第0章25話【堅術持久】-舞う狂人・そして終局へ-
作戦会議時にノウンのアーテルについて触れていないのはよくよく考えるとおかしいので、触れる様に修正しました。
ヘクタが身を潜めるコンクリート裏にイミヤが上から手を挙げ、スッと降りてくる。静かに着地した彼女は私を見るなり一言。
「ーー水ですか?」
「あぁ。そうだ。『ヴァルエは聞き流すだけで良い。そっちに集中しろ。』」
「言われなくてもっ!!」
ヴァルエを追う様に、もう数すら数え切れないほどの爆煙が散る。正確には彼女の身体能力が桁外れに優れているだけで、遅れて見えるだけなのだが、それは良い。
「でも、おかしいです。水が四散することは、無いはずです。それもこれほどのエネルギーを得て。爆発ならヴァルエさんと同じ様に熱や、火など可能性が高いはずです。それをどうして水だと?」
壁裏から隙を見てノウンを狙う片手間にイミヤは真剣に問う。
当然の疑問だ。ノウンが水を操るアーテルとは誰しもが思わないだろう。それだけ彼女が卓越していると言うことでもある。
「アーテルにはそれぞれ特徴がある。爆発を起こすにはそもそも限られた手段しか取り得ない。最も分かりやすいのは、イミヤの指摘通り火だ。火を圧縮し、空気そのものを膨張させ爆発を起こさせる。けれど、ノウン。彼女の爆発には炎特有の爆炎が見えない。あまりにも白過ぎる。この特徴に当てはまるのは水だ。水も圧すれば、火炎と同じように、いや、使用者によってはそれ以上の威力を得ることができる。」
「それだけで水だと?」
「インディゴは気付いただろう?確信を持ったのは、奴が放った細い光線。あれは熱によるものでは無い。水圧だ。水圧で物体を切ることができるのは知っているだろう。その証拠に…このコートに砂漠では有り得ない水滴が付着している。」
響き渡る爆音が、呼応し、激しく震える。本物は私であると主張する様に。
「ーーふーん。でぇ?タネが割れたからって何が変わるの?このまま続けてもこの子殺しちゃうよ?」
ヴァルエを相手取りながら会話も参加する。余程余裕があるのだろう。彼女の手は緩むことなく、既に限界であろうヴァルエを追撃し続ける。
右へ左へ。はたまた空か。
汗が飛び散り、それすらも奴の糧となる。傷口は暫くせずとも開き、血が霧散する。
「あははははっ!またまだいけるようねっ!!良いわ。付き合ってあげる!!」
しかし、ノウンのアーテルを水だと確定させたとして考えると不思議な点がいくつもある。
仮に奴が水を放出して、爆発させているにはこの速度が出ない。だとすれば、どこからか取り入れている事となる。
恐らくだが空気中の水分とアーテルを上手く利用しているのだろう。だから速度と威力が保障されている。しかし、ここは気候の薄い砂漠地帯。本来なら彼女が不利になるはずなのだ。
それを物ともしない彼女は確かに六大器と呼ばれる能力を持ち得ているのだろう。
「あぁ。そうだ。だからこそ此方も手を尽くせる。」
血み泥に溢れたヴァルエ。脚部は血による筋が浮かび上がり、夕日に照らされ削り傷が露見する。
それでも、彼女の朱色に燃える目は、炭化することはなく火を失っていなかった。
機会を窺い敵を屠る獣の様に。
爆煙が減り、水圧による複数からの狙い撃ちがヴァルエを襲い、その光の筋は、彼女のみならず、イミヤや、インディゴにも飛散する。
彼女の権威を、水大な能力を示す様で…。
しかし、始まりが終わりを告げる様に。
ヘクタは、終局の道筋を決定する。
ノウンに向けられた銃口。
四散する眩しく白くとも暗く黒きとも見えるアーテル。混ざるに混ざることのなく相容れない反した二つの色が、纏う。
「これがヘクタのアーテル……。」
「銃弾にアーテルを乗せる?そんなのって……ありえない。。」
パぁンッッ!!!スしゅぅぅぅ!!!!!
放たれた銃弾は静かに目標を定めていた。
ノウンは悟った。いや、誰にでもわかるだろう。あのアーテルには当たってはいけないと。
冷えた空気を肌で感じ、世界が延び、遅く感じさせる。
回避行動は、取れない。本能で感じた。だから……短剣にこれまでにない彼女の彗星の如く輝きを乗せ受けきっt…ee......
「こ…っれは、まさか…。」
自身の砕けた短剣を視界の合間に確認すると…
「なーんだ。そうだったんだ。」
その呟きと同時に左手が指が腕が形崩れ、空中で水滴が四散するようにあらゆる方向に曲がった。血肉すら彼女の元を離れようとする自然の摂理に背くような現象。
「ぐぅぅっっ!!」
ノウンの悲鳴と同時にスラリと影が動き、姿勢を低くしたそれは右手をノウンの腹部を目指し突き上げる。
「ゔぁぁああああぁ!!!」
見事に意中を貫かれたノウンは、その焔に………
「…ッ残念、もう見た。」
貫かれることはなく、身を翻すだけで回避し、そのまま回し蹴りにて反撃する。
その蹴りに体を捻られ、飛ばされたヴァルエは、瓦礫に削られ、血反吐を吐き捨てた。
「つまんないわぁ。貴方達って同じ事しかできない訳?そんなんじゃ私には勝てない。」
圧倒的だった。彼女は、いや彼女だけは違うことが分かる。人に許されて良い力なのだろうか。もはや形にすら残らない称号とは違い、異質なのだ。
「そんな…。ヘクタのアーテルでも…。」
夕日の逆光を浴びノウンの身体は陰に差し込む。水に輝く目をギラつかせ佇む彼女の姿は、それこそ化け物のようだった。
順序が違っても正解なんだよ?だって元から…




