第0章24話【身蓋真奏】-姿形は違えど-
本当だったら前回展開を持っていきたかったんだけどね。長かったし仕方がないじゃないか
『アーテルが拒絶する。』
その言葉が何故か頭から離れない。切っても切り離せない関係。ただそれだけとはもう思えない。
それにもう見てしまったから。
「もういいんです。もうわかりました。だから……。そんなに泣かないでください。」
「おかしなことを言うのね。私が泣いていると?」
光??静かにでも確かに頬に伝うものがあった。
「えっ?アハっ。そんなわけないじゃない。私はっ………。」
「もういいんです。戦わなくて。もういいんです。争わなくて。貴方の役目は果たされました。大丈夫です。大丈夫ですから。もう…。」
「勝手なことを言わないで。」
静かな怒りと悲しみ。そんな怒号とも取れる言葉がイミヤの鼓膜を揺すぶる。それでもと、彼女の為を思ってイミヤは続けるのだ。
選択肢は残りわずかであると。
「どう有ろうと私達は諦めることはありません。人は人として生きるには自身以外が必要です。」
舌で捲し立てあげる言葉に意味がもたらされることを信じて。私は紡ぐ。
「確かに、普段から常に理解し合える相手なんて確かに存在しません。ですが、人と人が分かり合えるのは、決して終わりだけではないと思うんです。」
「あなた正気なの?よっぽど甘やかされて生きてきたとしか思えない発言ね。」
「ーー家族なら、気を許せる相手が居るはずです。」
イミヤにとってこの言葉は賭けだった。普段ならこの様な言い方はしない。そう願いたい。人の痛める言葉を知っている。より深く傷つけるであろう言葉も知っている。けれどイミヤは問わずにはいられない。
「…………。」
その言葉にノウンは言葉を発することはなかった。できなかった。
小さな風が砂埃を散らし、地に立つ足先を通り過ぎる。握られた短剣は、その感触を確かめるように締められ、静かに上を向く。影にかかった表層は映されることなく、しかし、口元だけは確かに見えた気がした。
「イミヤっ!!!」
本当に予想外のことしか起こらない。彼女の時もそうだった。ヘクタには予知できない何かを、彼女たちが持ち得ているのだろうか。
ともあれこんな所でイミヤを失うわけにはいかなかった。ヘクタは既に知っている。ノウンの特性を。奴のアーテルを。
錆びついた体は整備される事は無くとも驚く程に自然と動いた。
振り返る顔が見える。驚愕でも感嘆でもなく。純粋な疑問。不思議そうに此方を見ていた。困り顔とても言うのだろうか。
世界が過色で白く見えた。
彼女の体を無理矢理にでも押しのける。
光の筋が糸のよう。止まることなく直線を通り抜ける。一瞬だ。その時の中でも確かにそれは存在した。
何かが当たった感覚はなく、通り抜けた。それでも体の一部が透き通る様に、大切な何かを失った気がした。
またこの感じだ。嫌になる。
赤暗く輝き、雫が服を伝い、静かに滴り続ける。止まることを知らず、何かが零れ落ちるように。
乾いたコンクリートを馴染ませ、本来の姿が戻る様に滲む。
頭ではなく心臓を狙ったのは彼女なりの優しさの表れだろう。だからこそノウンに伝えなければならない。
「ヘクタ!?」
そう叫ぶイミヤ横目にヘクタは言葉を紡ぐ。
「そ…れ、は違うな。」
私のためだけの優しい声がした。甘い甘い誘惑の声。流されてはいけない事は分かっている。それでも頼りたくなってしまうのは私がまだまだ不明瞭だからだろうか。
「それにインディゴさん。」
インディゴのアーテルはノウンを突き放すように3点。た、た、たん、とノウン目掛けて直線上に放たれていた。当たることは無かったようだが、気を散らすことはできたようだった。
生み出された盤上の上でヘクタは続ける。
「ノウン。お前は死を恐れ、自身を肯定化しているだけだ。何もできない昔とは違うだろう?お前には家族がいる。そうだろ?実際イミヤは見てしまった。だから、あんなことを言った。」
「だったらなんだって言うの?家族なんて知らない。私が死を恐れてる?そんなわけないでしょ?だって私は…。私は六大器ノウン。それ以外の何者でもないわ。」
「それは違いますノウンさん。違うんです。『あなたの事』はノウンさん。あなた自身が決めることです。そこに他者は介入しません。先程ノウンさんも言っていたじゃないですか。他人が関わるのは死ぬ時だけだと。けれど今の貴方は、まるで他者に縛られる人形です。」
影が掛かり、ノウンさんの表情を見ることは出来ない。けれど感じる事はでき……。
「クッくっ。ははっ。あははははっ。」
「何かおかしな点でも?」
突然笑い出すノウンに、ただ純粋な恐怖を刻まれた気がした。脈絡の無い筋道。踏み外すことのない道化。
その様子に何を思えるだろうか。私の表情はきっと歪んでいるでしょう。
「ーー可笑しいわよ。」
(……結局私も愚物だったって訳ね。)
下に俯き、何かを呟くノウン。その言葉はイミヤに届くことはなく、疑念を積らせる。
「何か言いましたか?」
「いーや、なんでも無いわ。それでも、私は変わらない。変わることは出来ないわ。残念だけどねっ!!!」
『もう遅いのよ』その言葉は発されることはなく、誰の心の内に残るのだろうか。
放たれるのは……閃光でもなく…。
バギャァンっっ
ヴァルエが二度目を許すことは無く、その白煙の中、完全に阻止した。
「工夫したんだけどぉ、残念残念。なら次ね。」
再び繰り返される爆煙。その隙はヘクタを傷つけた光で補う様に加虐性をより増させる。
「ぐぁぁああぁあ」
擦りはする。が、その物量に怖気ない姿はまるで、機を狙う様。信じているのだ。この状況を変えてくれる仲間がいると信じて。
救援に来たインディゴは表情を引き攣らせている。体調がよく無いのだろう。見てわかるほどに衰弱していた。
口を右手で覆い、拭うためだけに。
それでもアーテルを弾く。
矢に蒼白く纏うアーテルは潰えず、ノウンには追えない。
時にはその強大なアーテルで空を歪ませ、イミヤはヴァルエを援護する。攻撃の機会を作る様に。彼女に託すために。ノウンをその瞳に捉えるのだ。
彼女の心が拒絶し、アーテルが揺らごうとも放つことを止めない。やめたくてもやめない。もう戻れはしない事をイミヤは知ってしまったから。
対話の段階を過ぎ、待つものはどちらかの欠落。共に残る術など存在せず、失い続ける戦い。
対等であったなら何かが変わったのだろうか……。
ヘクタは応えるつもりはなかった。けれど、何故だろうか。彼女達の姿が、やけにトロく呪いがかるように間延びするのだ。
声が透けるように。いつの間にか漏れていた。勢いに任されて。
「聞けっ!奴のアーテルは……。
『水』
だ。」
六大器の英名を(Singular Spirithorture of Six)に確定しました。略してSSSってね。
ちょっと話修正するために、来週休ませてもらうかも………。今話と前話納得してないのよね。




