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第0章 1話【寒暖対比】-想いの先には-

 月夜が鮮明に映る日。とある砂漠で異様にも光を灯す所があった。



「お前そろそろ徴兵期間満了なんだろ?そのまま従軍しないってこたぁ。なんかしたいことでもあんのかよ。」



 いかにも兵士向けな体格をした中年の男が酒の入ったジョッキを掲げながらいつものようにだる絡みを始める。



「いや、僕が待たせている人がいるんだよ。だけど…」



 そう言われた少年は悩むような素振(そぶ)りを見せた。



「優秀だからって別に残る必要はねぇよ。安心しろって俺らがいつまでも守ってやるからよ。」



 他の男達も笑いながらそうだそうだ!と賛同し、中には少年の肩を叩くものもいた。



「心配だなぁお前どんくさいし…あとおっさんくさい。」



「誰がおっさん臭いだ!それを言うならお前はウスノロでいつも息切らしてるじゃねえか。祖先は亀なんじゃねぇのか??ちっとは体力付けろや。」



「なにをぉ。」



「おおぉん??」






______________






 ……外が騒がしい。車内に響き渡るくらいの声量が月明かりに照らされた小さな私の耳を通してでも聞こえる。


 現在、地域の人は決して寄り付かないと言われる薄気味悪い砂漠の途中で、分隊規模の私たちがキャンプをしている。これだけの人数でこの砂漠を過ごすことができている現状がありがたい。

 そう思いつつ、少し肌寒いなと体を震わせる。薄暗い車内で一人椅子に座り、イミヤは足を抱えながら、何を見るわけでもなく呆ける。


 私はただただ怖かった。彼らの中に混ざることさえ怖かった。同じようにお酒と摘みを手に取り、中身のない会話で笑いあう。そんな関係ですら築けなかった。

 人と触れ合うことを恐れ、関わることを恐れ、それでも彼らと相対するときには乾いた笑顔を取り繕い会話する。

 笑いあうことなど()うに許されることの無いこの大地で私は活動していた。


 なぜここに私はいるのだろうか。


 …そう。作戦だ。ワーマナから下され、既に見飽きた極秘という文字が綴られている任務。今回は少数精鋭での奇襲及び、アーテル結晶の強奪だそうだ。

 命令さえこなしていれば私はこの組織に居場所を作れる。居続けられる。それだけでいい。それがいい。


 そんな中、突如(まばゆ)い光が私の網膜を刺激する。カチリと暖房が起動する音が鳴り、温かな風が車内を循環する様に吹く。



「うぅ寒っ!イミヤちゃん寒いって暖房くらいつけなよ。今夜はここで寝るんだよ?しっかり体力も温存しとかないと…」



 そう言いながらヴァルエはここは自室だといったような慣れた手つきで色々な所をいじり始める。



「急に来られるとびっくりするじゃないですか。」



 いつものヴァルエさんと少し雰囲気が違う気がして、少し戸惑った。



「ノックはしたよー。返事なかったけど。」


「だとしても急に入ってこないでください!」



 私が何を言っても聞かないヴァルエに嘆息しつつ、なぜ私の所に来たのか気になった。



「あと、ヴァルエさんは向こうの車両で寝る予定ではなかったですか?」


「私インディゴちゃんも連れてこっちで寝るー。」


「えぇと、急にそんなことを言われても困りますよ…それに、私の格好がつかないじゃないですか…」



 イミヤはヴァルエの優しさに触れつつ怒る。ここで押し負ければそのまま押し切られることを知っているからだ。それに私は一応この隊を任されているリーダーなのだ。



「イミヤちゃん始めからそんなのに興味ないでしょ?説得は終了というわけで…」



 そう言いヴァルエは車から身を乗り出して、外にいる彼らに声を張り上げる。



「みんなー私とインディゴちゃんはイミヤちゃんと寝るからもう一台は好きにしていいよー」


「まじっすか姉貴。おいお前らー。ここは公平にポーカーで決めるぞー」


「えぇどーせまた狡い手を使う気だろ」


「バレなきゃイカサマじゃ無いんだよ」


 さらに騒がしくなり、後には引けない状況になってしまった。

 ヴァルエも言葉による説得はイミヤには通用しないことを知っているのだろう。



「さぁて、これで思う存分一緒に抱き合って寝れるね!」


「抱き合うのは自身にだけにして。私は一人で寝る。」



 騒ぎを聞きつけたインディゴが呆れながらヴァルエそう言い放つ。



「酷いよ。でも残ってる車両はもうないからインディゴちゃんも強制だよ〜。それで、イミヤちゃんは私と寝るよね!ねっ?」


「えぇ…と。そ、そうですね。わかりました…。」



 イミヤは逃げられないことを悟り、これ以上状況が悪くならないように妥協した。



「もう、イミヤちゃんは可愛いんだからぁ。」



 そう言い、身長差があるため、イミヤの髪に頬擦りながら抱きしめる。



「く、苦しい…です。」


「んー?」



 暫く離してもらえず、その日はヴァルエさんに腕枕をされながら眠ることになった。



「たまには1人じゃないのもいいでしょ?」



 ヴァルエがそうポツリと言葉を漏らす。

 何を言っているのか分からなかったが、取り敢えず賛同した。



「そう…ですね。多分そうだと思います。」


「はっきりしないなぁ。うーん。そうだねぇ…。過去がどうかじゃない。今がどうなのかだと私は思う。」


「今ですか?」


「そう今。…今この時が楽しいから生きる。私はそれでいいと思う。何を悩んでいるのか知らないけれど、あまり思い詰めない方がいいよ。明日支障が出るかもしれないしね。」



 考えなくてもいい?考えなければ楽になる?違う。そんな訳ない。



「外のあいつらもイミヤちゃんの事が心配であんなに騒いでるんだから。」



 違う。私はみんなが期待するほどの器じゃない。


 だけど…けれど、感じることのできる重さだからこそ私は悩まなければならない。()にはないものを持つものとして。まだ時間はある。ゆっくりと考えていけばいい。


 そう結論付けるとふと、常にあった不安感が失せるようだった。単なる先延ばしだ。けれど今はこれでいい。



 そんな彼らももういない。

 私はこの日のことを忘れることは……できないだろう。


これからこれから〜♪

ヘクタとイミヤを中心に話を書こうかなと。つまり実質主人公は二人ってことかな?

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