第1章13話【街灯拒絶】-望まれない-
「ーー気難しそうなお方ですね。」
「あはは、素はそうでもないんだけどねぇ。」
あの後グラナダは何も言わずにその場を去った。
ーー分かってる。インディゴさん。そんな目で見なくても。
今回は私の決別、いや、宣告のための機会。独りは怖かったから。
甘えたかった。他人でも良いから…昔のように。
ふぅと息を落ち着かせる。願うように胸に手を当て。
「ごめんね。こっちの都合で付き合わせちゃって。」
振り返った彼女「ごめ」っと片手を上げ片目を瞑る。
「みんな触れない感じだったのにミスリーは触れるんだ。」
「ミスリー?」
「んー?今思いついただけ。そもそも隠れたってのも隣の立派なホテルにって訳だし。」
「今の私達にとってこちらの方が都合が良いかも知れませんね。5階程度なら移動もスムーズにいきます。」
「憂慮すべきは、脱出経路が限定されること。」
「まっ難しい話は後にして、この街見て回ろうよ。観光観光〜。」
荷物をばさっとその場に散らかし、肩の荷を下ろす。それに倣うように各々も荷物を置き始めた。
んーと毛を伸ばすように背伸びしプルプルと体を震わせる。
「それで〜?私はもう行くけどイミヤちゃんたちはどするの?」
無口のまま、その言葉に寄るインディゴ。彼女も行くようだ。
それを見たヴァルエはグルッと頭を回し他にはと言ったように見回す。
「なら、私もご一緒します。」
「ミスリーはどーするの?」
「私は…いーかな。グラナダと話をしたいし、遠慮しとくよ。3人で楽しんできて。」
「そーお?じゃ行こっか。」
イミヤとインディゴの手を引き先導する。為されるがまま、拒む事なく姉妹のように引き連られ…。
チンッと懐かしくも古ぼけた音が、開く扉と共に辺りに反響した。
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「店長ぉー!ちょーっち、出かけてくるね〜」
能天気な声が白く薄暗い店内に響き渡る。
「好きにしろ。」
そんな声を出さなくても分かると言ったように遇らう。彼の先程とは違う雰囲気は微かに鼻腔をくぐり抜けた。そんな時だ、呼ばれたのは。
「…………おい、ミスリアの連れ。」
「それって私たちのこと?」
「D地区には近づき過ぎるなよ。警告はしたからな。」
説明する義理も無い、もう行けと言わんばかりに顎をクイっと外へ向ける。そんな彼を見た時、ミスリアの言っていた事が少し理解出来た気がした。
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暖を感じる風。乾き重い空気。
日常は、ーー送れない送らせない。
「はい。止まってねぇ。」
聞き覚えのない声。勧誘ではないことは、ただの人間ではないことが、一瞬にして感じとれる。
「……貴方方は…誰ですか?」
落ち着いた様子で問うイミヤ。わかっていた。長閑な日常など疾うに失われていることを。娯楽など存在を許されず、愛し合った家族さえも許されない。
「私は…独立捜査官ストベニーツァ。そして私たちは、簡単に言うのなら、ーーこの町の、いえ、この国の警察。」
「その警察が、私たちに何の用ですか?」
「あなた以外に用はないわ。そうあなた。綺麗で不純な赤毛のお姉さん?」
その言葉でその視線で誰に向けてかが理解させられた。
「ふーん。で?何?何の用?私達も暇じゃないんだよね。さっさと答えて欲しいんだけど。」
耳と尾を立て慎重に相手を見定める。次こそはミスをしないために。間違った選択を取らないように。
「残念ながらあなたの予定はこれからすべーて無くなるわ。ーー本名不詳、出身不明。だから、GMのネームを借りるわ。ヴァルエ。あなたを殺人及び、器物損壊で逮捕するわ。痛い目に遭いたくなかったら、さっさと投降しなさい?その方が穏便に済むから。」
逮捕。もうすでに聞き馴染みのない言葉に、廃れたそれに、どのような意味をもたらすのか。ヴァルエは理解はできないが、本能で感じた。ーー遅すぎた。
「ちょっと待ってください。戦時的行動はこの国では認められている筈です。ヴァルエさんが平時に何をしたっていうんですか。」
「誰に教わったのか知らないけれど。都会っ子ちゃんにはわからなかったのかしら?暗黙の了解が、安念が解かれた。ただそれだけの事。悪かったわね。今のこの国にはそんな余裕もうどこにも残ってないの。証拠も揃ってる。逃れるのは不可能よ。」
どぉっぉぉllっぉおんん
紅き焔風がこの地で解かれる。赤黒い煙は辺りを消化しているようで……。
「イミヤちゃん達は手を出さないで!!これは私が片付ける。私の問題だから。」
「ですが……!」
「リーダー。」
イミヤの手を掴み首を振るインディゴ。その様子を見たヴァルエ、彼女は軽く微笑み…燃え滾る焔を添えて輝く。
「ッチ!!!」
「はぁ。そんなことしたって無駄よ?まぁいいわ。暇だったし丁度良い。抵抗できるならしてみるといいわ。全力で、ね?」
望まれない。




