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第1章15話【擬似選択】-示して-




 錆びて廃れた町。と言うのがD地区の第一印象でした。確かに都市部に比べたら彼方此方で老朽化や建物自体の損傷(戦闘痕)などが多く見られます。


 だとしても生活水準は高い。なら何故あれ程にグラナダさんは警戒していたんでしょうか。



 その答えは…、求める前に行動で導き出された。



「ーー頼むから帰ってくれぇっ、



 乱雑に、けれど慎重に扉は閉められる。



    ……これならまだパレットの方がマシだ。」



 その瞳は未知なるものへの恐怖と、異物への拒絶心からくる本物の出来事。非日常への嫌悪の刷り込み。




「リーダー。駄目。ここも。」




 名の知れない住民は手助けを覚える事知らず、孤立した町そのものは、個としての誇りを讃えると。

 変化に怯え、動揺を隠せない彼らは流動に身を任せられずにいた。



「次に行きましょう。」



 娯楽など無く、ただ質素な町。

 そう、ただの1()()()に過ぎないのに。血の気が引くような寒さを覚える。



「……なぜD地区にしたのか聞かないんですか。」



 私はあの場所から逃避していた。ヴァルエさんが守ろうとした形を。いとも簡単に崩してまで。咄嗟の判断だった。あのまま私があの場所にいたら、正気を保てなかったかもしれない。国の権力に堕ちる様を見届ける、私にはその覚悟を持ち得ていなかった。

 ワーマナの戦略部責任者としての私、個としての私。どちらが本当の私か。どちらを優先すべきだったのか。


 そして、インディゴの答えは…



「ーーリーダーの意見を尊重する。」



 そう言われてしまってはイミヤも弱かった。

 たった一言。リーダーという肩書きの大きさ。重積。その意味を深く噛み締める。



「……次は………。いや、もういい。」



 澄ました顔のまま私の瞳を覗き()る。

 私はその瞳が何故だか恐ろしくて目を逸らしてしまった。


 期待には応えられない恐怖と不安。一歩先も怪しいこの状況。既にまともな判断など出来ようなかった。



「ーーこの際、断言する。私情を持ちこむべきじゃない。」



「持ち込んでるつもりは…。」



 静かに首を振るインディゴ。彼女は分かってないと言ったように諭す。



「なら、どうしてヘクタと合流しない?」


「それは……。それこそ私情じゃないですか。確かに私はいち早くヘクタとこの街を抜けてワーマナに帰りたいです。けれど、それではダメなんですよ。私はヘクタを頼ったら。私は……。」



 静かな怒りと確かな焦燥に憚られる中、言葉にする。

 歯を食いしばるように顔を歪め、低い声ではっきりと。



「ーー私を許せない。」



 私はヘクタに頼られる存在になりたい。なりたかった。あの日からずっと、暖かい背中の中で、そう願っていた。


 けれどそんなことは言えない。願ってはならない。



「……そう。」



 ただ一言だけ。




『何も分かってない。』


 小さくそう聞こえた気がした。 

 押し黙る。言葉を発したく無い。もう嫌だ。何もかも過ぎ去ってしまえば良いのに。



 ふぅと息を吐くインディゴ。その瞳に灯る光は僅かに黒く揺らいでいて…。



「いつものリーダーならヘクタと合流して、ミスリアを捜索、ヴァルエの回収全て道筋を立てる。……それとも私がやった方が良い?」




 ヘクタと合流してはいけない。どうしてそう心内(こころうち)に決め付けていたのだろうか。頼りするしない以前の話。合理的な判断。


 導かれる(まま)、彼の元へ向かえば良い。しかし、3日後のプレースト州知事との謁見に支障をきたす訳にはいかない。だから…。



「…いえ。もう大丈夫です。探しに行きましょう。」


「誰を?」


「ミスリアさんを。」


「分かった。」




 会話はそれだけで十分だった。

要するにヘクタとの約束を守ったって事だね。

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