意識潜らせる系のさ。この場合さらに進化したサングラス型見たいに小型化したやつだけどね。




