第1章2話【表層表現】-改めまして-
陽が滲み、見ているだけでも熱が籠る。砂漠地帯の温度を舐めてはいけない。まぁ、今となってはこの地域の殆どが砂漠。そんな訳で危険性などとうに知れてる訳だが。
「そーいえば、聞くの忘れてたんだけど、なんで私達と初めて出会した時、身分証確認しなかったの?」
イミヤらと話をしていたであろうに、突拍子も無くそんな話題を振ってくる。インディゴが顔を顰めていた訳を何となく察することはできるが、答えても特に困るような事でもないから取り敢えず応じることにした。
「何故相手の懐に潜り込まなければいけないんだ?身分証なんて、あの状況でなんの確認にもならない。ましてや人の目で。そもそも、お前達は極秘任務の最中だろ?」
「んー…。まぁそれもそうか。それから自己紹介ってしたんだっけ。」
壁に凭れ掛かり、そっけない態度で顎に人差し指を押し当てた。
「確かに一切していませんでしたね。私とヘクタは以前から面識がありましたけど。……でも今は彼女もいますし、」
そう言って視線が、車体の隅で力なく垂れるように流れ、目が朧気な少女に向きかけ……
「じゃぁー私から。私はヴァルエ。身体を動かすことが好きだよっ身体勝負なら何でも受け立つよ。もちろんチップはお酒。宜しくねっ。」
元気良く手を挙げ、それこそ全員に伝わるよう高らかに宣言する。尖る朱色の耳はぴこぴこと回るように揺れる。彼女の尾は対称的で数回横揺れがあったかどうか…。
そしてどこから持ってきたのか左手には酒瓶が2本。指に挟んで分かるようにカラカラと鳴らす。
イミヤの物思いを遮るように始まった端的な礼。それに続くように…。
「インディゴ。」
………。本名ではなく、ワーマナで決めたであろうフィリングネームであろうが、それ以上何を言うことはなく、ただ端的に言った。
光に照らされた白髪は銀を連想させるかのように輝き、インディゴと名乗った少女は耳元の髪を少し掻き上げだ。
まだ続きがあるように、車内は静まるが…
「インディゴちゃんそれだけ?もうちょっとなんかあるんじゃないの?」
「インディゴ。ClassはⅠ。」
「はぁ。仕方ないか。次はイミヤちゃん。」
インディゴは呆れるヴァルエに翼を竦めた。
何やら知らない単語が聞こえたが、今話を遮るとヴァルエに何されるかわかったものじゃない。
取り敢えず大人しく話が終わるのを待つことにする。
そんなこんなで自分の番が回ってきた事を知った小さき少女は……
「私は…、ワーマナ戦略部戦略課指揮作戦立案責任者イミヤです。ワーマナでは主に作戦指揮及び、作戦補佐、それから……後は雑務ですね。それぞれ担当していました。今回の任務の様に現場に駆り出されることも屡々あるのですが…。近年不思議と仕事が増えているんですよね……。」
何故だろうイミヤの目が据わっている。ハイライトは消え、まだ夜が迎えに来る時でもないのにも関わらず空気が冷たい。
「で、最後は…」
そう言って間を持たせる。何かを待ち構えるように。
「ヘクタだ。ワーマナでは元々戦略部にいた。まさか、部署内で分けられるようになったとは。初めて知ったよ。」
「それでそれで〜?クラスはどんくらいなの?」
「クラス?」
気になっていた話題が上がった。いや、挙げられたので大人しく聞き返した。
「知らないの?」
キョトンと目をぱちぱちさせている。
何の意図もなくただ純粋に知りたかっただけらしい。だとすれば、直感が冴えすぎている…。
「Class制度はですね……半年くらい前に実装されました。それぞれの役割を明確化する為と言う名目で立ち上がったそうです。現在はClass Ⅴ〜Class Ⅰまでカテゴライズされてまして…。」
「そう、わたしとー、イミヤちゃんと、インディゴちゃんはクラスワンでぇー」
「今回の任務を任された訳か。」
「そゆことー。」
ヘクタの方へ足を大きく広げ、右側面から指差し、賛同した。
と言うことはワーマナの有力な戦力の内、一部分を大々的に投入したわけだ。それだけの人員を動かしたとすれば、サタブラッドに悟られてもおかしくはない…か。
そして、それを指揮したのは恐らくイミヤなのだろう。認可したヤツも奴だが……。
イミヤは昔からサタブラッドの事を危惧していた。そこに違法アーテル結晶の報告と来れば食い付かない訳が無いだろう。
罠と分かっていたとしても渦中に飛び込み場を乱す。彼女らしいと言えばそれまでだが….
強襲されたのも納得だ。
仲間と言うものが足枷になる事を彼女はまだ知らない。敵味方と白黒つけることができるほど、GHMとサタブラッドの対立、いや、戦争は甘くない。
もう既にその盤面まで進んでしまった。ゲームを0からやり直す事と3からやり直す事では手間が大きく違ってくる。
当然内通者も常に存在し、GHM乃至ワーマナのことを全て仲間だと思っているイミヤには厳しいかもしれない。
だが、あえて言うならば…杜撰だ。あまりにも。
しかし、それを告げる事はない。彼女も分かっているはずだ、最後まで責任を持ってこの任を終わらせる。その覚悟を持っていたからこそ彼女は、……アンを保護したのだろうから。
「それで、Classの選考基準は?」
「…アーテルの総量。」
これまで無口だったインディゴが口を挟み、イミヤがそれに準ずるように頷いた。
その答えに対し、当然ながらある疑問が生まれる。
果たしてそれは“平等”なのか?そして、適切に測る事ができるのか?疑問に思わずにはいられない。
「……アーテルによって大きく左右するClass…意味はあるのか?基準はどうなっているんだ?」
「総量と言っても計測装置なんて存在しない。だからアーテルの有用性と、これまでの成果によって大きく変わる。」
より正確な情報を示す為に彼女が答えてくれたとすれば、インディゴは恐らく人事関連の仕事も行っているのだろう。
正しい情報が知りたかった今。ある意味有り難く同時に恐ろしくもあった。
「提案者はアバンストとノスタルの共同提案です。私たちワーマナには一切知らされておらず、突然の出来事でした。艦長は特に何も言う事なく承認。私も出席していましたが…、艦長に止められて発言はできなかったです。」
「アバンストか…。」
アバンストは一応GHMではあるが、個々が群れを成して存在する。だからこそ対立も当然のように多数発生する。そこにノスタルが加わったとなると……。
にしても、Classについては聞き及んでいたが、その経緯の詳細まではノイズが混濁し、分からなかった。だが、これではっきりした。
「何かあるんですか??」
「いや、今はまだ大丈夫だろう。気にすることはない。」
「……ヘクタがそう言うならそうしますけれど。助けが必要でしたら、仰ってくださいね?」
あぁと端的に返事をすると、イミヤは微笑んだ。
→→→
淡く青く染まる瞳は真実を映すことを期待した。
しかし、視る事はできない。
それは当人の心の深さを測らなければいけないから。
頭痛がする。
何が起ころうと……
最初の顔を顰めるってことは、要するにどっちの意味でも、『こいつマジかよ』って事だね
、べ、別に獣人(狐族)に耳と尻尾が付いてるって事忘れてた訳じゃないんだからねっ!
(後で0章修正しなきゃじゃん)
あ、アバンストと、ノスタルはまた機会があれば詳しく説明されるので、その時までお待ちを




