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第1章4話【風化残物】-見せかけの器-



 止まない寒色の声。風が吹く音。夜の寒さが私を包む事。そんな感覚はあの日以来、当に失われていた。


 痛い苦しいなんで感覚。忘れていたかった。


 人であるならばごく自然なこと。


 私は逃げたかった。ただそれだけの為に、中途半端なこの国にいたのに……。


 平和な安然が私を添わず、惨劇が私を逃すことを許さない。

 これがアーテルを持つ者達の運命(じょう)とするならば……私は…。








↓↓↓








「これは…、町ですか?」



 それは5日程進んでからの出来事だった。MAPによると付近に小さな町があるとの事で立ち寄ることにしたヘクタ達。しかしそこに残っていたのは……。



 黒く変色した壁片。(かたち)()していない家々。崩れ落ちる巨塔。


 炭化したであろう痕。


 何があったかは一目で分かった。



「まだ臭いが強い。かなり最近此処らで紛争があったらしいな。」


「ーー私たちが向かっているのは中立区のはずですよね?なのに、どうして……。」



 苦い風が身体を通り抜け、僅かに顔を顰める。炭素と腐敗した血肉が混じっているようで…鼻をツンと刺激する。



「地域が中立区と言ったって、(おも)ならない場所ではこんなもんだ。ただの見せかけだよ。結局はどんな場所で、どんな環境であろうと自衛できなければ生きられない。」



 端的な言葉に眉を顰める彼女は、



「なぜそう淡々と…。ーーいえ、私もですね。こんな状況でもまだ、大丈夫。まだマシの方だと思ってしまう。」


「………これから始まる事を考えると序の口でも無いからな。」


「これから…?」


「そうだろ?こんな膠着状態いつまでも続くわけがない。現にこの場所も地図から消え去った。積み重なった歴もいずれは崩れ去る。あとに残るは常に無機物だけ。」


「…歴史の話なら興味がある。あなたの視点は好み。ーーけどそうとも限らない。」



 そう言いきったインディゴは、顎をクイっとさせる。

 自然と視線を向けると、焼け焦げた壁から伸びる複雑な影があった。


 その形は自然とできるわけではなく…。

 


「誰かいるなら出てきなよ〜。」



 いつの間にか戻ってきていたヴァルエが能天気に耳をぴょこぴょこさせながら問う。



「私達はGHMの職員です。悪いようにはしないしないと誓います。」



 続きイミヤがそう声をかけると……。


 風が鳴り、風土が舞う。静かさを取り戻しつつあるその場所は応えることなく在り続ける。



「何も出て来ないよ?」



 そう声を発しながらジリジリと位置を変えるヴァルエ。それに続くように、イミヤは手を前に出し構えた。


 インディゴはコクリと頷き、洋芎に手をかけた。構えられた弓を確かめるように、指を順に馴染ませる。




「出てこないなら仕方ない…よね?」



 飛び掛かるようにヴァルエは跳躍し、手を広げる。久々に体を鳴らせるかもしれない。その表情は嬉々としていた。


 獲物は逃すまいとその壁に向かって滑り込むように突き進む。


 顔を上げた。


 その瞳に映ったのは……。



 薄灰色を纏った包丁!?


 振り下ろされ…そのアーテルから逃れる為に顔をのけぞらせ、眼前スレスレに回避する。

 全身の毛が逆立つような感覚を覚え、冷や汗が流れる。


 勢いまま体を仰け反らせ、手で隠し用意していた紅いアーテルをそのまま放った。



 あまりの対応の早さに、奴は反応できなかったのか、直撃。

 抵抗すること無く、そのまま焼き焦げた家屋に吹き飛ばされていった。



「ヴァルエさん大丈夫ですか!?」



 駆け寄ってくるイミヤちゃんに微笑みつつ、私はもう二度と獲物は見逃さない。



「だいじょーぶ。だいじょーぶ。ちょっち危なかったけど何とかなったよ?」


「それは大丈夫とは言わないです!勝手に飛び出して行かないでください!」


「ごめんごめん。悪かったって。そんなに怒んないでよ。ーーそれよりも…。敵を確認しないと、ね?」



 さらに崩れる家屋に向かう。


 一瞬だが目に映った。少女のような影。私にはまだ幼い子供のように見えたが、恐らく違う。


 目を向けたその先に見えたカタチは………。

毎週投稿の為意地で投稿したけれど、普通に体調がまだ良くないので来週投稿出来るかわかりません。頭痛早く治ってくれ

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